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第2話 ヴェネフィッタ②

ヒロイン・ヴェネフィッタ視点です。


短め

「ねぇ、ヴェネフィッタのところにももうあいさつに来た?あの赤毛のワンちゃん。」

「赤毛のワンちゃん?」


昼食時、他部署の同期に聞かれて首を傾げます。するとリンネが「昨日来たわよ。」と私の代わりにこたえてくれました。


「ただその時ヴェネフィッタは丁度帰っていたところで、会っていないのよね。だけど、何故だか、一昨日彼とヴェネフィッタ手をつないで仲良く歩いていたわよ。」

「手を繋いで仲良く…?」


最近犬と触れ合った記憶はありません。


「彼よ。王宮警備隊の新人君。キース=ヒューステッド。赤い髪の毛で犬みたいに可愛いから、女子の間では赤毛のワンちゃんって呼ばれているの。」

「犬、ですか。それにしては体格もよかった気がしますが。」

大きな瞳は犬みたいではありましたが、高く鼻梁が通った鼻も、薄い唇もそれらを想起させるものではありません。可愛い?かっこいいという表現の方が合っている気がいたします。

「なんていうか雰囲気?従順な感じがいいんじゃない。」

「従順?次長に歯向かおうとしていましたが。」

「まぁ、だから雰囲気よ。」


なるほど…わかりません。


「なんでヴェネフィッタはその彼と歩いていたの?」

「庭で寝ていたところを起こしていただき、一人では歩くこともままならない状況だったため、手をお借りしました。」

「わぉ…何してるの。」

「その節は本当に私たちの力不足で申し訳ないわ。」

「いえ、お気になさらず。まだ外務局の監査は終わっていませんし、これからはリンネの方が大変かもしれませんから。」

「報告書作成いやだわ。」


報告書の作成はもちろん全員で取り組みますが、主な文章を練るのは彼女の仕事なのです。これからが大変なのです。


「ヒューステッド侯爵家に息子が二人いたなんて私知らなかったんだけど。」

王宮で働いている人たちの中には平民もいるのですが、ここにいる人たちはみな、私の学生時代からの友人で貴族のご令嬢です。名門貴族家の家族構成は当たり前に頭に入っています。それなのに侯爵家の次男の存在を知らなかったことが不思議なのでしょう。


「当然と言えば当然です。彼は10年前に男爵家から養子に取られ、それとほぼ同時に隣国の名門寄宿学校に入学させられていますので。」

「何故?」

わざわざ養子に取ったのに、何故手放すようなことをしたのだろう、ということでしょう。


「嫡男のフレデリック様が病弱で、いつまで生きられるのか、もし生きられたとして侯爵家の当主の仕事に耐えられるかが不透明だったため、スペアとして遠縁の男爵家から引き取られたのですが…それにフレデリック様が耐えられませんで…。」

「まぁ、自分が期待されていない、と言われているようなものだものね。」

「でも、貴族ではよくある話では?」

「そうなんです。普通ならフレデリック様に我慢をさせるべきなのですが、ご両親も病弱な長男には甘くてですね…。彼を家からは追い出したい、でもいざというときのスペアは欲しい、ということで養子にしたまま隣国の名門寄宿学校に入れて良き教育を受けさせることにしたのですよ。」


これが美談なのか、悲劇なのか、それはキース様ご自身にしか分からないことですが、私の価値観では好ましい話ではありません。無理やり実の家族と引きはがされていますから。


「今回この国に帰ってきたのは何故?フレデリック様元気にされているわよね。」

「通っていた学校を卒業されたからですね。もうフレデリック様も健康になられて、地位を脅かされる不安もなくなりましたでしょうし、帰ってきてもよいと判断したのではないでしょうか。」

「なるほどね。ということは彼結構若い?」


どうやら自己紹介のときに年齢は言わなかったようです。


「はい。今18歳のはずですよ。」

「私たちより4つも下か。」

「道理で可愛く見えるはずよ。」


そうですね~と相槌をうちながら、そういえば彼にお礼をしていないな、と思い出しました。何のパンを買っていきましょうか。それとも男性ならパンよりももっとお腹に溜まるもののほうがいいでしょうか。そもそも王宮警備隊は夜勤もありますし、いつ会えるか分からない人に賞味期限があるものを買うのはリスクがあるかもしれません。普通にお仕事で使うペンとかの方がいいでしょうか。購買部を見てみたらいいかもしれません。


「私、買い物をしたいので先に失礼しますね。」

「庭で寝ないできちんと帰って来てね。」

「もちろんです。」


私は胸を張り答えました。


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