学生巫女と油揚げと石 後編
まだまだストーリー作りは下手な様です。
喫茶店『黄昏』の一角。
亜麗沙はそこを陣取り、狐女の尋問をしていた。
「名前は?」
「玉藻前じゃ」
「元々いた時代は?」
「鳥羽上皇に仕えておった」
「平安時代の末期だな」
それまで傍観していた和也が口を挟む。
「んで、好きな物は?」
「油揚げだーーーーーー!!!!」
「和也さん、邪魔しないでって言ったよね?」
釣り糸から油揚げを垂らした和也に、亜麗沙は咎めるように言う。
すると和也は、むっとした表情になる。
和也は滅多に怒らない為、亜麗沙は少したじろいだ。
「良いか、亜麗沙。俺は人外用の料理を作り続けてきた。だからこそ言える事なんだが、どんな悪神だって、どんな妖怪だって、美味い物を食えば少しは良い奴になるんだよ。そうならなくても、餌付けによって悪さを出来ない様には、絶対なる」
言い分を全て聞いた亜麗沙は、何処かしら納得した様な表情をして、一言。
「それで、本音は?」
「…油揚げを作り過ぎた」
彼女の懐から、簡単な式神が飛び出した。
凄まじい音と共に、和也が吹っ飛ぶ…のでは無く。
玉藻前が九本の尾を使って盾の様にして、和也に迫り来る式神を防いだ。
「何をするか小娘!!!」
「な、何よ!!」
いきなり怒られた事に対して亜麗沙は少し驚くが、小娘と呼ばれた事に腹を立て食ってかかる。
「この者は、妾に油揚げをくれた者ぞ。その主人同然の行いをした彼にその様な仕打ちをするなら、妾は全力でお主に裁きを下そう」
言うと、玉藻前の手に扇が現れる。
かなりの力がありそうだ、と亜麗沙は気圧された。
が、本当に怖い奴は別に居た。
「…おい、玉藻」
玉藻前の後ろから、ドスの効いた声がした。
玉藻前が恐る恐る振り返ると、其処には和也の姿が。
しかし、右手に包丁を持って。
「わ、妾が何かしたのか?」
少し幼くなった様な口調で、玉藻前が尋ねる。
和也は無言で頭上を指した。
正確には、先程の式神によって穴の空いた天井を。
「テメェが式神を弾いた所為で店が壊れたわけなんだが…糸を巻いてハムにでもするか?」
顔がヤクザだった。
では無く、本気だった。
ぎにゃー、と玉藻前が糸を巻かれる様子を見た亜麗沙は、そそくさと立ち去ろうとする。
「おいおい、式神を飛ばしたのはお前だろ、亜麗沙?」
肩を掴まれた。
カタカタと震える亜麗沙を、和也は笑顔で店の奥に連れて行った。
ロキは、とあるビルの屋上に居た。
手には双眼鏡。
見ているのは、『黄昏』の店内である。
酷い有様だと、ロキは逆さ吊りにされうねうね動いてる(正確には頭に血が上らないよう、頭をなんとか上げている)玉藻前と亜麗沙を見ながら思った。
その後ロキも捕まって一緒に制裁を受けたり、玉藻前を誰が保護するかでひと騒ぎあったりするのだが、それはまた別の話。
面白いと思ってくれれば、是非評価お願いします。
異端児 さん、感想有り難うございました。