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11.初仕事

ここから序章二話目です。


 外は太陽が燦々と輝く中、外に出れずに自室で勉強していた。


 自室に用意された机の上に二人が魂が抜けたような顔になって倒れ込んでいる。

 僕は持っていたペンを机の上に置いた。


「今日の授業はここまでです。お二人ともまだまだ覚えないといけない物は多いのですから空いてる時間があれば自習をするように。

 ウィレム様は……特に問題がないですので復習も兼ねて二人を見てあげて下さい」

「分かりました。サランダ先生」


 サランダ先生はそう言って部屋から出て行き僕は隣に目を移した。

 リアもリエラも意識が現世から離れてしまっている。

 最後の方はもう容量がパンクして話など聞けていなかった。


 それにしても二人とも誰も見ていないとはいえ少しだらしのない顔だ。


 なぜ二人が一緒に勉強しているのかというと僕の従者になるにあたって王族の従者としての最低限度の教養が必要だとシルバとサランダ先生に言われた際になら一緒に勉強しよう、と言い出したからである。

 サランダ先生も快く承諾してくれてこうして勉強をしている。


 ここまでやるのはそれだけが理由ではなく実はサランダ先生から許可を取った後、サランダ先生が二人を学園に編入させようと言い出し、例によってシルバとお父様が勝手に承諾して学園側に編入手続きを送り二人は学園の編入試験に受けることになったのだ。


 その時の状況は今思い出しても二人には少し悪いと思っている。

 それは僕がサランダ先生に二人を紹介した所から始まった。


「リアさんとリエラさんですか。二人をウィレム様の従者にするというのですね」

「はい。僕の専属として働いてもらいます」


 サランダ先生は二人を交互に眺める。

 二人はその視線に緊張していたが視線は外さなかった。


「分かりました。二人も私の教え子として認めます」

「ありがとうございます」

「ですが条件があります。二人には休み中にウィレム様と同じ1年生の従者枠として編入してもらいます」

「「えぇ!?」」


 その時僕は声を出さなかったが二人と同じように心底驚いていたのが顔に出ていたようでサランダ先生はしてやったりといった少し悪の顔が見えていた。


「でも私達今まで勉強なんてした事ないんですよ」

「知っています。文字の読み書きも満足にできないそうですね。ですがウィレム様はまだ1年生。頑張れば問題ないレベルです」

「で!!でも!!」

「はぁ~お二人ともいいんですか。これはウィレム様と一緒に学園に行けるチャンスなんですよ?」

「「………」」


 サランダ先生、別にそれってメリットにならないよ。

 二人とも呆然としちゃってる。

 因みに従者枠というのは年齢が離れていても主と同学年で学園生活を送れる枠の事で本来はシルバの様な執事をサポートとして付ける貴族や早生まれで学年が別れるのを避けたい学生の為に用意されたシステムである。


「問題なのは編入には一応試験を受けなければなりません。名門校ですから文字の読み書きレベルでは済みませんが所詮1年生のテストです。不可能ではありませんよ?」

「分かりました。その試験受けます」

「やるからにはウィレム様の従者として必ず受かります」


 不可能ではないと聞いて二人はやる気を出して宣言をした。


「でも編入するにしても学費とかは」

「それなら心配はいらん」

「こ、国王様」

「話は聞かせてもらった。学費の方は何とかするからサランダ先生は二人を必ず入学させられるようにして挙げなさい」

「御意」


 そう言った後お父様は僕の方をしていい顔をしていた。

 ついでにその後ろにいるシルバもいい仕事をしましたと満足気であった。


 だが国王に必ず受かれと言われた二人は落ちた時を思って真っ青になってしまっている。


 こうしてサランダ先生の教育の元、編入を目標になった。


 僕としても一緒に学校に通うのは吝かではないので異論はなく二人の事を応援している。


 ただ今の倒れ伏している状態からも分かる通り二人は勉強が好きではないのとお父様に任されたサランダ先生が妙に合格させるのにやる気を出していて厳し過ぎな感じのため空回りして落ちないか不安だ。

