4.ある二人の勧誘行動。――犯罪にあらず
「つ、疲れた……」
少女達が到着して、最初の一日が終了した。
「といっても、簡単な挨拶と説明聞いて、ご飯を食べただけなんだけどね~」
「そ、そうですね」
これから一週間程の時間をかけて、この街や授業についての説明や、その適正等のチェックといった事を行うらしい。
その間、少女達は空いている学校寮を仮住まいとし、二人部屋を与えられていた。
「え、と。エリーさん……でしたよね? 私、パルフェって言います。シャーロット領のトカンタ村から……」
藍色の髪の少女――パルフェが挨拶をすると、もう片方の、印象的な赤毛をポニーテールにしている気さくそうな少女、エリーはハッとした顔で、
「シャーロット領って……麦喰い蟲にやられたって聞いたけど……」
「はい。私は身寄りがなかった事もあって行き場がなく、こちらに」
「身寄りがないって……じゃあ、今までは? その村にいた間って意味だけど」
「大きな畑を持っている人の所で働かさせてもらっていました。亡くなった私の母の頼みだったとか……。住む所も、納屋の二階を貸していただきました」
そこまで聞いてエリーは、パルフェがかなり苦労してきた事を察した。
実質、口減らしで捨てられた事も。
「出来る事ならば、以前の様に畑を耕すような暮らしをしたいと思うのですが……」
「あー、ちらっと聞いたけどそういう学校も選べるらしいね。なんでも、農学? とかいう授業を選べば紹介してもらえるらしいよ。ヒンシュカイリョウとかマリョクヘンイとか、なんか難しい話をしてたから良く分からないけどさ」
その言葉は良く分からないが、どうやらパルフェの知る農作業とは少し違うようだ。
パルフェは少し首をかしげ、悲しげなため息を吐いた。
「あの、エリーさんは?」
「ん? アタシ? アタシは、商学って奴に興味があるかな」
「商人になりたいんですか?」
「んー、どうだろ? でもまぁ、色々珍しい物を売ってる行商人ってのに憧れがあるかもね。アタシの村は行商人がよく来てくれてさ」
行商人が立ち寄る村は二つ。いい客になってくれる人が多いか、宿場施設があるかのどちらかだ。
「私の村はただの農村だったので、行商さんって見たことないです」
パルフェは買い物をする機会もほとんどなかったし、あっても乗合馬車に乗って近くの大きな村まで行くだけだった。
「どんなものを売ってたんですか?」
「……色々。魔物の毛皮や骨、牙、農具にその手入れ品、それに遠くの村の作物とか……子供向けのおもちゃなんかも売ってたね。昔、親父に駄々こねたもんさ」
エリーは、肩をすくめてベッドに腰をかける。
「そうだね……どちらかというと、珍しい物を多くみたいのかな。商売ってなれば、珍しい物をたくさん見れるかもしれないし。アタシに才能があれば、店を持つ事も出来るかもしれないってね!」
「……エリーさんは、スゴイですね」
パルフェは素直にそう思った。
パルフェは確かに、農業の道を進めればいいと思ったが、エリーのように『やってみたい』という気持ちはなかった。『それしか知らないから』という、後ろ向きな物だ。
「そうかな? ま、最初の一年は割と好きに授業を選べるみたいだし、色々やってみようかなって思ってる。それでいいんじゃないかな?」
「……そう、ですね」
パルフェは、力なくほほ笑む。
どうなろうとも、そのうち来る波に流されていけば、行きつく所に行くだろうと。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「――というわけでどうだろう。これから先、入学する学校でも言われるだろうが、クラン参加は悪くない点数稼ぎになる。そうなれば、授業で気を張る事を少なくなろうだろう。――どうだ! 私と一緒にぐーたらな生活送る気はないか!?」
最初の波が、いきなり胡散臭すぎた。
いくつかエリアの説明をされている最中に突然荒波に巻き込まれたパルフェは、既に少し泣きそうになっている。
「いえ、あの、そもそも貴方は――」
