第一話:死んだはずの朝
目が覚めた瞬間、俺は確信した。
「……あ、これ死んだわ」
視界に広がるのは、見たこともない石造りの天井。
体はやけに軽くて、呼吸が深い。
そして何より――
【チュートリアルを開始します】
頭の中に、機械みたいな声が直接響いた。
「は?」
俺は反射的に起き上がる。
すると目の前に、半透明のウィンドウが浮かび上がった。
【ステータス】
名前:???
レベル:1
職業:未選択
スキル:未解放
完全にゲームだ。
いや、ゲームっぽい夢……?
いやいや、こんなリアルな感覚あるか?
「……事故ったんだっけ」
最後の記憶を辿る。
たしか夜中、スマホ見ながら歩いてて――
トラックのライト。
クラクション。
衝撃。
そこで記憶は途切れている。
「……テンプレかよ」
思わず笑った。
異世界転生。
ラノベとかでよくあるやつ。
でも――
普通と違う点が、一つあった。
【警告:ログアウト機能は存在しません】
「……は?」
背筋が凍る。
「ログアウト、ない?」
つまり――
帰れない?
現実に?
「ちょっと待てよ……」
呼吸が荒くなる。
夢じゃないなら、これは人生そのものだ。
やり直しでも、チートでもなく――
完全に“別の世界”で生きるしかない。
そのとき。
ドアが勢いよく開いた。
「起きたか、転生者!」
鎧を着た女が、こちらを睨んでいた。
赤い髪、鋭い目。
どう見てもNPCじゃない。
「お前、選ばれたんだよ」
「……何に?」
女は、ニヤリと笑った。
「この世界を“リセット”するためにな」
その瞬間、ウィンドウが再び光る。
【隠しスキルを検出】
【“現実記憶”を解放します】
「……は?」
次の瞬間、俺の頭に“ありえない情報”が流れ込んできた。
この世界の未来。
破滅するルート。
そして――
俺自身が、最後に“バグ”として消される結末。
「ふざけんな……」
拳を握る。
だったら。
書き換えるしかない。
この世界ごと。
「そのリセットっての、やめる方法あるか?」
女は一瞬だけ驚いた顔をして――
すぐに笑った。
「面白い。やっぱり当たりだな、お前」
こうして俺の、“ログアウトできない異世界”が始まった。




