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Nightmare Knight  作者: tillé.o.fish
第三章 The conditions for living.(生きるための条件)
11/41

XI

 フェルディックは、ゆっくりと覚醒した。

 ニ、三度、瞬きをして、視界が晴れると、そこには見たことのない石造りの天井があった。

 何故、自分はこんなところにいるのだろう――。

 たしか……レッドキャップと出会って……馬に乗って――。

 記憶は、そこで途切れていた。まだ頭がぼんやりとする。

「気が付いたようだな」

 フェルディックは声のする方へ首を曲げる。堅い表情をしたおじさんが、楽な姿勢で椅子に座っていた。

「あの……ここは……」

「ローデンハイムの兵舎だ。馬が、気絶した君を運んできた」

 フェルディックは、ローデンハイムと聞いて、心の中でひとまず安堵した。

「気分が良くなったら、話を聞こう。それまで、休んでいるといい」

「いえ――もう大丈夫です」

 とても寝ている気にはなれない。

 フェルディックが上体を起こすと同時に、若い男が、ドアを開けて部屋に入ってきた。

「フランクさん、お昼買ってきました」

 彼は手にした紙袋を、嬉しそうに見せびらかす。

「今日は運が良いです。ほらこれ! クラリスの限定、太陽の美味しさいっぱい職人の干し葡萄パン!」

 彼は紙袋をテーブルの上に置くと、起きているフェルディックに目を向けた。

「おや、気が付いたようですね」

「ちょうど今、目覚めたばかりだ」

「それは良かった。――君、目覚めたばかりでお腹が空いただろう? 運がいいね。今日は美味しいパンを買ってきたから、遠慮せずに食べるといい」

 彼は笑顔で、紙袋の中身を取り出そうとする。――それを、フランクが止めた。

「待てベン。目覚めたばかりですぐに食欲があるとは限らん。彼の意見を聞くべきだ」

 どうかね、といった風にフランクはフェルディックに目を配らせる。

「あ、あの……ええと……」

 フェルディックは言葉に詰まる。なんだか、答えにくい――。

「フランクさん。彼に答えを求めるのは酷というものです。こういう場合、遠慮しちゃって言い出しにくいものですから」

「そうか?」

「そういうものです」

 ふむ……と、フランクが喉を鳴らす。

「ところで……君、一体何があったんだい? 馬に乗ったまま気絶する人なんて、滅多に拝めるものじゃない」

「はい……それは……」

 フェルディックが事情を説明しようとした矢先――お腹の虫が空腹を主張した。お腹が空いているとは思ってもいなかったが、体の方は正直だったらしい。

 恥ずかしそうにお腹を押さえるフェルディックを見て、二人の表情が和らいだ。

「急ぐこともあるまい。何があったかは、食事をしてからゆっくりと聞こう」

「ええ、それが良いです」

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