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因縁の相手

 たちまちにして街の外円部は様々な魔物達であふれ返った。竜が破壊した場所からだけでなく、四方の門からも混乱に乗じてなだれ込んできたのだ。辺りはたちまち剣戟と悲鳴のるつぼと化し、三人の少女達はセレスの下へ行くことも出来ず、身を守るため一箇所に固まった。


 戦いの前に師が言っていたのだ。もし自分と離れ離れになったら、その時は常に三人で行動するようにと。


「ど、ど、どうしようルナちゃん?」

「困った……先生のあの様子だと、何だか凄い敵が現れたのかも……」

「ふむ……確かに大きな揺れであった」


 惨劇を引き起こしたのがあの本に載っていた化け物だとは、まだ三人は気付いていない。しかし、あまりぐずぐず出来る猶予は無かった。このままでは調子づいた魔物達が内側の門を破ってしまうだろう。予想外の事態に動揺した兵士達は本来の力を発揮できずにいた。


「あたし達も戦わなきゃ……人のために戦うのが魔法使いの役目だっておししょーさまも言ってたもん」


 その言葉に同意なのか、ルナルナもクナイも頷いた。


「まずは他の兵達との合流が先決なり。拙が先陣を努め候。ミーア殿とルナ殿は援護をお願い申す」

「うん、お願いクナイちゃん」

「……頼りにしてる……」


 少女達は階段を通って地上へと下り、遠くで魔物達と戦う一団を援護する為に駆け出した。


      ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 その頃、セレスは巨大な竜を見上げていた。しかし呆然とするのも束の間、すぐに自分が取るべき行動を思いだす。背後に視線を投げ、幸い弟子達がついてきていないのを確認するとセレスは覚悟を決めた。


「守ってあげる約束を破っちゃったな……」


 セレスは駆け出して竜との距離を詰める。そして突然現れた恐るべきドラゴンへ攻撃しようとしている魔法使い達に対し、警告の言葉を上げた。


「よすんだ!!」


 しかしその言葉が届く前に彼らの魔法は完成し、炎、氷、雷それぞれの力を持った各種攻撃が放たれる。だが、魔竜はその攻撃を全くものともせず、うるさそうに身をよじっただけだった。


「そんな……魔法が効かない!?」


 悲鳴を上げる魔法使いの側に寄る。彼は魔法使い達の代表としてあの会議に参加していた男だ。5レベルまでの魔法を行使できる彼は、このアルサンデで一番の使い手だった。


「詳しく話している暇は無い。あいつは僕がひきつけるから、貴方は街の中心に向かおうとしてる他の魔物どもを殲滅してくれ!! 他の部隊とも連携して。頼む!!」

「セ、セレス……」


 そんなやり取りが行われているのを知ってか知らずか、竜は半壊している外壁の間に頭を差し込む。その視線の先にはアルサンデの最後の防衛ラインである内側の壁があった。内の壁は外の壁に比べて厚みは薄い。竜は片目でその壁を睥睨すると四肢を踏ん張った。今、ドラゴンの白い体は微弱な青のオーラに纏われている。それを見てとるとセレスは手振りと共に魔法の詠唱を開始した。


 やがて白竜が牙の並んだその口を開けた。その両顎から吐き出される巨大な氷雪の塊。それが街の内壁を打ち崩さんとした時、セレスの魔法が完成した。


「《火炎防壁フレイムフォートレス》!!」


 セレスの言葉と共に地面に生み出された厚い炎の壁がその氷の塊を受け止めた。耳を聾するような轟音と大量の水蒸気とを発しながら、氷塊は跡形もなく消失した。


 竜は驚愕し、ただ一人逃げも隠れもせず外壁の上でこちらを見ている小さな影へと首を巡らせた。


「やあ、ドラゴン」


 セレスは多少ひきつっていたかもしれないが、竜を挑発するかのような笑みを浮かべる。

 その時、白竜は思い出した。かつて自分に戦いを挑んできた二人のちっぽけな生き物を。だがその二人の生き物は自慢だった自分の防御を一部打ち破り、あまつさえ瞳の一つを奪ってみせたのだ。


 竜は咆哮した。もちろん怒りの為に。そしてその吠え声と共に、竜を包む光の色が変化していく。長い咆哮が終わった時、その白竜を包むオーラの色は青ではなくなっていた。今では翡翠かエメラルドのような美しい緑色に発光している。


 セレスとその師が書物にまとめたマーブルドラゴンの特性。この竜は特殊な咆哮をあげることにより、己の属性を変化させる。今、この大理石の竜は雷の力をその身に宿していた。


「まあ、そうくるだろうね。実際、以前の僕と師匠はそのオーラを纏った君に手も足も出なかった」


 セレスは一人ごちて胸壁に手をかけ、その石の上へと立つ。そして《雷光一体化ライトニングユニフィ》を唱え、城の外で体を支えている竜の後ろ脚の側へと瞬く間に移動した。鱗に包まれた太い脚へと手を添える。


「でもね、人は成長するんだよ……《掌氷槍アイスジャベリン》!!」


 言葉と共に生み出された大きな氷の槍が白竜の後ろ脚を刺し貫いた。予想外の一撃に白竜は苦悶の声をあげ、体をのたうつ。巨体が壁にこすれ、瓦礫の破片が撒き散らされた。


 セレスはもう一度《雷光一体化》を唱え、竜からも外壁からも離れた場所へと移動する。もちろん、これ以上街に被害がいかないようにする為だ。白竜は全身で向き直り、新たに傷をつけてくれた憎い敵を睨みつける。


 セレスは剣を抜き、その刃に氷の魔力を与えた。それは先ほど城門で使ったものとは違い、遥か上位の魔法だった。


「さあ、こっちだ。三つの属性を持つ竜……マーブルドラゴン!!」


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