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Episode4








「ゆーじーん…?」




ユージーンに家の中を案内されていると、ある一室から顔を半分だけ覗かせた人影が見えた。

背は小さく、扉をきゅっと握る手は子供のように小さい。

そんな人影の声に気づいたユージーンはその場にしゃがむと両手を広げて口を開いた。




「ハカ、おいで。俺の新しい仲間を紹介しよう」



「…うんっ」




ユージーンの声に少しだけ大きな声で返事をした人影はとててっと効果音がつきそうな足取りでユージーンに抱きついた。

その姿は本当に小さな子どもだった。

フード付きのローブを纏っているがその隙間からのぞく足や腕は華奢と言うには細すぎる。フードからのぞく丸くて大きな瞳は少し親近感の湧く黒色で、肌は真っ白だった。




『ユージーン、その子は?子供いたの?もしや隠し子?』



「な、なわけあるか!この子は孤児だよ。誰も貰い手がなかったから俺が面倒みてる」



『孤児…』




確かにまともな環境にいたらこんなにも発育が乏しいことはなかっただろう。

この世界はこういうことも普通なのかもしれない。

ユージーンはハカと呼ばれたその子の頭をフード越しに撫でている。




「ハカ、この人はナナミっていうんだ。仲良くできるか?」



「ななみ…。うん、わたし、ハカ。ななみ、お姉様」



『お、お姉様?普通にナナミでいいよ。ハカちゃん、よろしくね』



「…ななみお姉様」



「ハカ、俺はお兄様って呼んではくれないのか?」



「…ゆーじーん、は、ゆーじーん…だもん」



「なぜだッッ」




ユージーンとハカのやり取りを微笑ましく眺めながら、そのまま一緒に食事を共にした。

食器の使い方がままならないハカをふたりで手伝いながらも笑いは絶えなかった。

そのあとはハカとお風呂にも入って、ユージーンに案内された自室のベッドに倒れ込んだ。

突然飛ばされた異世界。

ユージーンやハカとの出会いで不安は少し無くなったものの、この先の未来がなにも見えないのはやはりこわい。




『でも、考えたってしょうがないかぁ…』




1日の疲れがどっと体にのしかかってきてそのまままぶたが閉じた。



















「ー…か…み…‥みか…美嘉!遅刻するわよ!」




突然耳元で聞こえた声にぱっと目を開いた。

視界には頬を膨らました母親が腰に手を当てて追撃の声を上げた。




「ほらほら!起きたのなら支度をしてご飯食べちゃって!お母さんも仕事に遅れちゃうわ」



『…おかあさん?』




あれ、先程まで私は異世界にいて…ユージーンと…。

ずっと恋しかった自室の風景と母親の姿に思わず涙ぐむ。

やっぱりあれは夢だったんだ、とベッドから立ち上がって制服に着替える。

そのあとは何事もなく母親とご飯を食べて学校ヘと向かった。これが私の日常。これが私の当たり前。

長い長い夢だった。どこか現実味を感じたそんな夢。




「おはよう美嘉〜」







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