「あぁ、すまない。名乗るのが遅くなった。私はゲイリー。15エリア、ストリリューツ総合技術高等学校の生徒だ」
胡散臭い男子生徒は、どこか引き攣った様に見える笑顔を浮かべて握手の手を差し出すが、パルフェには手を取る事が出来なかった。当然である。
「…………」
「ひっ」
ゲイリーは更に引き攣った様な笑顔を浮かべ、パルフェは一歩引き下がる。
「……むぅ、この接触方法はダメだったか」
ゲイリーは訳のわからない事を呟き、
「まぁいい。要点だけ伝えさせてもらおう。私――もう面倒だな。俺と一緒に来てほしい。なに、そこらの喫茶店で少し話をするだけだ」
どう聞いても下手くそなナンパである。
「え、いや」
「仲間の美食家が、珍しく悪くないと言っていた喫茶店がそこにある。ここでは人目を引くからな。えらく視線が鬱陶しい」
新入生の女の子に声をかける妙な男が、ここにいるからである。
「あの、結構で――」
「とりあえず、話だけでも! あれだったら後払いでアイツに特別料理を作ってもらうから――」
――警備員さんこっちです! 来たばかりの女の子が変な男に絡まれてます! 変質者です!!
――なにっ!? この11エリアで馬鹿な事をする奴がまたいたか! お前ら、さっさととっ捕まえて簀巻きにするぞ!
――『おおおぉぉっ!!!!』
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「――設問。どういう勧誘をしたのか簡潔に」
「声をかけただけなんだがな……。何が悪かったのか」
薄暗い部屋の中で、誘拐実行犯とその共犯者による反省会が行われていた。
「クランの事は説明を?」
「……いや、触りしか説明出来ていない。まったく、ただ声をかけただけであのように警戒されるとは、これまで辛い目にあっていたのかもしれん。世も末だな」
世も末なのはコイツの頭と対人能力である。
「ゲー君、なにか失礼な事しなかった?」
「ラヴィ、貴様……俺をなんだと思っている。まったくの初対面の人間相手だから少し緊張こそしたが、少なくともそこらの連中相手にする時よりは十倍ほどフレンドリーに接したぞ」
十倍変質者として接していた、というのが正解である。
「把握。となると、入ったばかりで全てに警戒していたのでしょうね」
いいえ、警戒したのは目の前にいた変質者のみです。
「やはり、まずはこの街に慣れた人間をいれるべき?」
「しかし、知り合いがいるのか?」
「強いつながりがあるわけじゃないけど……私が取っている授業のクラスメート」
「……剣術科だったか」
「ゲー君と被ってない所だと、魔法薬学科とか探索学科、魔術防衛学。あと、クラブにも入っている。ほとんど幽霊部員だけど」
「クラブ? ……料理……だよな?」
「肯定。ただ、私が食材持ちこむと、皆に引かれた。だからもう行ってない……けど……」
皆がそこらの店で売っている野菜や肉を買って持ち寄りワイワイやろうとしている中、マンティコアやアルラウネ等の上級モンスターを狩って超超高級食材を持ちこんで来たらドン引きされるのは当然である。
「俺はその場を見ていないが、何が起こったかは容易に想像できる」
「……頑張って狩ってきたのに」
「まぁ、その話は置いておこう。メンバーの事だが……やはり、新人――それも平民を勧誘するのが一番だと思う。自分で言うのもなんだが、このエリアの中で俺は底辺に近い存在だからな、アドバンテージが取れるのは新入生の、それも平民しかない」
「でも、慣れない街に連れて来られて平民は皆、緊張、警戒している。そもそも、平民も貴族もワケありな人が多い」
この街は、普通ならばあり得ない事なのだが、平民と貴族が一緒に住んでいる。
だからこそ、そういうトラブルは割と頻繁に起こる。
エマのような、ある程度力のある貴族の子息・息女は基本的にそういう人間が集まるエリアに集まっているが、そうではない爵位を失くした家や極貧貴族の子供は、平民も貴族も関係ないエリアにいることが多い。
その中には当然、プライドを捨てられない者もいるわけで――
そういう話も噂でそこらの村や街に流れているだろう。
