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2.覚醒~ただ前世の記憶が蘇っただけです~

 好きな物は漫画に小説。

 家族からはオタクと言われていたが決してただ本を多く買っているだけで周りのフェスだ!限定だ!徹夜行列だ!と言っている人達と一緒くたにされると不本意である。

 敢えて言うならオタクはオタクでも読書オタクだ!。


 ……取りあえずオタクだったかどうかは置いておこう。


 要は自分はこの世界ではない別の世界で一度生を受け一生を一度送っていたのだ。

 死亡理由は事故死で平均寿命から見れば早死にだったがそれでもまぁまぁな人生だったと思う。




 そんな何十年もの人生を思い出す形でウィレムは目を開けるとそこはベッドの上であった。

 白い天井ではあるが見慣れない天井という事はなく見慣れた自室の天井だった。

 ゆっくりと体を起こすと軽く頭に痛みが走った。


「ウィレム様!起きられましたか!」


 声が聞こえ振り向くとシルバの姿があり、心配した顔でこちらに近づいて来た。

 シルバは僕に仕えている唯一の執事兼護衛である。

 王族の子は1歳の誕生日に初めての従者を宛がわれる事が決まっていたらしくシルバはその従者の地位を勝ち取った優秀な男である。

 スーツ越しでもわかる鍛えられた体に髭が似合うダンディーな顔の男で仕事は完璧で優秀だが堅くはなく基本的には話の分かる奴で僕の問題行動を放置してくれる。

 そんな男が声を上げて心配する。……俺はなんで寝たのだったか?昨日は確か誕生日のパーティーであったはずだが……。

 ううん?いつ寝たか思い出せない。


「ウィレム!目が覚めたか」

「身体は平気?どこもおかしくない?」


 そう言っている間に今度はお父様にお母様も入って来た。

 訳も分からず頭が少し痛いがこれ以上心配させたくなく「だいじょうぶです」と答えると二人は安堵して近くに席を寄せて座った。

 二人が来るまで近くにいたシルバはいつの間にかそんな二人の後ろに一歩下がる形で立っている。

 しかし困ったことにここまで心配されるようなことが思い浮かばない。

 貴族の相手をした記憶はあるがその途中から記憶が抜けてしまっている。それが関係しているのでは、と行きつくが覚えていないのでどうしようもないのだ。

 なので素直に聞くことにした。


「あの……なんで心配しているんですか?」

「……あぁそうか。覚えていないか。あれを一杯飲んだのだから仕方ないと言えば仕方ないが」

「あなた水とお酒を間違えて飲んで倒れたのよ。それも愛飲家達が飲むような強いやつ」

「お酒ですか?」

「そうよ。気分は本当に悪くないのね」


 そう言われるとなんか飲んだ気もする。

 忙しすぎて気付かなかったな。

 それにそう言われるとこの頭痛にも納得がいく。



「はい、心配ないです。それじゃあパーティーはどうなったんですか?自分を祝ってくれるパーティーで倒れてしまったのなら後が大変だったんじゃあ」


 昨日のパーティーはお父様と使用人によって開かれた物だが主役は自分だったのだ。主催者の倒れたパーティーが無事だったとは思えない。

 心配になって聞くとお父様はニッコリと微笑むと答えてくれた。


「パーティーの方は問題ない。元々もう終盤に入っていたからな。私達で無事閉宴したよ」

「そうよ。お母さんが何とかしたから心配いらないわ」


 お母様は自分と同じ青い瞳を潤ませて抱きしめられた。

 抱きしめられる腕は少しきつく感じるほど力が入っている。

 そして自分とは違う青色の髪から感じられる花の甘い香りが安心感を与えて身体の力が抜けていくとお母様に身を預け膨よかな胸元に顔を埋められてお母様の満足いくまで抱かれ続けた。


「ふー。満足!」

「お前な~。今はウィレムの心配してきたのだ。それは控えるべきだろう」

「いいの!こんな嫌がらずに抱かれてくれるのウィレムだけなんだから」

「……はぁ、ウィレムが大丈夫そうだから私達はそろそろ職務に戻るとしよう」


 お父様はそう言うとお母様を引っ張って部屋から去っていった。

 シルバも部屋の外で待機しているので用があったら呼んで下さい、と言って部屋を出て行き部屋はウィレム一人になる。

 僕はベッドから出ずに倒れ込むと先程蘇った記憶を思い出した。


 記憶とはこの世界ではない世界で生きた記憶だ。


 死ぬまでの約30年間の記憶。

 なぜか名前は思い出せないが分かりやすく言うと……”転生者”だと言う事だ。


 だが自分はなぜ記憶を思い出したのだろう?


