実行当日②
『……ザー……おい…おい!……………返事をしなさい…っ!………電波が悪いな…………ザザッ…聞こえま………ぉーぃ……………』
静かな静かな家の中に、突然人の声が聞こえます。
命などない、電子的な人の声。
それはまぁ、ここに生きた人などがいない事は当たり前ですが。
玄関に無造作に置かれた──落ちている、黒い箱から。
ザーザーと流れるノイズの隙間に紡がれた言葉。
──────誰にも、届くことはありません。
『………応…がないような……で…………ザッ……捜索………GP…を使用……』
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「応答は!」
「それが…」
「あぁ…………じゃあやるか。」
「調べてみます!」
「う…う、ごいています…!」
「は?」
「GPSのシールからの電波が…」
「そっ…それは本当だな!?」
「「ハイ!」」
総勢10人もの警官が、一斉にある1点を追いかけたのでした。
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「重く…ないか?」
心配そうに妻の顔を覗き込んでいる夫。
2人はずいぶんと血色も良くなり、顔にもわずかながら肉がついてきました。
あの頃へ、近づいて。
「私の子よ?重いわけがないじゃない。」
「そうか。良かった。」
夫婦は沈みそうな太陽に向けて歩きます。
ただひたすらと3キロ半。目指すは扇川へと。
「あぁ…………あれじゃあないのかしらねぇ…」
そういった彼女の瞳にうつったのは、とても広く、ゆったりと水が流れる澄んだ川でした。
どんぶらこ、どんぶらこ、と、笹舟が流れているような。
いつもより少し短いです。ごめんなさい。キリの良いセリフで終わらせたくて。