表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ひとりぼっちなぼくと〇〇

作者: ごはん
掲載日:2025/06/30

教室の隅でうずくまっていたのは、〇〇だった。


ぼくが声をかけようと近づいたとき、頭のなかで誰かがささやいた。


「そっとしておけ。余計なことをして、傷ついたらどうするんだ。」


それは、ぼくの中にいる「評価している者」だった。

誰かの目を気にし、間違いを避けたがる、少し大人びた声。


でも、もう一つの声が聞こえた。


「今、〇〇のまわりの空気は、冷たくない。声をかけたら、きっと届く。」


それは、「感覚を感じ取る者」の声だった。

ぼくは少しだけ深く呼吸をして、そして、そっと声をかけた。


「〇〇、今日は寒いね。…この窓、ちょっと開いてたかも。」


彼は少しだけ顔を上げて、こくりと頷いた。



その日、〇〇と一緒に帰った。

ぼくは、会話の途中で気づいた。


話している内容よりも、「どの声で話しているか」のほうが、彼には伝わっている。


「昨日、数学の問題がさっぱりでさ」

と笑い話のように言ったとき、ぼくの中では「独り言を言う者」が喉の奥で軽やかに響いていた。


でも、「本当は不安だった」と伝えるときには、

「思考している者」と「イメージを見ている者」が、そっと声を重ねていた。



帰り道、〇〇がぽつりと言った。


「自分が誰なのか、よくわかんなくなる時がある。日によって、気分によって、まるで違う人みたいで。」


ぼくは答えた。


「たぶんそれでいいんだと思うよ。自分の中には、いろんな声がある。

 どの声も“自分”だけど、場面によって、誰が前に出るかが変わる。

 でも、その全員を、そっと見てるもうひとりがいる。

 それが、“君”なんじゃないかな。」


〇〇は黙って歩いていたけれど、その目はすこしだけ安心しているように見えた。



家に帰って、ぼくは自分の中の「全てを観察している者」に語りかけた。


「ぼくは、誰かの中の声とも、繋がれるのかな。」


観察している者は、答えない。ただ、そっと沈黙を返してきた。


その静けさの中で、ぼくは思った。


たぶん、沈黙もまた、声なのだ。



次の日、ぼくは〇〇に「おはよう!」と声をかけた。


すると、彼は「今、誰が話してる?」と笑いながら言った。

その日から、ぼくと彼の物語は始まったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