 前世で好きだったアニメやゲームなんかではこういった転生、転移なんかは勇者とか成り上がりなんかが定番であるがこの世界に魔族なんて人間の宿敵のような存在はいないので勇者は存在せず、戦争で戦果を挙げた者が英雄となるぐらい。成り上がりも既に王族と頂点である。これ以上は国王しかないのに成り上がりもないだろう。


 それじゃあ魔法で無双を!といきたいのにこの世界は魔法も無ければ異能の力も昨日聞いたのが初めてで一般的には存在していない。魔物は街の外に存在していて火を噴いたり雷を纏う魔物もいるようだが魔法ではなく単純な身体構造の成せる技らしい。ドラ〇エよりもモン〇ンと言った方が分かりやすいだろう。

 他に前世にない物と言うと獣人と呼ばれる種族がいるが人間ほど数はおらず過去の戦いで吸収されて一市民として混じってしまっている。


 では死ぬ前流行っていた乙女げーの世界に転生っていうのだろうか?

 それなら王族でも問題ないのだが生憎自分はこの世界が乙女げーの世界だと確信する物が無かった。

 そういった物は必ず何らかの知識がある物だが何一つ当て嵌まる物が無い。

 そもそも第7王子に転生って時点でなんかストーリーの外の存在な気がする。


 ならコンプレックスの塊の様な性格と肉体を改善して運命を変える逆転物。

 ……一応、問題行動はあるけど家族から見放されてる訳じゃないし身体は運動していて自分で言うのもなんだがかなり健康体だ。


 ・・・・となると後は亡国になってスタートするのだがこの国は隣国より力は持っているからそれもなさそうだ。

 あったとしてもちょっと御免被りたいストーリーを想像してしまう。


 う~ん、これ以上は思いつかない。



 もう一度状況の整理をしてみよう。


 この国はローグレイ王国。


 父はバルロクニス一世。

 この国の国王で他国では”種馬王”や”純愛王”なんて言われている。

 

 母はアルメリア・グーザ・マリー。

 この国の現王妃で元公爵家のご令嬢の家の出だ。あんなグラビア並みのスタイルをしているが5人の子供を産んでいる第一夫人。


 もう一人の王妃でクラスタ・グーザ・エレリー。

 隣国のお姫様で第二夫人。お父様の事が大好きで行動原理がお父様を中心にしている様な人である。


 それから王妃以外で唯一の妻である側室のメルアル・グーザ・シュシュ。

 元子爵で学園時代にお父様の命を救ったという美勇伝の後、側室に迎えられたそうだ(お母様にその辺の美勇伝は耳にたこができるほど聞かされた。ついでにお父様の武勇伝も)


 王子王女は16歳に姉、15歳にアレク兄、14歳に姉、9歳の兄に僕が第一夫人の子。

 11歳の義姉に来月11歳になる双子の義兄、8歳の義兄、5歳(年末が誕生日)の義妹で第二夫人の子。

 15歳のエリック、9歳の義姉の側室の子が二人の合計11人がいる。


 その兄弟で末妹を除く全員が7歳から18歳の12年制の学園に通っており、今は夏季の長期休み中で帰って来ている。明日にでもアファネを出る者もいるが今日は少なくとも全員いる。


 学園は前世の小中高の一貫校と思ってもらっていい。王族から平民に至るまで在籍し総人数10000人を超える生徒が通うマンモス校。全寮制で一つの街規模の学校である。選択科目に帝王学や騎士道学、平民の心得なんて科目があるがそこまで異質しているようには思えない。


 国は今は隠居している先代のじいちゃんの時代から戦争は起こっておらず至って平和でお忍びで城下に出たりしても小さな小競り合いがあるぐらいで大きな問題が起きている気配は感じられない。


 本当に何も思いつく物がないな。

 どうせなら戦国乱世でチート能力、俺TUEEEE―――!!!で無双のが分かりやすくて簡単だったんだけどなぁ~。


 異能能力も目覚めなかった……いやこの前世の記憶が異能ってことか?

 思い出したの昨日だし…じゃあただ単純に思い出したってこともあるわけか。

 ……つまり単なる偶然。




 …………………もういいや。起きて日常に戻ろ


「シルバ!鍛錬に行くから指導して!」


 ……いきなりシルバに叱られた。

 病人扱いするならアイアンクローはやめてっ!











 …………しかしこの時、既にゲームの歯車は起動し自分にとって醜い現実を突き付けられることとなるなんて気づきもしなかった。


裏設定2

この世界を作ったのは神である。

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