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昔々の始まり
昔々或る処に、1組の親子がおりまして。
そこに生まれた子の名は太郎。幼いながらしっかりとした顔付きの男の子でありました。
太郎は1歳というのに既に、自らの足で地面を踏みしめ、その手には常に木製の太い棒が握られておりました。
赤く染まった壁とガラスの砂浜。
心を動かす風景は、全てが美しいわけでも無いのでした。
「きゃぁぁぁぁっ…やめ…てっ…」
ぼすっ、ぼすっ、ぼすっ。
甲高い叫び声は、飛び跳ねる血とリズムを刻んで。
飛び散ったガラスに照らされて。
外から見ることができれば、この様子は平常なものではとてもとてもありませんでした。
─────でもそれは、見ることが出来たら、の事。
「今日はこのくらい、か。」
人目につくことなどない深い深い森の中。
1歳にして話すことのできる男児と、不幸にもその子を授かってしまった両親の、生に狂った物語。