Episode11
『ふぁぁ…なんかもう慣れちゃったなぁ』
目が覚めて古びた木の天井を見て異世界の方に来たことを確認する。
立ち上がって支度をして部屋を出るとユージーンがこっちに向かって歩いてくるところだった。
「おはよ、ナナミ。よく眠れたか?」
『おはようユージーン。うん、よく眠れたよ〜』
朝の挨拶をして一緒に広間の方に出るとハカがひとりで食事をしているところだった。
最初はみていないとぐっちゃぐっちゃに食べていたハカも多少こぼすことがあってもちゃんと食べられるようになった。その成長に胸がじんわりと暖かくなる。
『ハカ、おはよう。いつも早起きだね』
「おは、よ。ナナミ、お姉様。ハカ、の、ほうが、早く、寝ちゃう、から…」
拙い言葉で一生懸命に伝えてくれる。
これも最初は一言二言しか話せなかったのが、ここまで心を開いてくれた証拠かもしれない。
ほっぺにいっぱい詰め込んでもきゅもきゅ噛んでいる姿が愛らしい。
「さて…今後のことだが」
私が食事を終えたところを確認してユージーンが口を開いた。
皿を積み重ねてシンクへと運んだ私は同じ席に腰を掛けた。
『そうだね、私も色々考えたんだけど』
学校で話した二人の話を思い出す。
今のところはこのふたりのレベル上げ…みたいなことをするべきなのだろうか。
ユージーンにもハカにも戦闘経験を積むのが最善だろう。
だがそれで魔王は本当に倒せるのだろうか。
『…うーん、やっぱり実戦経験がなさすぎる』
「そうだな…俺がまともに戦えないとまず始まらないな」
ズドォォォォォオオオオオオン!!!!!
『!?え、ちょ、なんの男!?』
「外に出てみよう…!」
突如けたたましい音と地響き。
ユージーンと私は慌てて外に飛び出て周りを見渡す。村の人々も不安そうな顔でとある方向を見ていた。
その方向は先日行った山の方。そこから煙がもくもくと上がっている。
「なにかあったのか!?」
「いや、誰もあんなところに寄りやしないさ。たまたまあそこに立ち寄った冒険者なのか魔物の仕業なのか…ユージーン、見てきてやくれんか?」
ユージーンが村の人に声をかけるとそう頼まれた。
他の村の人たちも子供たちを抱き上げて不安そうにこちらを見ていた。
そんな村の人たちに囲まれたユージーンは覚悟を決めて大きく頷いた。
勇者ならではの正義感といったところだろうか。
「急いでみてくるから村の入り口は一応閉めといてくれな」
「ぁあ、村のことは男どもに任せといて」
「頼んだぜユージーン」
そうして私達はまたあのダンジョンへと向かった。
.




