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Episode7









「よし、じゃあ今日は魔王討伐に向けて動き出すぞ」



『え、待って待ってこのメンツで?』



「うーん、他に冒険者を募りたいところなんだが、冒険者ギルドでもEランク俺とともにしたい奴なんかいなくてだな…あはは…」



『…?!E?!勇者なのに?!』



「勇者"見習い"な。自分で言ってて悲しくなるけど」



『な、なんでよ。鍛錬してるから強いんじゃ…』



「期待されるのは悪い気分じゃないが…正直俺は戦闘はからっきしダメなんだよな」



『え、えええぇぇ…』



「Eランクにあがったのも薬草の収集とか建築の手伝いとか、荷物の運搬とかだもんな」



『もはやそれは便利屋では…』



「俺は元々、聖属性の魔力を持ってることが判明してから勇者候補として励んできたんだが。戦闘に関するセンスみたいなものがまるでなくて、最初は勇者として支持してくれていた俺の村も修行という名目で厄介払いだ。それで、旅を始めたってわけだ」



『RPG王道の魔王が出たから王様に行ってこいって言われるパターンじゃないんだ…』



「?なんだそりゃ。…まぁいいや。このハカも同じようなもんでな。魔法使いにとって黒髪に黒い瞳は畏怖されるものなんだ。闇属性魔法は基本的に人を殺める魔法。魔族と契約した魔法使いと言われているんだ」



『え、でもハカちゃんは産まれたときから…』



「そう、だから親の方がハカを使って魔族と契約したんじゃないかってハカの両親は心臓を抜き取られた後に燃やされたらしい。魔族との契約は心臓、媒体は身体、といわれているからな」



『なんて酷い……ハカちゃんはどうして逃げれたの?』



「うーん…それが多分逃げている間にハカの村で伝染病が流行ったらしいんだ。それで村人の殆どが重症もしくは亡くなった。国ではもう隔離するしかないと村を封鎖して今では無き村とされている」



『な…』



「…ハカ、魔法、使えない…」



『ハカちゃんは魔法を使えないの?』



「いや、魔力はあるだろうけど使い方がわからないっていったところだな」



『…戦闘ができない勇者と、魔法の使えない魔法使い…そして私はごくごく普通の女子高生…』




結論はただひとつ。

このメンツではどうあがいても魔王は倒せない、ということ。

いやこの世界どうすんのよ。





『うーん…とりあえず、ハカちゃんの実力も見たいからどこか魔法が撃てそうなところはある?コントロールがきかなそうでも迷惑にならないところ』



「近くの山の中ならダンジョンの浅いところは魔物があまりでてこないしちょうどいいかもしれない」



『そこでユージーンも戦闘に慣れていくしか…』



「ぜ、善処する…」




3人は村を出て山の方へと歩き出した。

こんなのどかな風景に魔物が出るとは到底思えないけれど…。

ふと先頭を歩いているユージーンの後ろを歩くハカの方を見ると、手に持った小さな棒をぎゅっと握りしているのが見えた。

細長くて長い棒はもしかして魔法使いがよく使う杖みたいなものかもしれない。





『ハカちゃん、杖持ってたんだね』



「…うん、お母さん、が、持ってた」



『あ…』




先程のユージーンの話が思い出される。ハカはきっと両親が亡くなるところを見ていたのかもしれない。

なんて声をかけたらいいかわからずそのあとはハカと手を繋いで歩いた。




「よしここあたりならさっきの村からも十分離れてるし大丈夫だろう」



『ハカちゃん、大丈夫?疲れてない?』



「うん…大丈夫」



『よし、じゃあ…その杖をあの木に向けて杖の先に魔力を集めるようにして放ってみて』



「おいおいそんな急にできるわk…ドグォォオオオン!!!……ぃゃ、ぇぇぇええええ…?!」





ユージーンがその場にへたり込んだ。

私も呆然と目の前を見ることしかできなかった。

ハカが私の言われたとおりにやったであろう魔法は、黒猫が目の前の餌を丸呑みするように放たれた黒い魔力は目の前にあった木々を全て消滅させてしまったのだ。

ユージーンの話していたとおり黒髪に黒い瞳のハカは闇魔法持ちなのかもしれない。

私とユージーンはしばらくその場から動けずハカが消し炭にした風景を眺めることしかできなかった。










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