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未来堕ち  作者: 影音 狐野葉
第一ステージ攻略編
7/16

気に食わねぇ

コンニチハ(*´ω`*)

「右の頬ぶたれたら、左の頬も…」なんて言葉ありましたよね。真意は兎も角、実践あるのみと思って知人で試してみました。

右頬:( っ・∀・)≡⊃ ゜∀゜)・∵.

右頬:( °∀ °c彡))Д´)ェ!?

左頬:(c=(c=(c=(c=(゜ロ゜;c=アチャチャチャチャチャ-!!

…泣きたくなった狐野葉です(悲)

それでは、本編へ!

突如として目の前に現れた謎の女。おぎゃるという餓鬼に似ている女が現れた。周りの雑魚はおろか、先程まで対峙していた爺までもが動きを止めている。

 それでは自分は?――驚きはした。が、何も変わらない。ただ気に食わない爺をぶっ潰す。邪魔する奴も容赦はしない。早急にこのクソッたれな世界から脱出るために。

 単純かつ明快なその答えに、再び男は拳を交わすべき爺に体を向けようとし――ふと、謎の女の視線が自分に向かっているのに気付き、視線が交差する。

(あ”?何メンチ切ってんだ?)

『対象システム1名、龍様』

 突然現れた見知らぬ女に“様”を付けて名前を呼ばれ、突然現れた女は人を小馬鹿にしているかのような無表情な顔を此方に向けている。その瞬間、男――龍のターゲットは爺から謎の女に移行した。

「…なんだその眼は?見下してんじゃねぇえええええええ!!」

『システム補正完了…龍様、申し訳ながら先に転送させていただきます』

 システム?転送?龍にとっては聞きなれない用語のため女が何を言っているか分からない。そもそもどこからともなく現れた謎の女だ。その事実だけでこの女が何をしてくるかも謎である――だが関係ない。何が来ようともその全てをねじ伏せればよいのだ。

 龍は女に何もさせまいと開いていた距離を一気に詰め、右手に固い拳をこさえる。この間わずか一瞬。距離がそこまで離れていなかったこともあり、今はお互いの距離はほぼゼロに等しい。

 しかし、女は微動だにせずその場に佇み此方を眺めている。

 龍はその余裕な様に、ギリィ、と歯を噛みしめ女に全力で拳を振るう。

「ッ!?」

 完全に捉えた、そう思った瞬間、自分の振るった手が女をすり抜けたような気がしたと同時に、視界に映っていた世界が切り替わっていた(・・・・・・・・)

 龍は動揺しながらも、勢いに乗って振りかぶった拳を足の力だけで緊急停止させ、足に僅かな衝撃を感じ大勢が崩れそうになるのを堪える。

「ッ!…クソアマァあああ!どこに行ったぁああ!!」

 あの間合いからどうやって避けたのか分からなかった。拳は女の顔面に当たる瞬間。どう足掻(あが)いても避けられるはすがないと確信していた。だが、龍の振るった拳は空を切るのみで終わってしまった。

 そんな事実に怒りは増すが、同時に女への警戒レベルも引き上げる。この世界特有の人間でない存在と理解して。

 それでも、龍は突然消えた標的を逃すまいと、瞬時に視線を走らせ――またも嫌な事実を理解する。

 自分達(・・・)のいた場所が変わったのではなく、自分(・・)がいた場所が変わった。ようするに、龍一人だけが最初にいた場所から移動させられたということだ。これで直ぐには爺を潰せなくなり、この世界から脱出()る方法も聞き出せなくなってしまった。

 そして何より、自分のいる場所に問題がある。周りを見た限りここはプールであるのは確かだが、何分(なにぶん)広すぎる(・・・・)のだ。

 大理石でできた柱が等間隔でプールの周りに並び、底にはブルーライトが照らされ澄み切った水を青く装飾。プールの中央に鎮座する女神像の持つ壺からは絶え間なく水が流れ神秘的な空間を作りだしている。更にガラス張りの片壁の向こうには深い自然が広がり、ポーッポーッと野生の動物の鳴き声までもが聞こえてくる。

