プロローグ
こんにちは~(゜Д゜;)!
初めましての方は初めまして~(´▽`*)♪
小学生の頃「自分が人生の主人公なんだよ」と道徳の授業で教わり、授業中に何故か椅子の上に立って先生に怒られた事がある狐野葉です!
勿論、この話は小説とは関係ありませんよ
それではどうぞ(^^♪
気づいた時、暗い闇が自分の全てを支配していた。幸い僕にとっても暗闇こそが全て。その暗闇が自分の産みの親のようなもの。何の疑念も抱く筈もなく、その場に存在する。否、存在し続ける。そんなことを無意識に確信していた。だが、時間という概念が判らぬその世界は、いつの間にか終わりを迎えようとしていたのだ。何も存在しない暗闇の空間に「声」というものが度々乱入してくるのだ。
しかし僕は何の感情も抱く事はなかった。そもそもその時の僕が、感情というものを持ち合わせていたかというのも疑問ではあるが。
そして、突如として眩しい光が視界に入ってきたのを知覚すると同時に、意識は再び闇に沈んでいく。
ここで僕が初めて「現世」という世界へと招待された訳だ。
~平成12年 9月13日~
意識がはっきりしたのは僕がまだ四歳の時だ。最初に目に入ったのはやはり暗闇。
ここはどこだ?
そう考える事ができたことからして僕は誰かの庇護下にあることが予想できた。未知の言語を理解するには誰かに教えを請う必要がある。勿論、「誰か」というのは生物だけを観て言うのではない。辞書や環境等からも学ぶことができる。だが、若年にして辞書など扱える筈もないし、知る筈もない。結論として一番妥当な答えは、言語を理解する人間に自分は管理されている……否、周りに人の気配が無いことから管理されていたという事。
そこまで理解して周りを見回すと、視線の奥で光を捉えた。どこか懐かしさを感じさせ好奇心を抱きながらも、そこから離れたくないという思いが自分の中で葛藤し合う。
……なに?
そこで初めて気づいたのだが、自分は何かを持って…ではなく、握っていた。暗闇であるためによく見えないが、それは確かに自分の手中に存在している。優しい温もりを感じ、柔らかくもあり硬さも感じる気持ちの良い感触、強く握ると暖かいものが自分に染み込んでくるような感動の念に打たれた。
そして、僕は無意識に光の方へ歩み寄っていた。これが何なのか知っておきたい好奇心に負けて。
光に近づくにつれて僕の知覚が感じ取ったのは、苦いような落ち着くような何とも言えぬ木々の臭いと、水滴が無数に降り注ぐ静清という音響を作り出す空間だった。
ここは……トンネル?
そう感じたのは「先天的な勘」というものが働いたためだ。雨の音が強い訳ではないが、その音が自分の後ろの暗闇に乱れることなく一定に響き渡るそれは、自然というよりも人工というものを感じさせたのだ。…今更ではあるが、自分の足でここまで来ておいて何故疑問に思うのかと阿保らしいと自嘲する感情を抱かない訳ではなかった。が、分からなかったものは分からなかったのだ。存外、光に向かい歩いているこの無意識の行動すらも、自分が愚鈍である証明なのではないかと真剣に考えてしまう程だ。
そんな事を考えながらも、始めに視界に捉えたものは灰色の空だった。暗闇がちょっとした光で薄くなっただけの色、黒い染みを落としたいためか降ってくる水は当分は止まりそうにない。そんな空の下に在るのは、自分と深緑の木々に囲まれたトンネルだけ。
「…ここは、どこ?」
二度目に感じた疑問は最初と変わらない。どこ?と現在位置を確認しようとしているが、別に場所を知りたい訳ではない。自分の身の安全を確認したいのだ。今までは暗闇こそが自分の世界だったため、光の当てられる世界など自分にとっては未知の世界。常識的に考えたら、生まれた瞬間から十数年間は親の監視下に人間は自立していく。が、僕は其の事すら知らないし、されてもいない。
考えて分からぬ結論を考え続けるのは時間の浪費であり愚者のする事…前任者はどうしたのだろう?