 王族も通う学校という事から平民や編入で入る場合は普通よりも試験が難しいと聞く。

 こういった差別は普通に存在するからなぁ。




 そろそろ次も控えているのでそろそろ起こすとするか。


 身体を揺すり魂を身体に戻すと視点が定まった二人は身体を起こした。

 疲れ切っているところ悪いがこの後二人の案内で街を案内してもらう事になっているのだ。


 王家御用達ではなく民間人として街に住んでいた二人の行きつけに連れていってもらう予定だ。

 その為今日はいつもより楽しみなのである。





「ウィレム様、荷物の準備完了しました」


 シルバから渡されたのはお金だ。

 普段は御つきの者が持っているのだが今回はリエラとリアの二人と回りたいと言って護衛は遠ざけているので資金は自分で持つことになった。


「では我々は裏で待機しています。問題はないでしょうがいつもの様に近くで控えていないので注意してください」

「分かったよ」


 シルバは返事を聞くと護衛の兵士と共に気配を感じさせずに消えて行った。

 近くに控えているのだろうがどこにいるか全くわからないな。


 それから城下町に入る前の集合場所で二人と合流した。

 二人は勉強の疲れは抜けた様で僕が見えると手を振ってきた。


「ウィレム様」

「待たせた。それじゃあ行こうか」

「「はい」」


 市場に出ると最初にやってきたのは小物や飾り物のお店だった。


 初めて来るタイプの店だがなかなかきれいな店だ。

 店内は明るく掃除も行き届いている。

 品物も多いので色々と初めて見る物が多そうだ。


「いらっしゃい。何かお探しで?」

「いや、買う物は決めてきていないのでいいものがあったら頼みますよ」

「そうですか。ゆっくり見て行ってください」


 店員らしい人が声を掛けてきたが店員が必要でないと言うとすぐに離れて行った。

 それでは品定めをしていこう。


「ウィレム様!新作の携帯砥石が出てますよ!」

「調合用の薬草で新しいのも出てますね」


 リエラとリアも各々物色し始めた。

 ただ冒険者の癖なのか見ている物がアレだが楽しんでいる様なので突っ込まないでおこう。


 それから二人に負けず劣らず楽しみながら品定めを始めていく。

 筆記類や食品系でいくつか目についた物を購入していく。

 特に調味料はもしかしたら前世の調味料の復活ができるかもと重点的に見ていった。


「ウィレム様、次行きましょう!」

「ああ、今行く」


 いくつも面白そうなものがあってついつい長くいてしまったようで二人から声が掛かった。

 まだ未購入の物を購入して二人の元へと急い向かう。


「あれ?二人は何も買わなかったの?」


 二人の方は戻ると二人は手ぶらであった。


「はい。城に引っ越すときに買い物をして」

「今必要な物は足りてるので」

「そうなんだ。それじゃあ無理して買う必要もないし次に行こうか」


 それから店を出て購入した物の話をしながら次の店に向かった。



 次に案内された店は装飾品を扱う店であった。

 女性向けの店で当たり前だが女性客が多い。

 男物の品もあってなかなか面白そうなものがありそうだが男だけで入るには抵抗がある空間だ。

 チラホラ見える男性客もカップルや女性同伴しか見当たらない。

 二人に連れてこられなかったら入ろうと思えなかっただろうな。


「これ可愛いね」

「そうか?私はこっちのが好きだな」


 店内に入ると今度は年齢相応の華やかな声を上げながら女性らしい会話が聞こえてきた。

 二人は化粧品セットの箱の模様を見ながら感想を言い合っていく。


 お母様やお姉さん達が使っているのを見た事があるがこうやってじっくり見る事はなかったな。


 前世でも化粧品の知識はほとんどないに等しいし箱に入っている道具の大半がどういう使い道なのか分からなかった。


 流石に分からない物をずっと見ている気にはなれず二人に断りを入れて隣のアクセサリー系の方へと移動した。

 指輪にネックレス、ペンダントとこういった物の代表的な形は前世ともさして変わらない。

 男物もあるので化粧品程見飽きる事はなかった。


「お客さんこの辺は最近入荷したばかりの新作ですよ。御一つどうです」


 色々と眺めていると店員さんが声を掛けてきた。


「新作ですか」

「はい。昨日入ったばかりです」

「へぇ~。……ん?これは?」

「はい、こちらはかんざしですね。ここからここまでは髪を止めるたりといたりする品物になりますよ」

「そうですか。色々あるんですね」


 店員さんの言った範囲を見ながらいくつか手元で取ってみる。

 様々な加工が施されていてどれも綺麗に造られている。

 どれがいいかなぁ~。


「……ウィレム様?」

「ん?あっ、ごめん。少し集中して気づかなかった」


 いつの間にか店員は消え近くにリエラとリアが来て声を掛けていた。

 どうやら化粧品類は見終えたらしい。


「いえいえ、それで何を見てるんです?」

「あぁ、かんざしや櫛をちょっとね」

「かんざしですか?失礼ですがこの辺は女ものですよ?」


 僕が手に持っているかんざしを見せながら言うとリエラが少し困りがちにそう言ってきた。


「うん、分かってるよ」

「あっ、誰かの贈り物ですね?お母様やお姉さま方の誰かに送られるんですか?」

「それなら私達も手伝いますよ」

「いや、自分で選ぶよ。それにお母様達じゃないからね」

「………誰に送られるんです?」


 手に持っていたのを置き戻し違うかんざしを取りながら答える。


「今選んでるのは二人のだけど」

「「えぇ!?私達のですか!!?」」


 二人は予想していなかったのか周りにも聞こえる声で驚いた声を上げた。

 僕なんかまずいこと言ったかな?

