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近道は違う道【ショートショート】

作者: May Packman
掲載日:2017/08/18

あまり実のある内容は書きません。拙作の極みで御座います。お時間に隙間が空いた際などにご覧頂ければ幸いです。

どうも様子がおかしい。何かが変だ。

――学校からの帰り道。偶然見つけた畦道に、わたしはひとつの希望を見出したのだ。

「ここを抜ければ近道なんじゃないかな」

 誰に言うわけでもなく呟いた。そして力いっぱいに自転車のペダルを漕ぎ始めたのである。夕暮れの田んぼは、稲穂が金色に輝いて目に鮮やかであった。タイヤも思ったよりは滑らかに進む。サドルの上のお尻もしっかりと張り付いていた。

 十分ほどすると木に囲まれた道となった。林だろうか。辺りの様子がまるで見えなくなってしまった。しかしそれも五分ほどである。

 視界が開けた。林を抜けたのである。

 畦道から舗装されたコンクリートの道にタイヤが寝かされたとき、初めて「おや」と思った。わたしは自転車から降り、周囲を見渡した。

 見たことのないところである。

 この辺りは農村地帯で道も少ない。迷い込むところなどないはずである。しかし、ここはどこだ。点在する家々の一つ一つが見知らぬものである。それどころか奇妙なことに、全く知らぬ土地に来たように感覚が、わたしをねっとりと包むのだ。

 まるでタイムスリップしたかのような違和感。世界が丸ごと変わってしまったような。そんな不思議な感覚が肌を刺す。

 そのとき、すぐ近くの民家の庭で、お婆さんが草刈りをしているのが見えた。わたしは考える前に自転車を走らせていた。

「すみません」

「んやあ」

 驚いたような、寝ぼけたような返事である。

「何かようかい」

 麦わら帽をかぶったお婆さんが、鎌を置いて立ち上がった。私も自転車を降りる。

「いや、あの……ここって何町ですか」

「上の町だよ」

 腰を叩きながら答える。やはりそうだ。違う町なんかじゃない。

 お婆さんは、わたしをまじまじと見詰めると、

「お嬢ちゃん迷子かね」

「いえ」

 少し間が空く。

 そうだ。ここで、思い切って訊いてみる。馬鹿馬鹿しいのは承知である。

「……今は西暦何年ですか」

 首を傾げられた。そりゃそうだろう。

 訝しげに、

「二〇一七年だろう?」

 予想通りの答えを口にする。

「良かった」

 ほっと胸を撫で下ろす。お婆さんは、オバケでも見る様な目つきに変わっていく。

「二〇一七年だと何かいいことがあるのかい」

 わたしは笑顔で首を振り、

「すみません。ちょっと確認したくて。戦後から何年経ってるのかなって。授業の課題なんです」

 へーっとのんびりとした口調となった。何かを数えるように空を見上げると、

「もう七十二年なるんだねえ。私が七歳の頃に日本が負けたわけだから」

 ぞっとした。

「お嬢ちゃんどうしたんだい」

 血の気が引いていくのが分かったのだろう。心配そうに訊いてくる。しかし、わたしはそのとき確信した。

 やはりおかしい。ここはわたしがいた世界じゃない。

 

 日本が負けたなんて、そんな馬鹿なこと間違っても言うわけがないのだ。

宜しければ他の短編、あるいは長編も御座いますのでご清覧下さいませ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] どうも様子がおかしい。何かが変だ。 ーー学校からの帰り道。偶然見つけた畦道に、私はひとつの希望を見出したのだ。 とても素敵な書き出しでした。 私も似た経験があります。 子供の頃、空から…
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