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ビニース・ザ・ウィール -反逆少女と宝石令嬢-  作者: 悠葵のんの
第二章《to dress, un-dress and, re-dress》
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第25話『編入二日目の教室』

     ☆


「どもです」


 相も変わらず冷ややかなクラスメイトたちの視線を浴びながら自分の席まで行くと、クロヴィスが眠そうに肘を突きながら挨拶してくれた。


「…………」


 私としてはやはり、彼が私に関わることで何か不利益を被らないか心配だ。

 けれども、彼なりに考えあっての行動だと知っている以上は、無下にはできないわよね。


「おはよう、クロヴィス」


 少し迷いながらもそう挨拶を返して、私は席に着いた。

 それから鞄から取り出した筆記用具を、机の引き出しに入れようとすると、


「……ん?」


 なんだろう。何かカードのような物が張り付けてある。

 タイミングを考えるとあまり良い想像はできないけれど……とりあえず手に取って窓から射し込む陽の下で見てみると、カードには短い文章が記されていた。


 何々? 『助けが必要なときは図書室の貸し出し禁止棚にある――「ふんっ!」


「あっ、ちょっと!」


 まだ最後まで読んでないのにクロヴィスに取られてしまった。

 しかも彼はそのまま席を立って、淡い陽射しに溶けてしまいそうなホワイトブロンドの髪を持つ男子――ハイネの席までずんずんと歩いていったと思ったら。


「キザな真似してんじゃねー」


 そう言って机にカードを一方的に叩きつけ、帰ってきた。


「ど、どういうことなの……」


 カードを仕込んだのはハイネで、その行為がクロヴィスの気に障った、ということか……?

 不思議だ。途中までしか読めてないとはいえ悪戯的文章ではなさそうだったし、私に対して冷笑的な教室の中で中立的な態度を貫いているところを見るに、ハイネ自身もそういうタイプには見えない。


 昨日の授業でも何となく感じた、クロヴィスの中にあるハイネへの対抗心。

 何となくそこに理由がありそうな気がするけれど、私が首を突っ込んでいいのかも分からないし、とりあえずは保留にしておいたほうがいいのかな……。


「……てか、クラスのゴシップガールどもが話してましたけど、あのお嬢様の下っ端になったってまじですか?」


「下っ端って。使用人ね。もっと正確に言うとアシスタント・メイド・オブ・オールワーク」


「はぁ? 新手の短縮詠唱かなんかですか?」


「…………」


 ……なるほど。ベルナデット様のあれは、てっきりその場限りのジョークかと思っていたけれど、この界隈の人は本当にそう感じるのか。


 なんだか海外のインサイドジョークを学んだような感じがして、ちょっと楽しくなってきた私は、試しに一計案じてみる。


「――――、トールバニラソイアドショットチョコレートソースノンホイップダークモカチップクリームフラペチーノ」


「ああ美味いですよねそれ」


「そっちは分かるのね⁉」


 思わず大声で突っ込んでしまった。

 どうやら私がこの技を使うにはまだ早いようだ……。


「……ところで、昨日の伝言のことなのだけど」


 出鼻を挫かれたので話題を変える。


「あー、すんません。実は寮長には会えなくて。なんか言われました?」


「ううん。それは大丈夫。入れ違いになっちゃったみたいだけど、入れ違い先で会えたから」


「そっすか。んじゃあまたなんかあったら言ってください。どーにも不完全燃焼なんで」


「……気にしなくていいのに。それでその、何もなかった?」


「何もって?」


「私に降りかかるべき火の粉が、あなたにもかかっていないかということよ」


「あー……まあ……」


 答えに困った様子で視線を泳がせるクロヴィス。


「む」


 何かあったのね、と私が眉根を寄せた束の間。

 追及されることを察したクロヴィスが、先んじて口を開いた。


「別に大したことじゃないっすよ。なんでマリモさん風に言うなら、気にしないでください」


 彼が浮かべたシニカルな笑みに、私はそれ以上何も言うことができなかった。


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