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やつらは夜と共にやって来る

 街のそこかしこに赤い火の粉を散らす輝きが揺らめいている。それは魔法の灯火だったり、獣の油を燃やす原始的な炎だったりとさまざまだ。内外を二重に囲む壁の上にもそれらの明かりがいくつも配置されていた。きっと空から見下ろしたら美しい紋様を描いていることだろう。


 人間は魔物達のように夜目がきかない。それに今日はあの黒い月が白い月の輝きを覆い隠してしまう日なのだ。一つの街を丸ごと巨大なかがり火とするこのやり方は、戦いを有利に運ぶためにずっと以前から行われていた儀式であった。それに人間がいることを示すたくさんの明かりは魔物達をおびき寄せる効果もある。近隣の村々に被害を出さないために必要な措置でもあった。


 セレスは遥か遠くに連なる黒い森や険しい山並みに視線を移す。今ではシルエットしか見えない前人未踏のその場所は魔物達の住まう魔境だ。以前、師に連れられてその場所を旅したことがあるセレスだったが、いつ見てもその光景は言い様もない不気味さを感じさせた。


 いつの間にか空に白い月が見えなくなっている。魔物達の守護星が人間達のそれを黒く塗りつぶしてしまった。


 やがて、遠くから地を揺らすかのような雄たけびが聞こえた。不快な鳴き声と共に空を舞い始めた数多の影。ついにこの世界でもっとも長い夜が始まったのだ。


      ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「今の内に空を舞うコウモリどもを潰しておく。打ち合わせ通り、三人は至近距離まで近付いてきたそいつらから弓兵を守ってやるのが仕事だ。いいね?」

「は、は、はいっ」

「……やってみる……」

「委細承知」


 各種魔法の有効距離はそこまで長くない。まだ敵が到達していない今は弓兵が戦場の要であった。それぞれ頷く三人の少女。クナイはなんともないようだが、ルナルナ、そして特にミーアは初めてと言ってもよい大規模な戦闘に緊張している。セレスは小さく微笑みかけ、二人の髪の毛をくしゃくしゃと撫でる。


「大丈夫。打ち合わせ通りにやれば問題ないさ。もし敵が襲いかかってきたら僕が守ってあげるから、ね?」


 ミーアは顔を赤くして、ルナルナはいつもの無表情でこくんと頷いた。


「よし、それじゃ行こうか」


 セレスと少女達は早足で歩きだす。そんなセレスの袖を一人の少女が小さく引っ張った。


「? どうしたのクナイ」

「拙も日頃からもう少し乙女チックな振る舞いをした方がいいですかね?」


 先ほど自分だけ頭を撫でてもらえなかったことが不満らしい、闇に生きる少女の愚痴だった。


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