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【掌編集】ビン詰めのボンボーン  作者: 夏乃緒玻璃


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ユミコちゃん

 ユミコちゃんは、近所に住んでいた小さな女の子だ。


 僕よりも一つ下で、よく一緒に遊んだ。


 男の子みたいに髪を短くしていて、お転婆な癖に、お母さんに買ってもらった人形を大事にいつも持ち歩いていた。


 小学校に上がる頃になると、小さい癖にすっかり彼女気取りで、僕が他の女の子と遊んでるとよく妨害した。


 同級生の女の子と話をしているだけで、後ろからタックルしてきたり、真横で大声で音痴な歌を歌ったり。


 鬱陶しいと思った事は何度もある。


 ユミコちゃんは、僕にくっついてくる癖に、僕が好きな本の話をしても「本キライ」と言って話を合わせない。


 不器用な僕よりゲームが上手くて、対戦ゲームでは容赦なく僕をボコボコにし、指差してゲラゲラ笑った。


 僕が小学校3年の春。


 家庭の事情で引っ越す事になった。

 突然の事すぎて、クラスのお別れ会すら出来なかった。


 引越しのトラックが横付けしていた。


 ユミコちゃんは一言「いなくなっちゃうんだ」と言ったきり、黙り込んでいた。


 僕は、いらなくなった、いや、持って行くなと言われた古い本や、玩具を箱に入れてユミコちゃんにあげた。


 お菓子を溢して汚くしてしまった本は捨てようと思ったが、なんとなく自分では捨てがたく、一緒に箱に入れた。

 どうせ本を読まないユミコちゃんが捨てるだろう。


 やはり本人は「本イラナイ」というので、ユミコちゃんのママに箱を渡した。


 ユミコちゃんママは、いつもユミコと遊んでくれてありがとうね、元気でね、と言いつつ、僕に大きな鰹節と冷えていないジュースをくれた。


「あんまり急だったから、家の中探しても何もなくて。あーもう、こんな物しかないけど持って行って」


 ユミコちゃんよりユミコちゃんママの方が悲しそうだった。


 僕は使い方も知らない鰹節とぬるいバヤリースオレンジジュースをカバンに入れ「それじゃね」とユミコちゃんに手を振った。


 ユミコちゃんは怖い顔をしながら、テッテッと駆け寄ってきて、僕の顔を見た。


「いっちゃうんだ」


 僕はただ頷いた。

 何も気の利いた事を言えず、ただ黙って手を振った。


 ユミコちゃんが手を掴んだ。


 汚い人形が、僕の手に押し付けられた。


 僕は驚いて彼女を見た。

 ユミコちゃんは僕の手を掴んだまま、言った。


「もうユミコは守ってあげられないから、あげる」


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