「俺たちが住む15エリアは貴族同士のイザコザはほとんどない。そこを説明しておきたかったんだが……。割とデカい利点だし」
それで15エリアを選んでくれる顔見知りがいれば、後の勧誘にも良い影響が出るだろうというのが、ゲイリーの考えだった。
「ゲー君。次は私が行く」
「む、大丈夫か?」
ゲイリーに心配する問いかけに、ラヴィはコクリと頷く。
「多分、この街に来て実質初日だから警戒された」
残念ながら違います。
「エマちゃんから、どこのエリアに『新入生』が泊っているかは大体聞いている。とりあえず、適当に目に着いた人を勧誘してみる。とりあえず――」
ラヴィニアは手にしていた小包を、ゲイリーに差し出す。中身は先日狩ったレーシーウッドの枝を茹でて下ごしらえした後、薄い牛肉を巻いた上で軽く衣をつけて揚げた物。本当は、ひょっとしたら今日にも来るかもしれない仲間のために作っておいたものだ。
ゲイリーは、『鉄格子』の隙間からそれを受け取る。
「警備員側の事務手続きが済んだから解放されるから、その間のおやつに」
受け取ったゲイリーは、『牢屋』の中で頭を抱えながら、僅かに頬を涙で湿らせる。
「あぁ、その……すまんな」
「大丈夫。説明したら分かってくれた。前科は付かない」
「…………本当にすまんな、ラヴィ」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「うぅ……なんでこんな事に……」
パルフェが、この街に放り込まれて二日目――いや三日目。午前中はこれからこの街でどう生きるかの説明があった。
要するに、技能を磨く授業の方向性は最初に決めて、同時進行で仕事をこなしていけば最低限の衣食住は確保できるというお話だった。午後は、数人の教師と話して方向性を決めるらしい。
その方向性と、後日行われる『適正検査』とやらの結果を元に、数日後には学校を決めるのだとか。
(どこでもいいし、なんでもするつもりだけど安全な所に行きたい。やっぱり男の人は怖い……)
昨日みたいな散々な目はもうこりごりだった。なにせ、部屋に戻り次第彼女はエリーにすがりついて少し泣いてしまっているのだ。ゲイリーは土下座して謝罪するべきである。
(人も……近寄らないし)
昨日の説明会の中で少し仲良くなった人達は、
『おい、あの子変な男に目を付けられた子だぞ』
『哀れな……』
『でも、変に関わるとエライ目に合うかもしれねぇな。この街って貴族も混ざってんだろ。もしワケありの男だったら……』
という具合にパルフェを避けている。哀れである。ゲイリーは首をくくって謝罪すべきである。
「女神様。私、何か悪い事をしたのでしょうか……」
思わず信仰している女神に祈りを捧げるが、現状どうしようもない。分かっているのは、エリー以外の誰かに声をかけて、知り合いを増やすことである。
この右も左も分からない街でほぼ一人ぼっちという事態だけは全力で避けなければ――!
「質問。今時間はある?」
バッとパルフェが慌てて後ろを振り向くと――剣を腰に下げた、表情のない綺麗な女の人が立っていた。
「……え、あ…………あの……?」
「質問。時間は大丈夫?」
女性――ラヴィはもう一度、同じ質問を繰り返す。一切表情を変えず。
「は、はい。だだ、大丈夫です!」
怖い。ただひたすらに怖い。
ラヴィの表情のない顔と、剣士としての雰囲気がパルフェにそう感じさせているのだが、当然彼女は気付くはずもない。
「あ、あの……私に何かご用でしょうか?」
それでも、パルフェが声をかけられたのは、誰かと話さなければという強迫観念が働いたおかげだ。
ある意味で酷いマッチポンプなのだが、それを知ることのできる人間は今この場にいない。
「貴女は、一人?」
「へ? あ、はい……その、一人……です」
いきなり公衆の面前でぼっちであることの再確認をさせるとか、ラヴィも地味に鬼畜である。
パルフェもなんとなく落ち込んできたのか、少し顔を俯かせる。
(うぅぅぅぅっ! 昨日の男の人さえいなければ……あの人さえいなければーーーーっ!!!!)