 建造物に興味がない龍でも、感嘆の吐息を漏らすくらい壮麗な空間がそこに広がっていたのだ。

 もしこれが普通の状況であったなら、この場所で彼女とゆっくり過ごすのも良かっただろう。そう、この場所に“彼女”がいたならば。

 龍はそんなことを思い、彼女の安全を祈ったのちに今の自分が取るべき行動を考え始める。……が――

(クソッ!何すればいいか全然わからねぇ!彼女(あいつ)を早く見つける方法?そもそもこの世界に彼女(あいつ)はいんのか?…あああああ!俺は頭使うの苦手なんだよ!ってそういえば、壁伝いに歩いていけば目的のものが早く見つかるとか聞いた覚えが…そしてそこで必要なのが確かペンだったはずだ!……これは…クソッ!やり方がわからねぇ!)

――誰が考えたとしてもこの状況から自分の想像しうる最善を尽くせる者はいない。なぜなら、突然連れてこられた上、この世界のことを何も知らないのだから。

 これはこの状況下で考えれば誰もがすぐに気づく結論であり、最初に取る行動としては情報収集が適切な選択だった。だが現在の龍は刻一刻と過ぎていく無駄な時間の浪費に、焦燥が増すばかりで冷静さを欠いてしまっている。

 龍は自身のポケットから取り出したペンを投げ捨て、更なる打開策を考えるために、周りに何か使えそうなものが転がってないか見回してみる。結果、龍の考えられる限りでは使えそうなものは見当たらなかった。

 彼女を守れない、彼女が無事なのか知ることすらできない。そんな何もできてない自分に不安と責任の荷が精神を締め付けていくのを感じ始め吐き気すら込み上げてくる。それでも、こんな罪悪感にも似たような感情に浸っている暇はないと歯を強く噛みしめ、拳を強く握り深い呼吸を繰り返し、自身の頬をぶっ叩く。そこで(ようや)く少しだけ落ち着きを取り戻す。

(よし。ここに居ても仕方がねぇ。まずはそこら辺ぶらついて、なんかねえか探してみるか)

 考えて何も思いつかない。なら、自身の足で周りを探索してキッカケを見つけるまで。これが今の龍の最善と思える最終決断だった。

 あくまで前向きに検討することにより、自身の精神の安定を長引かせる。この行為は気休めであり、状況は何も変わりはしないが、先程よりは周りが見えるようになったため良策と言えるだろう。

 ただし、その行動が正しいか否かは関係なくなった。時が経てばいずれ直面することではあるが、それ(・・)に“気づいた”のと“気づかされた”のとでは精神に作用される衝動は大きく異なる。そう、それはまさしく――バッド(グッド)タイミング。

 龍は奥にある通路、プールを挟んだ自身の反対側の通路に向かおうとしたとき、視線の先で1つの人影を見つける。距離があり、外は夜であるためはっきりとは見えない。それでも、窓から差し込む眩しいくらいの月明かりとプール底のブルーライトで動いているのは確かに視認した。あれは人だ。

 その瞬間“彼女がこの世界に来ている”という確信にも似たような念が龍の脳内で木霊(こだま)する。

 驚きと共に他の者がいたことに安心にも似た感情が沸き上がり、その人影に直ぐに駆け寄る。相手を脅かさないように、逃がさないよう、そして落ち着いて話し合いができるように。

「すまねぇ、そこの人。少し聞きたいことがあるんだが。わかってることを教えてくれればいい、たのm……おーい、聞こえてるか…?」

 距離は少しあった上、穏やかな声で話したせいで聞こえなかったのだろうかと疑問に思い、何の反応もしない人影に近づいていく。すると、丁度影の所に立っていたため見えなかったその人影の姿が見えてくる。

 ………は?