四歳の子供が社会人のような事を考え、致し方無い、と疑問に思っていた事を心の中で払拭させた。ここでようやく自分の手に握っているものに関心が向き、視線を下に向ける。紅葉のような手に持っていたもの、それは血濡れた肉片。
これを目にした時、混濁する事はなかった。が、ただ一言、そう、一言だけ呟いた。
「ああ、かあさんか…」
「かあさん」と口にしてみたものの、それが何なのか分からなかった。何故呟いたかも分からない。世の中分からない事だらけだったとしても、ここまで中途半端に分からないのは僕だけなのではないかと想像したが、まず比観できる相手がいない事に悲観した。
物思いに耽りながらも自分の持っている肉片を見つめていると体の芯から、暖かい気持ちの良いものが浮上してくるような感覚を覚え…その肉片をトンネルの奥へと投げ捨てた。その肉片によって生まれた感情ではないと悟ったため。だが、それがどうしてなのかは分からなかった…訳がない。
一、血濡れている肉片
二、握っていたのは自身の手
三、まだ暖かい
「フラチなショギョウ…サイアクかな?」
この三つの情報だけで何故自身が感銘を受けていたかが明白。というより、それ以外考えれない事だ。自分が殺傷したからだ、と。
そして、その行為自身を最悪だと認識できる知能から殺しの衝動に駆られる常識人…否、それも違う。最悪と思いながらも表情は何の変化も起きていない。ただ、機械のようにずっと笑っているのだ。
四歳にしては驚くべき知能を有しているがこの世界からは愛されなかった存在。神の悪戯で生まれたような存在通称「化け物」。
僕は自身の存在意義というものは全くもって気にしなかった。生命と知恵を与えられた以上自由に生きる、そう自由意志の下に決心した矢先、ある熟年の男と出会した。
大抵は雨の降る日は山でも森でも進んで入りたがる者はいないだろう。その上、長年使われてもいない廃トンネルの場所に誰かが来るのはおかしい。
アマヤドリ?
そんな単純な答えを導き出したがすぐにそれを否定した。何故なら、その男はゆっくりと歩き、その眼光は自身を一点に観察しているからだ。
其の上、自身を見ても一切戸惑いを見せないその姿、普通の人とは違う得体の知れない雰囲気が滲み出していた。
普通の人間というのを理解していた訳ではない、が、その男はおかしいと感じた。感じたが故に警戒…ではなく、その状況に喜んだ。男はどんどん自分の方に近づいてくる。どんな行動をするのか楽しみだった。これは子供特有の無邪気な心境なのかもしれない。
無邪気とは得てしてとても残酷なものだ。自分の気になる物があったら必ず手元に置かなければ子供は暴走する。手元にあったとしても乱暴に扱い壊し、暴走。それが理解できるまで止まらない、無邪気とは理性の働かない子供特有の心境なのだ。
しかし、やはり世界は広いもので異端というものは常日頃からどこかに存在する。無邪気ではあったがその子供には善悪をある程度判断できる知恵が既に備わっていたのだ。だが客観的に見たら説得力は皆無である。何故なら、その子供の髪は乱雑に切られており、元々黒かったであろう髪は長年血を被っていたのか赤黒くなっている。恰好こそ子供らしい服を着てはいるが、その服はズタボロの上、赤黒く染まっている。善悪を理解している?…理解しているならしているで精神上に問題を抱えている厄人。それどころか若年にして、自分より大きい対象を獲物に殺傷を楽しむそれは、もはや人間ではない。
「化け物がいると聞いて来たが、ただの餓鬼一匹ったぁ~。重い腰上げて来てやったのに」
その男がある程度近づくのを待ち…
「骨折り損のくたびれ儲けった~まさにこの事。…そんな事ないか?」
しゃがみ込んだ男の懐に一瞬にして入り…
「おい。ガ…」
男の言葉を遮り眼に向かい腿の裏に付けていた鎌を振り抜いた。その子供は理性というもの知覚しながらも、本能に近い感情に身を任せていた。故に、無邪気ではあるが異端なのである。