「この街の、貴族について警告しに来た」
「ひゃ、ひゃい……?」
ラヴィの目が僅かに細まる。鋭くなったというべきか。
それと同時に、パルフェは、大人たちが狩りで獲物を前にしたときのような雰囲気を感じた。
「この街で、貴族はそこまで恐ろしい存在ではない。が、やはり横暴な相手はいる。加えて、もっと警戒しなければならない存在がけっこういる」
もっと警戒しなければならない存在というのが気になるが……ひょっとして、この人は昨日のあの怖い男の人とのいざこざを聞いて来てくれたのだろうか?
ならば、この人は私を助けに――
などと考えているパルフェは甘すぎると言わざるを得ない。
「だから、現状を打破するために私達は力を合わせるべき」
「はい! ……打破?」
打破。何かを打ち破る事。負かす事。
いきなりぶっ込まれた一言によって、一気に雲行きが怪しくなっていく。
「私は、今のままでは変わり映えのしない生活のまま。でも、大きく人生を変えるには個人の力じゃ何も出来ない。大きな壁を打ち破るには、数が必要」
「あ、あの――」
周囲から、静かなざわめきが聞こえてくる。
ボソボソする声にパルフェが耳の神経を集中させると、『か、革命か?』やら『あの子、今度は貴族相手になにかやらかそうとする奴に目をかけられたのか』とか『おい、誰か教師か警備員呼んでこいよ』等と聞こえてくる。
「あ、あの! 大丈夫です! わ、私一人でもなんとかしますから!」
何か更にざわめきが大きくなった気がするがもうそんなこと言ってられない! とにかく現状をどうにかしないとヤバい! 何かがとてつもなくヤバい!!
パルフェは混乱してそんな思考に陥る。ちなみに間違っていない。
「……驚嘆。一人でやる自信がある?」
「え、えぇ! もうどんとこいです! 変質者だろうが魔物だろうが貴族だろうが、何が来ても一人でどうにかして見せますので!!」
そして精神に余裕をなくし、焦った少女は、なんとなく貴女には関わりたくないという事を遠まわしに伝えるという一歩を踏み出した。
「……好感。貴女、私達と多分上手くやっていける」
なお、その一歩は間違っているし、取り返しがつかない。
「貴女は、何か望みはある?」
(望み!? 今すぐ貴女と離れて安全地帯に逃げ込む事です!)
「……平穏が……平穏が欲しいです」
切実に。本当に切実に。
パルフェの心の奥底からの訴えに、ラヴィは深く頷いて。
「これから適正検査や希望する授業を選ぶと、適した学校がいくつか提示される。その時、15エリアの学校を選ぶといい」
「15エリア……?」
先日の説明の際に出て来たエリアに関しての説明を、パルフェは必死に思い出す。
確か、全エリアの中で最もクラブ活動が活発なエリアで、傾向としては、魔術師と生産技術関係の人材がやや多いという話だった。
(後、あの時の馬車の女の人が何か……図書館にヌシがいるとかなんとか……)
「そう、エリア15。そこでは、基本的に面倒事は起こらない」
なお、このセリフには面倒事の前に『この街にしては』という単語を入れなければならない。
「私もここのエリアの学校にいる。多分役に立てる」
(分かりました。そこ以外で安全そうな所を選びます!)
