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【掌編集】ビン詰めのボンボーン  作者: 夏乃緒玻璃


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4/5

蛍の横顔・補 トラクターのおじいさん

 5歳の頃、東北に遊びに行き、そこのお爺さんに遊んでもらった記憶です。お爺さんのトラクターに乗せられ、虫取りに行った時のお話。


 ◇◇◇


 東京育ちの私だって、虫取りくらいは経験がある。

 しかし、田舎の昆虫の動きは東京の虫たちとは全然違っていた。やたらと元気があるしアグレッシブなのだ。

 私が虫を一匹もとれない事を私以上に気にしたのがお爺さんだった。

 彼は最後はもう私と一緒に走り回りながら「そら、そこにいる」「ほらほら、ここにいる」とアシストしてくれた。

 やがて私は道の端に落ちていた、牙の一本欠けたカミキリムシを拾った。

 お爺さんは、心の底から喜んでくれた。

 そして、こんなに大きなカミキリムシを捕まえた、この子は凄い、と家中に自慢した。

 ただ落ちていた虫を拾っただけの私は、いくら幼児であってもさすがに恥ずかしかった。


 お爺さんは、坊やが取った虫だからと、そのカミキリムシをケースに入れ、エサにスイカを一切れ入れてくれた。

 死にかけのカミキリムシは当然ほとんど動かない。

 しかしお爺さんもお婆さんもよく覗き込んでは「食べないねえ」と残念がった。

 私はあまりにお爺さんが気にするので、誰もいないタイミングでカミキリムシを掴んで、スイカにかぶりつかせるような型に押し付けた。


 通りかかったお爺さんはそれを見て「坊やのカミキリムシがエサを食べているぞ」と嬉しそうに報告にきた。私はなにも知らないふりをして、「わーい」と喜んで見せた。

 今思うと嫌になる。少年期、他人の顔色を伺う私の悪癖はここでも既に発揮されていた。

 お婆さんは甘いクルミ味噌をたっぷりつけたオニギリを出してくれた。

 ホクホクして甘々で、最初は喜んで食べた。

 しかしお婆さんは次から次へとおかわりを作ってきて目の前に置いた。

 残したら悪いと考えた私は、結局食べ過ぎて吐いてしまった。

 ここでも私はお婆さんの顔色を伺っていたのだろう。




 

こちらは、「蛍の横顔」という私小説の一部として書いたものです。本編との関連も薄く、冗長になるのでカットしたものです。

 懐かしさを込めて単独のエピソードとしてここに載せました。

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