Episode21
第二部
「ここが、ここらでは大きい街 ポカナだ」
『へぇぇ〜きれーい!』
無事に合流できたユージーンと私は街の中へと足を踏み入れた。
街に入る際にひと悶着あったが、ユージーンが勇者見習いだと名乗ったら疑惑の眼差しがあったものの中に入れてもらうことができた。
「とりあえず、ナナミもアイテムとか持てるようにカバンや装備品を買おう。…あとはギルドカードも作っといたほうがこの先また街に入る際に便利だろう」
『ぉぉぉ…RPGっぽいぃ。零たちが聞いたら発狂しそう…』
「はは、なんだそりゃ。この世界では当たり前のことだぞ」
そんな話をしながらユージーンはとある場所で足を止めた。つられて私も立ち止まる。
大きな建物にはアイテム袋らしいマークの看板がある。
「ここに装備やアイテムが売ってる。ついでにカバンとかもあるだろう」
『うんうん』
ユージーンのあとに続いて中にはいるとニッコニコのお姉さんが小走りでこちらにむかってきた。
可愛いというよりきれいな印象だ。
「いらっしゃい!アイテムから装備までこの店ひとつで完結!ショップダイユウへようこそ〜!」
「こんにちは!カバンとかアイテムとか見たいんですけど」
「カバンとアイテムですねー!じゃあまずはカバンの方からご案内致しますのでこちらへどうぞー!」
元気な挨拶と喋り方で丁寧に教えてくれる店員さんに付いていく。
そして目の前に陳列されたカバン達の前で店員さんがたちどまった。
「はい!こちらが当店自慢のカバンでございます!」
「ありがとうございます!ナナミ、なにか好みのものはあるか?」
『うわぁ、なんかいろいろあって悩んじゃうね』
この世界でもおしゃれという文化はあるのか色味が綺麗なものから装飾品に力が入っているものまで様々なものがある。
陳列棚の端から端まで右往左往しながら悩んでいるとユージーンと店員さんがクスクスと笑っているのが聞こえた。
「なんかナナミ、楽しそうだな」
「可愛らしい彼女様ですね〜!」
『…な!彼女とかじゃないです!…えっと仲間です!』
「ふふ、そうでございましたか!失礼いたしましたふふ」
私の反論にも微笑ましそうにこちらを見る店員さんにいたたまれなくなってまた商品を見ることにした。
2つまで絞っていた候補のうち近いものを手にとってユージーンの方へと駆け寄った。
『これにする!』
「お、これでいいのか?」
「あらお客様、お目が高いですね!リザードマンの皮膚から作られたこのカバンは耐久性も良ければ防水にも優れて長くお使いいただけます!」
『り、リザードマン…』
相も変わらずニッコニコの笑顔の店員さんから発された魔物の名前にもう一度カバンを見る。
現実世界でも牛皮やワニの革から作られるバッグなどあるけれど、それとは少し違ったものに思わず顔をしかめる。
「あら、リザードマンはお好みではなかったですか?…それではこちらのコカトリスの革と羽毛から作られたものやゴブリンの革、ピッグマン、シャークマン………」
店員さんから出てくる単語単語に思考をシャットアウトした。現実世界とは違うこの文化を深く考えてはいけないのだ。
『最初にカバンでお願いします!!』
私の大きな声で決済されたカバンをユージーンに手渡されて私の大きな買い物は幕を閉じたのであった。
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