 その姿がはっきりと見えた瞬間、龍は怪奇でも見たようなショックに見舞われる。

 そこに立っていたのは身長150くらいのスクール水着を着用した女だったのだ。それも――

「あぁ…あ、あぁ」

 ――立ったまま白目をむいて、小声で何かを呟いている。

 これを見た龍は驚きと焦りのあまり一歩後ろに後退しそうになったが、意志の力で身体を無理やり前に進ませる。この子供?女が気絶(・・)してしまったのは自分のせいなのだから。

 龍は身長が高く、目がギラギラとした(いか)つい顔のため、よく周りの者から怖がられていた。ある時は少し近寄っただけで小さな子供に泣かれたときすらあった。

 だが、そんな龍でもこんなケースは初めてだった。声を掛け、近寄っただけで気絶させてしまうケースは。

 そんな事実にショックを受けながらも、これは気絶させてしまった自分が謝るべきなのか、人の顔を見て気絶した失礼な女に謝らせるべきなのかを考えながら、女を覚醒すべく肩と頭を掴み前後に揺らしながら声を掛ける。

「おい、起きろ。大丈夫だ。ほら、怖くねぇぞ。そんな取って食おうなんてしねぇから。目ぇ覚ましてくれ、おーい」

 時間が惜しいと感じながらも首を痛めない様に優しく介抱する。だがいくら呼びかけても女は僅かな奇声を発するのみで目覚める気配がない。

 龍は仕方なく女の顔面にプールの水を掛けることにしようと、女の頭を掴んでいた手を離す。と突然、女は龍の体にしがみ付き顔を腹のあたりにうずめる。急なことであり、しがみ付いてきた勢いは相当なものであったが、バランスを崩し後ろに倒れそうになるのだけは(かろ)うじて防ぎ、女を受け止める。

「ようやく目が覚めたか。安心しろ何もしねぇから…まあ、取り敢えず離れてくれ」

 驚きながらも女の目が覚めたことに安心し、また話し合いをしようと女を引きはがそうとする。が、女のしがみ付いてる力は相当なもので、中々離れようとしない。

 自分と同じく突然変な場所に移動させられ気が動転してしまっているのか、そう判断しようとした直後――女は自分の腹に顔をうずめる態勢であり、龍からは女の頭から背中のあたりまでが見える。先程までは視界に映ることのなかった背中(・・)。そこには切れ味の悪い刃物で(えぐ)り切られたような大きな傷が存在し、その中からは赤い果実の身が顔を覗かせていた。

 助けられようのない傷。助かりようのない傷。そんな致命傷を負った者が自身に強くしがみ付いている。なぜ?…簡単だ、何か(・・)があるからだ。そして、人間はその何かが分からない時、完全な無防備(スキ)ができる。

 ズブブプ。

 変な音が自身の腹部の中から響いてるような感じがした。錯覚?…そうではない。その証拠に自身の衣服が暖かい何かで濡れていくのを知覚する。

 ヤバい!――そう感じた瞬間、龍はしがみ付いている(致命傷を負っている)女を強引に引きはがし無遠慮に蹴り飛ばす。

 何が起こったかは理解はできてない。それでも女から距離を取るために蹴り飛ばした。非常識なことではあったが、自身の違和感を感じた箇所に目をむけ、その行為は間違ってなかったと確信する。女が顔をうずめていた場所、自身の左脇腹部分の服が真っ赤に染まっていた。

 服の上から噛み付かれて(・・・・・・)この傷。あれだけの致命傷でも尚立ち上がってくる不気味な姿。普通の人間であるはずがない。

「てめぇ、なにもn――!?」

 とても意識があるようには見えない。先程見た傷も動けるような状態じゃないはず。なのに女は平然と此方に歩み寄ってくる。

 有り得ない、おかしい!とそこで思い出す。あまりにリアルな感覚に失念していた。ここが仮想世界であることを。あまりの焦りに忘れていた。ここに自分を移動させたのが誰なのかを。

 龍はふと自分の向かおうとしていた通路に目を向けると、そこからはおびただしい程のゾンビ(・・・)が入って来ていた。

「…クックック。あはっはっはっはっはは!そりゃそうだわ!ここはなんと言っても仮想世界!死体が動いてもおかしくねぇわ!はっはっはは!」

 あまりの理不尽に笑いが込みあがってくる。この世界に招待した野郎は自分を苦しめ、挙句の果てには殺そうとしている。つまり、あの時のおぎゃる(ガキ)が言っていた言葉は、この世界から出れない(・・・・)ではなく、この世界から出さない(・・・・)だったのではと疑う余地がある。というよりも、それしか考えられない。

 そんなとき、思考の迷路に彷徨っていた龍は気付くのが遅れた。

 先程までノロノロ歩いていた女――ゾンビが急に速度を上げて飛び掛かってきたのだ。いつもであれば泥亀の如く遅い動きであり、避けるのは他愛ないものであったが、反応の遅れた龍は避けきれず――ズリリリ!!