鮮血が飛び散り、大の男が両目を抑え転げ回る…そんな姿を幻視した。しかし、自分が振り抜いた鎌は、男の片手によりしっかりと受け止められていた。今までこんな事はなかった、有り得ない!と現実逃避する程子供は愚かでは無かった。瞬時にその場にあった頑丈そうな木の枝を手に取り、男の喉笛に突き刺すべく行動する。が、男の方が早く動き両腕を片手で拘束されてしまう。
「“人心の乖離”とはよく言ったものだ。お前は最初からそんなの持ち合わせてねえよ…還りな」
優しく言うや否や男の手が華奢な子供の無防備な腹部に深く食い込む。武道等でよく使われる「掌底打ち」という技だ。
その瞬間、僕は内臓を直接叩かれたような衝撃が全身を駆け巡り意識が遠のいていくのを感じ始める。が、瞬時に自分の体を捻り、無理やり片腕の肩の骨を外した。痛みによりブラックアウトするのを防いだのだ。
痛い…けど、眠るより、いい
子供は両腕を完全に動かせない事を理解し、男の左手首に噛み付いた。それが、如何に無駄な行為か分かっていた上で。…そう、この時僕は分かっていたのだ、自分はもう逃げられない、と。両腕は拘束、片腕脱臼、体勢は完全に崩され空しい抵抗しかできず、自分は闇の中に還っていくのだ、と。
しかし、そんな子供の意志とは裏腹に男の動きは止まる。そして、数秒の空白の時が経ち、男は言った。
「形あるものは何れ壊れる…死にたいんじゃないのか?」
僕ははっきりとその言葉を理解したが、自然と吐露した言葉は感謝だった。
「ヤサシイネ、いいよ、ザンゲのコトバならいらないよ」
男はそれを聞いた瞬間、盛大に吹き出し笑い始める。
そして、あれだけびくともしなかった拘束があっさり解かれた事に、僕は理解できないという感情で少し苛立ちを覚えた。が、男が腹を抱えながら笑う姿は、不思議と好感を持たせる印象があった。…まあ、笑いながら肩の脱臼を治した時の感情に怒気が混じったことには否めないが。
「囑望するに値する逸材だな。お前、名前は?」
「……」
「だよな…よし、今日からお前は『未来』、そして俺の息子だ!さあ、抱き着いてもいいんだぞ!ぶっははははははは!!」
「…ウン」
目の前の男が何を言っているのか僕には理解できなかったが、僕はまだ死なないという事だけは確かなようだった。だから僕はその男の首を持ってる鎌で掻っ切った。子供の力では切断までには至らなかったが、鎌は男に致命傷を与えるだけの傷を付ける事には至った。当然、男の首からは鮮血が絶え間なく吹き出し始める。ただ、その様子を見た僕、未来は首を傾げた。
赤い血、赤い血。だけど…あなたは人間?
男は首を掻っ切られたのにも関わらず、優しく微笑み、子供の体に両腕を回すように抱えた。
「子供からじゃなく、最初は親から抱き着くもんか……このコート着て、山降りろ。お前を保護してくれる筈、そこで学べ。…俺の死はお前の罪を背負っての贖罪。未来、人間として生きろ。」
男は最後まで言い終わると、糸が切れた人形のように突然倒れ、動かなくなった。
未来はこの男が最後まで何を言いたかったが分からなかったが、それでも良いと思えた。それを理解してしまったら、この男が不憫だと感じたため。
そして、行く宛ても無く彷徨うのも自由だと考えたが、僕はこの男の言った事に少し興味が湧いている、そんな感じがしたのだ。そのためであったかは定かではないが、僕は無意識に男のコートを羽織り、山を降りていた。
ここが僕の人生で最大の分岐点であっただろう事を理解して。
ここまで読んで下さった方は既にご承知のように、本作品は主人公が変質者の上、その作者もとんだ阿呆でございます。度々「何で生物的学理論に『睡眠』なんてものが存在するの~?」や「法におけるご都合主義の真理って何?」等と馬鹿極まる愚痴を零しているめんどくさい奴なのです。
そんな作者、影音狐野葉の作品でも大丈夫という異端な読者様、『未来堕ち』へようこそ!この世界は貴方を喜んで歓迎いたします!