 二人に似合いそうなの見つけたんだけど。


「少し遅いけど従者記念で何か贈ろうかと思ったんだけど駄目だった?今日の街案内のお礼もしていないし」

「(カァァァァ)そんな私達にって……」

「なんか恐れ多いですよッ!」


 かんざしを見た時二人に付けたら似合いそうだったからいいかなと思ったんだけど……。


「駄目だったかな?」

「……いやではないです」

「私も……」

「…………………」

「「あの、なんか言ってください!」」

「……あぁ、ごめんごめん」


 品定めも終わって二人にどうか聞こうとしたら二人とも顔真っ赤になっていたからびっくりした。

 なんか恥ずかしいこと言ったかな。


「それでこれなんだけどどう?」


 僕が選んだのはリアにはウサギ、リエラにはリスをモチーフにしたかんざしだった。

 色々と見たが結局最初に目に留まった二つが一番二人に似合っている気がしたのであった。

 二人に手渡すと二人は選んだかんざしを見て嬉しそうに微笑んだ。

 どうやら二人とも気に入ってくれたらしい。


「店員さんこの二つをもらうよ」

「ありがとうございます」


 店員を呼び会計を頼んで二つのかんざしは箱に包んでもらった。

 子供の買い物にしてはやや高い値段であったが用意された所持金の十分の一にも届かなかったので問題ないだろう。


 かんざしを買った店を出てからも更に何件か回った。

 冒険者が贔屓にしている武器屋や鍛冶屋、洋服店と色々と回りそれなりに時間が経過していた。


「ウィレム様、何か見たい物ってありますか?」

「うーん、見る物は見たし少々お腹も減ってきたからどこか食べる所に行こうか」

「そうですね。ちょうどこの近くに私の行きつけのお店があるんでそこはどうでしょう?」

「それじゃあそこに行こうか。案内よろしく頼むよ」


 近くといった通り目的のお店にはすぐに到着した。

 店の看板には”イナリ”と書かれていた。


「いらっしゃいませー!空いてる席にどうぞ―!」


 中に入ると店の人の声が上がる。

 とても元気で明るい声であった。

 店の中は食事時でもないのに人がそれなりにいて結構繁盛している。


「ってリエラじゃん。久しぶり!そっちの二人は初めてだね」

「そうだよ。いつもの三つお願い」

「りょうかーい!すぐできるからお冷でも飲んで待っててね」


 店の常連らしいリエラが対応し促されるままに席へとついて喉を潤す。

 喉が渇いていたようでコップに注がれていた水を全部飲み干した。


「リエラはここの常連なんだよね」

「はいッ。冒険者の仕事帰りによく食事を食べに来ていて、さっきのはこの店の主人の子でシオちゃんって言います。私と同い年で新人時代からとってもお世話になりました」


 それからリエラは普段よりも口数多く説明をしてくれた。

 このお店は5年前のリエラの冒険者登録より少し前ぐらいから開店して母と娘の二人で切り盛りしている。

 シオちゃんは5歳からこの店の看板娘として働いていている。

 リエラが通うようになったのも同い年で働くしおちゃんに親近感が湧いたからだそうだ。


