祭り男と海 前編
こんな感じで分けてるのは単に自分のポリシーです。
意味が分からない?申し訳ございません。
喫茶店『黄昏』。
自由奔放な神様達が通うこの店にも、一応休日はある。
人間界でいう『日曜日は絶対休みの法則』は一応まだ人間である和也にも当てはまる…筈なのだが、ロキやらゼウスやら亜麗沙やらの所為で中々休みがとれない。
そんな彼の唯一の定休日が、祝日だ。
そしてゴールデンウィークといえば、和也にとっては砂漠のオアシスの様な物。
しかし、今年のゴールデンウィークの『二日間ずっと寝るぞー』計画はいとも簡単に崩れた。
何故か。
答えは、目の前にある。
「おおーー!!!海です!海ですよ和也さーん!!!」
「妾も海は来た事が無かったのう。中々に楽しみじゃ」
「海に来ねえとか人生の八割損してんな」
「つまり妾は650年程無意味な時間を過ごして来た訳か」
上から、アルテミス、玉藻前、須佐男、また玉藻前。
二人の神と一匹の妖怪のはしゃぎように、和也は軽く眩暈がした。
きっかけは四時間程前。
アルテミスが『黄昏』に来た時の事だった。
何時もの如くコーヒー(砂糖とミルクが大半を占める)を頼んだアルテミスが、カレンダーに目を留める。
「海、行きたいです!!!」
「海じゃと!?」
アルテミスの一言にすっ飛んで来た玉藻前に、良いからとっとと掃除しろと追っ払った後、彼女の言い分を聞く事にした。
「何で海?」
「お父様が連れてってくれないんです、危ないからって」
「…で、ここでそれを言った理由は?」
「和也さんなら連れてってくれるかなーって」
「妾も行きたいぞ!!」
「分かった分かった。一日で良いなら連れてってやるよ」
「本当ですか?」
和也を覗き込むようにして、アルテミスが言う。
「ああ。…幸い、暇な海男を一人知ってる」
というわけで、須佐男に「うおーい飯作ってやるから海連れてってくれよー」と言うと二つ返事で了承してくれたので、水着を購入した後直ぐに来たのだが…
「なあ」
須佐男がかなり抑えた声で和也に呼び掛ける。
「どうした?」
「あの二人の水着って、お前の趣味か?」
「…それに関しては全力で否定させてもらう」
まあ、そう言いたくなるのも分かる。
買う時に全く確認していなかったのだが、アルテミスはスクール水着だ。ご丁寧に名札に「あるてみす」と書いてある。
それだけならまだ良かった(良く無いが)。
問題は玉藻前にあった。
何せ殆ど隠せてないのだ。紐ですか、と聞かれても文句が言えないレベルである。
「ん?どうした主様。妾の肢体を見て欲情してしまったのか?」
「穢れを知らない子の前でそういう事を喋るな。またボンレスハム一歩手前まで行きたいか?」
「すまぬ」
漸く納得してくれたか、と和也が残り二人を見ると、
「よくじょーって何ですか?」
「こういう事さ」
言って、須佐男はいきなりポージングを始めた。
どうやらこっちが解決していないようだ。
「フンッ、フンッ!!!」
「落ち着けこの脳筋」
言って、トールから借りていたハンマーで思いっきり殴る。
ばこーん、と良い感じに飛んで行った。
おおー、とアルテミスが感嘆をもらす。
玉藻前が、落ち着いて質問する。
「何をしとるのじゃ主様?」
「準備運動」
当然の如く言い放つ。
「ま、折角の海だし、楽しむか」
自分の中での須佐男さんはこんな感じです。