空を舞う矢と翼
弓兵の放つ矢が一匹のジャイアントバットを貫いた。金切り声を上げながら落下していく巨大なコウモリ。ジャイアントバットは炎氷雷の属性を持っていない。それはつまり弓兵や兵士達が持つ通常の武具でも十分な効果を上げられるということだ。何体かが矢の雨をすり抜け、弓兵の元に到達することがあったが、そんな時の為に控えている剣を持った兵士たちが即座に動き、魔物達を切り伏せていた。
ミーア達の側にも一度大きなコウモリが二体近付いてきたが、まだ少女達の緊張が解けていないことを見てとったセレスが魔法で素早く一体を始末していた。
もう一体は二刀を抜いたクナイがことも無げに切り伏せ、それを目の当たりにしたセレスは、この子もいろいろな意味で底が知れないなと内心で舌を巻いていた。
空を覆う影の変遷を睨み、大地を埋め尽くす魔物達の動向を見て取ったセレスが三人の少女に告げる。
「よし、あとは兵士達に任せよう。予定通り、僕達は他の魔法使い達と一緒に地上の魔物達を掃討する。属性の加護を身につけている厄介な連中を始末するのが魔法使いの役目だ。コボルドやゴブリンなんかは他に目標がない時くらいで構わない……っ!?」
言葉の途中でセレスは剣を抜き、虚空へと素早く振った。飛来してきていた粗末な矢が弾かれ落ちる。
「弓を使う連中も出てきたか……ルナルナ、二人に《氷結鎧装》をかけてやってくれ。もちろん君にもね」
「分かった……」
ルナルナがスタッフを手にチャージスペルの詠唱を開始する。
「生きとし生けるものをとこしえに封ずる氷の壁よ。その片鱗を我に与えよ。身体を覆う冷たき守り手となれ」
今ルナルナが唱えようとしている魔法は氷の魔力による鎧で体を覆うというものだ。基本的に身軽な格好をしている魔法使いにはよく重宝される魔法だった。
「《氷結鎧装》……」
冷気を纏った鎧が三人の小さな体を覆っていく。目をこらせばうっすらと氷の輝きが見えることだろう。
「ありがとうルナちゃん」
「感謝いたす、ルナ殿」
「ん……でもあんまり過信しちゃだめ……何度も攻撃を受けるとその内に壊れてしまう……」
攻撃を防げる回数はその威力に反比例するが、ゴブリンやコボルドの類が撃ってくるような矢ならおそらく十回程度は防げるであろう。セレスは満足げに頷いた。
「よし、ではそれぞれ始めてくれ。敵の攻撃が激しい時は大人しく壁の陰に隠れるんだ。自分の無事を一番の優先事項にすること。いいね?」