話に方が付きそうだと判断したパルフェは、心の中でアデュー!と手を振って別れを全力で喜ぶ。
そして『前向きに考えておきます』とか『善処しておきます』的な適当かつ適切な言葉を考えていると、『ポンッ』と肩に手を乗せられる。無論、ラヴィだ。無論、距離が近い。
――ニィ……ッ
「ヒ、ヒィ……っ」
更にそっと顔を近づけたラヴィは、それまで無表情だった顔を崩し、目元のどこか影のかかった笑みを浮かべ、そして――
『歓迎。貴女を待っている』
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「その、なんだ……昨日と立場が逆になったな」
「……うん」
昨晩見た光景が、今度は鏡映しの様に反転している。
「警備員も分かってくれて、互いにすれ違いがあったのだろうとすぐに解放だそうだ。お前は俺よりも信用があるからな、説明にあまり時間はいらなかった」
「感謝。まさかこの中に入る事になると思ってなかった」
やはり無表情のままだが、少々落ち込んでいるように見える。
ゲイリーと違い、根は真面目な方だから少しショックを受けているようだ。
「今日はエマからの依頼でちょっとした作業手伝いしたおかげで金が入ったから……ほら、差し入れだ。お前が前に教えてくれたカフェのシュークリーム」
「再度感謝。しかし、どうしてこうなったのか」
再び薄暗い部屋で犯罪者予備軍扱いというかもう8割犯罪者な二人は、向かい合って第二回反省会をしている。
無論、その間には昨日ゲイリーがお世話になった鉄格子という仕切りがある。
「本当にな。……一体なにがあったんだ、ラヴィ?」
「もぐもぐふもふも――ん、理解不能。不安そうにキョロキョロしていて、それでも一人で活動すると言いきる、中々面白い子がいたから勧誘に挑戦。だが……」
「だが?」
「歓迎している事を伝えたらなぜか気を失い……ちょうど来ていた警備兵に暴行犯と勘違いされ、こんなことに……」
面白い子――パルフェの精神はずっとサンドバック状態だったのである意味間違っていない。
「なるほど、災難だったな。しかし気を失ったとは?」
「推測。恐らく、緊張の糸が緩んだ結果ではないかと。私と話している間はずっと笑顔だったけど……」
なお、正しくはずっと顔が引きつっていたである。
「それに、印象をよくしようと、頑張って笑顔も作ってみた。けど……駄目だったみたい……」
「む、それは一度見てみたかったな。変なレアアイテムよりも希少なものだ」
なお、その希少な物がトドメになった模様。
「……これからどうする?」
差し入れたシュークリームをゆっくり咀嚼して味わっているラヴィは傍目に、ゲイリーは考えだす。
「まぁ、あれだ。まだ五日近く時間はあるし、最終日には適正検査でより正確に才能が分かるだろう」
その時に、文字の読み書きと数に強い人間を、いつも世話になっている役場の知り合いかエマにリストアップしてもらって順番に声をかけていけばいいだろう。
ゲイリーとしては、優秀な人材ではなく、最低限の能力があって仲良くやっていけそうな人がいればそれでよかった。
「それより、俺は謝罪文を書かなきゃ……例の新入生に、怖がらせるつもりはなかったって事を理解しておいてもらいたい」
「同感。私も書く必要が……ぁ」
「? どうした?」
「名前、聞いてなかった。自己紹介もそういえばしてない」
「……らしくないうっかりだな。まぁ、俺も相手の名前は知らんが」
ゲイリーは、後ろ頭を掴むようにして圧迫しながら、
「俺も聞いていないが……まぁ、俺たちを捕まえた警備員に聞けば分かるだろう」
「……迂闊。その手が合った」
とりあえず、手紙はどうにか出せそうな事――というより、謝罪出来そうな事に安堵するラヴィ。
ゲイリーも、近い感情はあったが――
「ついでに、一応、勧誘の一文も添えておくか」
ここで余計な事を思いつく辺りがゲイリーだった。