香織の作戦
私たちは、授業を終え屋上に来た。
学校特有の屋上で、何もない。
ただあるのは、辺り一面を覆っているフェンスくらい。
フェンスの隣にある、通気口みたいなところに香織と夏海が座ってる。
私は、フェンスにもたれかかっていた。
香織は作戦を練っていた。
どんな作戦か聞いても教えてはくれない。
「いつ実行するの?」夏海が聞いた。
香織は微笑むだけ。
沈黙が続く。
鳥の鳴き声と、遠くで聞こえる部活のかけ声だけだった。
「もう…教えてくれたっていいのに…雛はどうするの?」
夏海は、誰かの作戦を聞けるまで聞いてくるだろうと思った。
『ないよ…作戦なんて。』
「考えてなかったの?じゃあどうやってその気にさせるつもりだったの?」
夏海は、私に詰め寄って真剣な顔で聞いてくる。
『思いつかなくて…夏海は?』
逆に聞いてみた。
夏海は自信満々に応えた。
「あるわよ。でも、みんなが言わないなら私も言わないわ。」
夏海はそう言いながら香織を見た。
香織は笑っていた。
それから数日後、香織の作戦が明らかになった。
香織は、先生を待ち伏せして家までついていくつもりだったらしい。
それが噂になった。
先生と香織が付き合っている、と。
香織は「作戦は上手くいってるわ。」と自身たっぷりに笑っていた。
けど、次の日には泣きながら電話をかけてきた。
「最低よ、あいつわ。先生だからって…私のこと子ども扱いして‼ムカつく。上手くいくと思ったのに。」
一方的に話して電話は切れた。
香織の作戦は失敗に終わった。
「ゲームオーバーだわ。」と自分で言っていた。