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Episode9









『…ッ…はぁ…!はぁ…!』





苦しい感覚で目が覚める。

上半身をバッと起こすと元の世界にいた。全身汗ぐっしょりで体の震えが止まらない。

ハカが連れ去られたあと、ユージーンに支えられながら家へと戻り、そのまま気を失ったのだろう。

外はまだ薄暗い。時計を確認すると時刻はまだ朝の5時だった。




『…ん?なんか、通知が来てる…』




ふと視界に入った携帯は通知のランプがちかちかと点灯していた。

深く息を吐いてから手にとって確認するとトークが山のように来ていた。合間に着信も受けていたようだ。

トークの送り主は全て零と大輝からだった。





「やばいやばい!これやばい!!」



大輝

「池谷から連絡もらったけど俺にも信じられなかった。起きたらで良い、すぐに池谷に連絡して!」





全て見なくともわかる、要約するとこんな感じだった。

零の方に関してはほとんど語彙力がなくてわからなかったけれど、きっとなにかただごとではないのだろう。

こんな早朝に連絡するのは気が引けるが、大輝からの言葉もあるしトークを送ってみることにした。





美嘉

『今戻ってきたけど一体何事?』





すると、すぐに既読がついた。

間髪入れずに画面には零からの着信を受けていた。ボタンを押して耳元に当てる。

もしもし、と口を開こうとしたがそれすらも遮られた。興奮した零の声が右耳から全身をめぐって左耳へと突き抜けていった。





「美嘉!!まじでやばい!!」



キィィ―――ン……



『えっとえっと落ち着いて、なにも私に伝わってないから説明をして』



「あ!ごめんごめんwついつい興奮が冷めなくって」




てへぺろ、と効果音がつきそうな軽い口調で零は謝ってから少し声のトーンを落として話し始めた。

切り替わりの早さに置いて行かれそうになるのを必死にしがみついていく。




「最近、美嘉とRPGの話ばかりしてたから久しぶりにゲーム屋さんに行って新しいゲームを物色してたのよ」




『うんうん』




「それでこれも名作だよねーとかこれ面白かったなーってやっぱりプレイしたことあるゲームばかりで思い出に浸って終わりかなーって思ってたんだけどさ」




『ふむ?』




「ひとつだけ、見たことも聞いたこともないゲームがあってさ。パッケージとか裏面のあらすじとか見たんだけど、よくわからないことしか書いてなくって」




『んー?それのどこがやばいの?』




「そう、知名度も何もない駄作なのかなって思ったんだけど今はそんなゲームでもプレイだけしてみるか、って結局買うことのしたのよ」




『すごいRPGへの執着』




「それでいざプレイしたらびっくり仰天」




『え?なになに?』



「はじまりの村に美嘉がいたのよ」




『…え?』









『待って待ってどういうこと?』




「本当にそのまんま。起動した瞬間になぜか美嘉と、美嘉が話してた勇者と魔法使いっぽい子がいたのよ」




『…え?なんで?』




「うーん…詳しくはわからないんだけど、美嘉の夢の中で行き来してる世界がゲームの世界ってことなのかなぁって」




零の話に頭の中がぐるぐると混乱している私。

話している当の本人もわかっていないらしく、何か他にも聞いてみようと思考を変えてみる。

ぱっと出てきたそれをほぼ反射的に口に出す。




『そ、それでそのゲームは!物語はどうなの?魔王は倒せたの?!』




もし本当に私がゲームの世界にいたのなら、それは話の物語が決まっているということで、ユージーンやハカの成長や今後出てくるボスや魔王のことなどがカンニングのように分かるということ。

私はそれにすがる思いで問うたものの、零からの返答は全く予想していないものだった。





「ぃゃ、それが不思議なことにこっちでは何も操作ができなかったの」



『…へ?』




零の困ったような声色は嘘や冗談ををいっているようには聞こえなかった。

それに通話越しの零の声に混じってカチャカチャとゲームのコントローラーのスティックを弾く音も聞こえる。

現在進行系で色々と試しているようだった。





「大輝とも色々と推測したり試したりしてるんだけど、ある程度展開が進んでからフリーズ。再起動してもそのまま。どういうことなんでしょうなー?」




『展開、ってどんな?』




「えーっと。村の近くの山で爆発?が起きて、3人パーティでダンジョンに進んで、そのあとムービーが入って魔王の側近のひとり、ルシファーが暗黒魔法を使ったハカって子を連れ去った…って感じかな」




いまさっき体験したあの場面がリアルに思い出される。

あの恐怖を思い出してブルっと身体が震えた。




『…それ今まで私が体験したことだよ。そのあと気を失って多分こっちに帰ってきたんだと思う』



「え!じゃあ美嘉が見てた夢とこのゲームがリンクしてんの?」



『そう、なるのかな?』




謎が深まってふたりとも沈黙が流れた。

零が黙るなんて珍しい。そう思ったけど、説明もできぬこの現象はすべて推測でしか話せない。




ブブッ




『…あ、大輝から』




「…あ、そうそう美嘉から連絡来る前に大輝にも話してたんだ」




『…零の家で集まらないか、だって』



「…まじか」









元の世界にも変化が?














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