サラリーマンの場合
case1としてはラスト
そう。俺はサラリーマン。
この状況を懺悔で乗り切ってやろう。
周りを見回して使えそうなものを探す。
すると、近くでこの席を占領している男を睨む女子高生がいた。
「あの、すみません。席を譲ったほうがいいですよ。」
俺は口を寄せて男に言う。
あくまで下手にでて気の弱い風を装う。
男は「は?」とこちらを睨む。
「どうしてぼくちんが君に席を譲らないといけないのさ。」
「本当にすみません。私にではなくてあの子に、です。」
先ほどの女子高生をこっそりと指差す。
男がそちらに視線を向けると女子高生は睨み返した。
「なんだあいつ。」
いきり立つ男に言う。
「本当に本当にすみません。でも、あなたのために言ってるんです。」
「どういう意味だ?」
俺がとにかく謝るから男は苛つきながらも話は聞いてくれる。
「本当に本当にすみませんすみません。あの子〇〇組のお嬢さんです。」
「〇〇組?聞いたこともない。」
「それ、聞こえるように言っちゃダメですよ。消されますよ。すみません。すみません。すみません。」
俺は焦ったように言う。
「すみません。また睨まれてます。早く逃げたほうがいい。もしかしたら聞かれたかも。本当に本当にすみません。」
男はハッとした顔をして
「謝るなよ、ぼくちんは君に感謝しないといけない。命が惜しいからさっさと逃げることにするよ。」
そして次の駅で男は降りた。
悲しいかな。染み付いた癖で、取引先の社長に対するような90度の礼で男を見送った。
俺はサラリーマンだからな。
明日からまた一週間が始まりますね。
あまりストレスを溜め込まずに頑張りましょうね。
(評価とか感想とかくださると私が喜びます)