 それに主人である母親の作る料理は絶品で気立てが良く、父親は亡くなったのか離婚したのか分からないが独り身なのもあって主人目当てで来る客も少なくない。

 言われて見ると確かに年ごろの男性客が多いように感じた。


「それは楽しみだな」

「はい、期待してもいいですよ」

「お待たせ――!イナリオススメメニューお待ちどー!」


 話のきりがついたところでタイミング良くシオちゃんがやってきた。


 持ってきたのはパイであった。

 外はいい焼け色をしていて中はフルーツがぎっしり詰まっている。


 見た目だけでも美味しそうなのが分かった。

 パイを見てリエラもリア目が輝き出して早く食べたいと言う顔へと変わった。

 どこの世界でも女の子は甘いものには目が無いようだ。


「それじゃあ戴こうか」

「「(コクコク)」」 


 頷いた二人は嬉しそうにフォークを持ってパイを一口サイズに切ってから口にしていく。

 味わって食べる二人の表情はとても幸せそうで可愛い。


「……………」

「ウィレム様、私何かおかしいですか?」

「え?」

「そんなに見つめられると恥ずかしいんです」

「あっごめん。二人ともおいしそうに食べてるもんだからつい」


 確かにあまり食べている所って見られたくないよなと思い自分もパイを口へと運んだ。

 甘い果汁が口の中に広がる。

 お世辞無しにとてもおいしかった。


「凄くおいしいな」

「お気に召してもらえた?」


 独り言で呟いた言葉であったがいつの間にか近くに来ていたシオちゃんが拾ってきた。


「ああ、美味かった」

「お母さんの十八番だから当然ね。リエラなんて羽振りがいい日は3,4個は食べていくし」

「シオちゃん!」

「な~に?間違ってる?」


 シオちゃんはリエラの反応に面白そうに笑う。

 リエラの方は恥ずかしいようで顔が赤い。

 別に好きな物をたくさん食べる事はなんもおかしくないと思うんだけどな。


「あんまりリエラをからかわないでやってくれ」

「はいはーい!でもリエラがこんな表情見せるなんて思わなくってねぇ。あなたがリエラのいい人?」

「シオちゃん!!?」


 からかうなって言った傍から。


 確かにリエラは可愛いけどただの主従関係です。


 それにリアもいるんだから。

 ……あぁこの世界重婚OKか。


「ち、ち、違うよ!ウィレム様は今の私の主人だよ。そもそも3歳も年下なんだよ。そもそも私なんて身分違いも甚だしいからそんなこと絶対あり得ないよ!!」


 でもこうまで否定されると流石に悲しい。


「分かってる分かってる。そう凄まない。ご主人様が見ているよ」

「う~」


 どうやら二人の言い合いはリエラの完敗で終わったらしい。

 頬を膨らませてさっきまでより乱暴にパイを捕食していく。


「それで主人さんはお貴族様なのかな?口調とか改めた方がいいですか?」

「このままでいいよ」

「了解。それじゃあそろそろ戻るので。これからもご贔屓にしてください」


 シオちゃんはそう言ってまた店の手伝いに戻っていった。


 手元を見るともうパイは無くなっていた。

 話しているうちに食べ終わっていたらしい。


 シオちゃんはこれに気づいて話を切り上げたのかな?