――嫌な音を身体で感じながらゾンビがゆっくりと横切っていくのを知覚する。

 直撃だけは免れはしたものの右頬に出来た四本の爪痕から血が流れ出し、鼓動に合わせて痛みが走る。最初に噛まれた脇腹の傷の方がひどいものの、そこはただただ熱く痺れているような感覚なため、痛みは頬の方が強かった。そんな感覚が意識にハッキリと浸透し自覚した瞬間、溜め込んでいた怒りの一部が発火した。

「ってぇーな…ッ!!」

 龍は自身の身体を回転させながら衝撃を受け流し、ゾンビの後頭部を左手で掴み右手を勢いよく振り上げる。

 ゾンビは大きくその体を前のめりにしていたため、成す術も無く顔面に拳がクリーン・ヒット。その拳はゾンビの顔面にめり込み、固い筈の頭蓋の中に沈み、窪みから大量の液体と異臭が撒き散らされる。が、まだ僅かに手足が動いていた。

 それを視認した龍はゾンビの顔から拳を引き抜くと同時に下顎骨ごと引き釣り出す。そうしてゾンビの僅かに動いていた手足も静止する。

(…気に食わねぇ。気に食わねぇ。気に食わねぇ。気に食わねぇ。気に食わねぇ。気に食わねぇ。気に食わねぇ!気に食わねぇ!気に食わねぇ!気に食わねぇ!気に食わねぇ!気に食わねぇ!!)

 こんな絶望の淵に立たされたのは初めてだった。こんなに死と隣り合わせになったのは初めてだった。こんなに憎悪を剝き出しにしたのは初めてだった。

 だから誓った。彼女を必ず助け出してみせると。そして――

「あいつら全員…殺してやるよぉおおおおおおお!!!」

――危険な存在の排除及びにこの状況を作り出した根源の主催者の皆殺しを。






~平成28年 3月15日(デスゲーム開始の日)~

 龍はこのVRMMORPGに彼女と一緒に参加していた。ネットやゲームが好きだった訳でもない。また、他人との人付き合いが好きな訳でもない。ただ彼女に頼まれて参加しただけだった。

 昔から彼女は危なっかしいところがあり、それを助けるのが龍の役目。どこかに行くと言うのであれば、一人で行かせる訳にもいかない。いつものように彼女のサポートをして、いつものように帰路に着く。それでその日も終わりを迎えると思っていた。VRMMORPGが開始されるまでは。

 気づいた時、隣にいた筈の彼女の姿が見えなくなっていた。それどころか、会場にいた大半の者の姿も見えない。だが、これはゲームの中だ。何かのイベントかその準備の最中なのだろうと深くは考えず、逆に今の現代科学の進歩に関心していた。

 しかし、いくら待っていてもゲームは始まらない。それどころか時間が経つにつれて不穏な空気が漂い始めた。それでも、幸い自分のいた部屋には主催者の者が全員揃っている。どうにかなるだろう、大丈夫だろうと自身に心に言い聞かせジッとその時がくるまで待っていた。そして数分後、唯一頼りにしていた主催者から告げられた答えが“閉じ込められた”という現実だった。

 龍はそれを聞いた瞬間、出れなくなったことよりも、彼女を守れなくなってしまったことに失望し、主催者に直談判することとなる。

濃厚な死が漂う世界で一人の女を思い、そして殺しの復讐を誓った男。人間は死の中でどう適応していくのか…。

大仕事が終わってようやく再開。長らくお待たせしてしまい申し訳ありません。

どうぞ、次回の物語もお楽しみに。

それでは今後ともごひいいきに。

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