4-satoko2-
4−satoko2−
今日のあの人も今までのどんなあの人より素敵だった。
あの人の魅力で完全にドライアイだ。
シバシバシバシバする。
目が、
あの人は誰の物でもない、
もちろんあたしの物でも。
あの人は嘘をつかない、
絶対に恋人はいない。
あの人は歳をとらない、
・・・いや、とる。
だから余計に美しいんだ。
散々選んで買っても、切り花は枯れてしまう
素晴らしい映画も、エンドロールは必ず流れる
何度も繰り返し呼んだ小説も、何度読んでも必ず最後のページが現われる
大好きだった鈴木くんも、別の女と結婚した
でも、失くなるから
失ったから私はそれらを愛しいと思えたんだ
それでも彼の嘘偽りの無い爽やかな笑顔に勝る美しいモノは無い
いつかあの人も死んでしまうだろうか?
そのときは後を追おうと決めている。
あたしは悲しい女だろうか?
それは考えないことに決めている。
とにかくあの人の素晴らしい瞬間を残しておくんだ。
テレビCMはカットしてね。
みんなが忘れても 私は忘れないように
ねぇ、ワニ吉?
あたしは夢に溺れているわけじゃないの
毎日毎日決意してる。
明日こそはきちんと自分の人生に向かい合おうって。
あの人の人生とあたし人生とは別物だってこと
でもお願い、
もうすこしだけ
もうすこしだけ
うまく出来ないあたしを見逃して。
ただ
ただ
あの人が好き
あの人が好きなの。
それだけは信じて。
乾いた目に煙が沁みた
<つづく>