 結構休めたしそろそろ出ようかと二人に視線を送ると二人も頷いて腰を上げた。


 リアの方は静かだと思ったらいつの間にかお替りをして手元に皿が二枚になっていたが些細の事なのでスルーした。


「それじゃあここに勘定置いとくんで」

「はいよー!またのご来店をお待ちしてまーす」

「またね」

「またくる」


 イナリで食事を終えた僕達はもういい時間だからと城に戻ることにした。




 ◆




 城に戻ると二人とは荷物があるので部屋に置いていく為に一旦別れ、いつの間にか後ろに控えていたシルバと共に自室に向かっていく。

 いつも通りの最短距離の廊下を進んでいく。

 すると先の方から兵士が小走りで向かってきた。

 普段なら気にもしないのだが向かってきた兵士達が僕の姿を捉えた瞬間小走りになった気がする。


「ウィレム様、少々よろしいですか」


 そしてその予感が的中し兵士は僕の前に来ると声を掛けてきた。


「何です?」

「いえ、陛下から仕事の依頼が来ております。こちらが書類ですので目を通しておいて下さい」


 兵士は言うだけ言って僕の返答は聞かずに書類を押し付けて去って行ってしまった。

 あまりに一瞬の事で呼び止める事すらできずまた廊下にはウィレムとシルバの姿だけになった。





「という訳で仕事が来た。

 仕事の内容はギルドで今行われている調査の取締役だ」


 いきなりの事に暫く呆然とした後、取りあえず自室に戻り渡された資料を読んだ後、資料を地面に放り捨てる。

 シルバにリエラとリアを呼んで来てもらい読んだ内容を話した。

 本当はムードのあるソファー二つに机一つの個室なんかで行いたかったがあいにくそういった部屋の使用権限がないので僕が椅子、リエラとリアにはベッドに腰かけてもらい座る所のないシルバは立ってもらっている。

 取りあえず取締役になったとだけ伝えると早速リアが手を挙げたので発言を許した。

 

「取締役って何ですか?」


 リアの質問にリエラも同じことを思っていたのかやや前のめりになってうんうんと頷く。

 そう言えば二人はまだ9歳の子どもでしっかりとした学も学び始めたばかりだ。

 知らないのも当然か。


「取締役は簡単に言えば担当する業務の監視や管理をする人って事かな。今回の場合はギルドの調査結果を確認して不正がないかを調べる人たちの管理と不正を黙認する事の無いようにする監視だね」

「それってリーダーってことですよね?すごいです!?」


 上手く理解できてくれていないみたいだが的外れという訳ではないので話を進めよう。


 仕事はさっき言った通りで期間は5日。


 短いと思うだろうがそれは至極当然といえた。


 この仕事に本来僕は必要がない。

 資料を見たところ調査はチェックが終わった物の確認作業で5日経過して終わらなかった場合でも僕だけは仕事を終了し後は代行に任せることになっている。


 つまり何もしなかったとしても問題が少ない期間を僕の研修期間に当てられただけなのである。


 ついでに結果確認の為に事後処理したものも再確認されるようだし僕の仕事はたくさんあるようでまったくないのだ。

 僕が取締役をするメリットなんて現在ギルドに対する不安が住民の間に広がってしまっているのを王族も調査に関わっているので安全面は保証されたと払拭させる事ぐらいだろう。


「という訳で僕は明後日から5日間ギルドに通うけど……二人はここで留守番ね」

「「なんでですか!?」」


 おお、見事に同じタイミングでシンクロした。


「いや、だって別に何もしなくても問題ない仕事だからな。今回は人手はいらないしお前達には編入試験の勉強をしてもらわないと困るから」

「う~う~」

「サランダ先生に僕がいない間も教師を頼んでおくからわかんない事は先生に聞いて」

「…………」


 リアは嫌そうに顔になって呻き、リエラはここにはない何かに恨みをぶつける目になっていた。

 仕事以上にこっちの方が不安だ。

 まぁ、二人の事はサランダ先生に任せよう。


 それよりも明日からの仕事だ。

 さっきは何もしなくていいと言ったがこれは今後の回す仕事の参考にさせられる。

 仕事の結果はお父様も見ることになるだろう。

 ここで頑張って今までの自分の評価を少しでも良くしなければいけない。


 今の僕の評価は現在マユキに言われていた噂……よりも更に酷い物になっている。


 貴族すら無能と蔑んでいるとか、3歳で人を殺した殺人鬼のため幽閉されてたとか、機嫌を損ねると一晩で家が無くなるとか、まったく身に覚えのない評価がされているのだ。

 公衆の面前にどころか貴族とも接点を持たず素性が全く入ってこない訳分からずの第7王子という所から勝手な想像で盛られた結果なのだが最初にリエラとリアから聞いた時にはさすがに頭を抱えた。


「シルバには僕の補佐を行ってもらうけどその前に今回の調査関係者のリストを用意してくれ。あとギルド員の雇用書も」

「了解しました」


 シルバは一礼して答えたので間違いなく用意してくれるだろう。


 明日はそれらを頭に入れておかないとな。






裏設定10

王国の階級は基本の王を頂点に公爵。侯爵。伯爵。子爵。男爵。

伯爵以上の階級の者が領地を与えられ、子爵、男爵は土地の運営は任されている。

子爵、男爵の管理はその土地が領土内の伯爵~公爵が務める

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