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橙子との出会い 転校して

――思い出す。もしかしたら明子も、橙子も思い出しているのかもしれない。

彼女と、初めて会った時のことを。

「――席に着いて。今日は転校生を紹介する」

担任教師のその一声で、一斉に俺に注目が集まるのがわかった。

ザワザワと騒ぎ出す生徒たち。

しかし、静寂はすぐに訪れた。

ガタッと音がして、一席。机と椅子が豪快に倒れた。

見ると、目を丸くして、女子生徒がこちらを見ている。

「……」

何か言いたげな彼女。口をパクパクとして何も言ってこない。

当然だ。俺は彼女を知らない。彼女とは一度も会ったことがないのだ。

名前も知らない相手に、何を投げる。

「明子、どうしたの?」

心配そうにその女子生徒に声をかける後ろの席の女子生徒。

彼女は何を思ったのか。

今度は、こちらを睨みつけるようにしてきた。

当然だ。彼女も俺のことを知らないのだ。

「――直也だ」

「……なお、や……」

ひらがなで繰り返されたのがわかった。

だが覚えるために繰り返したのなら、まあまあだ。

ガッタン。またしても一席、机と椅子が倒れた。

ズンズンズンと、コチラに向かってくると、いきなり――ドスンと、俺の左頬を掠めて、黒板にパンチした。

「何だ?」

「私のパンチに眉一つ動かさないなんて、相当勇敢か、馬鹿か」

彼女は髪を靡かせ腕を組む。

余りにもその動作がスムーズで、少し感心した。

「まあ、どっちでもいいんだけど――明子に手を出したらタダじゃおかないから」

「明子……」

そう名前を呟いた瞬間。

「――うんうん。はい、はーい!」

元気に、満面に彼女は――明子は、手を挙げた。

「あの子が明子なら、君の名は?」

「呼び捨て!? ――アンタ、どんな神経してんのよ!? 初対面の相手に!」

「それを言うなら、君も初対面の俺に、パンチしただろう?」

怒髪天を衝いたか? と思った。しかし意外にも、

「橙子」

と俺よりも短く、自己紹介した。

これが俺と橙子の最初の出会いだった。

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