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Episode3






拝啓、お父さん、お母さん。

私はなぜか異世界に来てしまったようです。

これから私はどうすればいいのでしょうか。












「ナナミ!こっちこっち!」



『はぁ…はぁ…つ、疲れた…』




衝撃の事実を知ってから、ユージーンに連れられ近くの村へとやってきた。

現実が受け入れられず放心状態だった私はユージーンを頼ることしかできないのでとぼとぼとついていったのだが、さすがは異世界。ありえない距離を歩かされ整えられた世界で生きてきた私には過酷な道のりだった。



「…おいおい、大丈夫か?家まで行けば水があるからもう少し頑張ってくれ」



『うん…あ、ここが、村…』



しんどくて下ばかり向いて歩いていたがふと顔を上げると太い木の幹をつなぎ合わせた外壁、その中にところどころ石造りの家が点々と建てられた小さな村があった。

ゲームやアニメの世界でよく見た村。それが目の前に広がっている。ユージーンと似たような格好をした村民が楽しそうに談笑していたり子供たちが走り回っている。




「なかなか良い村だろ。勇者見習いだけど俺を歓迎してくれて、滞在させてもらってるんだ」



『…うん、こんな村初めて見た』




村の中へと入ると行き交う人達が笑顔で迎えてくれる。

ユージーンも村民に囲まれてひとりひとり丁寧に返している。

この温かい雰囲気に元の世界で一緒に過ごしていた友達のことを思い出して胸がきゅっとした。

もう会えないのだろうか、と表情に影を落とすとそれに気付いたユージーンが隣を歩いてくれた。




「ナナミ、これからどうするかわからないけど、もしナナミが良ければ俺と一緒に旅をしないか?」



『え…?!』



「ナナミのことは俺が必ず守る。俺だって一応勇者見習いだからな!それに、一緒に旅をしてたらナナミの言っているトウキョウも見つかるかもしれないし、なにか手がかりもあるかもしれないし」



『……。』




はい、ともいいえ、とも言えずに口を開いては下を向いた。

この世界で生きていく勇気がまだ自分にはないんだ。

でも、どうしたら帰れるのかもわからない。

ユージーンを見やると、ニコニコとこちらを見ていた。まるで私が断らないのを分かっているかのように。

なぜだかその表情に安心感に胸が包まれる。



『…うん』



その一言とともにコクンと顔を縦に振る。

ユージーンはぱああっと目を輝かせて右手をこちらに差し出した。

こっちの世界にもあるんだな、と私も同じように右手を出してぎゅっと握手を交わした。




「ひとり旅は孤独で暇だったんだよね」



『暇つぶしで誘ったわけ?!』



「あはは!まぁお互いにその方がいいんだし結果オーライってやつだよ!」



『ついてきたの間違いだったかな!』




そんな話をしながら歩いていると、ユージーンが足を止めた。目の前には他の家と変わらぬ風貌の家が一件あった。



「ここが今俺が住まわせてもらってる家。これからはナナミの家でもあるからちゃんとここまでの道のり覚えろよ」



『迷子にならないわよ、もう!』




クスクスと笑うユージーンに続いて家の中へと入る。

中は思ったよりもきれいで、部屋もいくつかあるようだった。

土足で入っていく様子を見て少しぎこちなくも家の中をそのまま進んでいく。



「……ゆーじーん?」







.

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