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Episode9








「こ、こわかっった〜……」




ユージーンに駆け寄った私がぎょっとして少しのけぞった。

倒れていたユージーンは涙でうるうる瞳を潤わせ八の字にまゆを下げていた。

勇者あるまじき行動はいくつかあったがこんなになる勇者は初めて見た気がする。

私は思わず吹き出して、笑ってしまった。





『あはは!!ユージーン、ありがとう。ユージーンがいなかったら大変なことになってたよ』



「ゆーじーん…かっこ、よかった、よ?」



「ううぅぅ〜…ハカぁぁありがとなぁぁ」




初めての3人での戦闘は誰ひとり怪我することなく無事に乗り切った。

今後の課題は山盛りにあるものの、今回のことで団結力は結ばれた気がする。




『今日はもう疲れたし家に戻ろう』



「ああ、そうだな。ハカ、帰ろう」



「…うん」




まだ余韻が残りつつも早足でダンジョンを抜けて村へと戻った。

家に帰ったあとは3人ともぐったりと倒れ込んだ。

その頃村の中は騒然としているのに疲れて眠っている3人は気づかなかった。

























『…ん』




目を開けるときれいな白い天井。

元の世界に帰ってきたんだ。

身体を起こして伸びをしながら時計を確認すると学校へ向かうまでには余裕がある時間だった。

ベッドから立ち上がって支度をすると、少し早めに家を出た。




「おはよう美嘉!早いね!」



『おはよ〜朝練頑張って!』




朝練に行くクラスメイトと通り過ぎ様に挨拶を交わす。

こんなに早く学校に来たのは初めてかもしれない。

朝から爽やかな顔で部活に励む生徒たちに驚きつつも教室へと入ると、思ったよりも既にクラスメイトは何人か来ていた。

自分の席に腰掛けて鞄の中のノートを1冊雑に取り出して最後のページを破くと、ガリガリとペンを走らせた。

ユージーンとハカとこれから魔王討伐するにあたってこれからどうするか考えるためだ。

うーんと頭をひねりつつ文字を書きたしては横線を引いて消す。

しばらくそうして試行錯誤していると、聞き覚えのある声が耳に通った。





「おはよう!美嘉!美嘉のほうが早いなんて珍しいねー!」



『ん、おはよう零。零と大輝に相談があってちょっと考えてたんだ』



「んんんー?相談とな?」



大輝が来るまでの間に昨晩見た夢の内容を零に話した。

相変わらずキラッキラに目を輝かせて聞いていたが、少しずつその輝きは失われていった。





「……本当に勇者なの?そのユージーンって…」



『ま、まぁ正確には勇者"見習い"だから……』



「うーん…いつもの王道RPGの始まりだと、ある程度の実力が認められた青年が王様に呼び出されて旅にでるわけじゃん?」



『まぁ…そうだよね』



「話聞く感じまだ実績も何もない上に戦闘はできないんでしょう?…それってまだ王様に呼び出される段階ではないのか、最悪勇者じゃないよね」



『まじか』




零の力説に納得せざるを得ないけど、ユージーンのことを思うと努力は実ってほしいとは思う。

とりあえず私の話は飲み込んでくれたであろう零は先程から書きなぐっていた紙を手に持つとじっくり読み始めた。私は止めることはなく『字が汚くてごめん』一言つぶやいてから読み終わるのを待った。




「よっす。おはようさんおふたりさん」



『おはよう、大輝』



「はよーっす」



「美嘉は夢見れたんかー?」



『そうそう、魔物と戦ったんだ』



「あははー魔物とかー!……っなんじゃそりゃ?!」






朝からよくこんなに元気だなぁと目の前の男を見ながらあくびひとつした。

その時零が紙を私に返してくれた。どうやら読み終えたようだ。

私は簡潔に大輝に夢のことを話した。

















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