Episode10
『って感じだったんだけど…』
「ま、魔物と戦ったのか…?!」
『戦ったというか、戦うところを見たというか…』
私の話に昨日のような反応ではなく心配するように私のことを見る大輝にやましいことがあるわけでもないのに直視ができなくて少し視線をそらして答えた。
その視線に耐えられなくて私は本題を切り出すことにした。
『そ、それで…このふたりで魔王のところまで行けるのかなって』
「それは不可能に近いね」
『やっぱり…』
私の言葉に速攻で零が否定をした。私が肩を落とすのを気にせずにそのまま話し続ける。
「だって始まりの街を出てすぐに魔王を討伐しに行くRPGなんてないもの。ストーリー性のあるRPGだったらいくつかに村や街、ダンジョンを超えて経験値を重ねて魔王に挑むものだし」
「それなりに強い勇者だとしても、戦闘ができなきゃ話にならないし」
『じゃ、じゃあそのふたりを鍛えるにはどうしたらいいかな』
これ以上の正論パンチに耐えきれずに助言という形を求めることにした。
ふたりは一度顔を見合ってから腕を組んで考え出す。
先に口を開いたのは大輝だった。
「うーん。まずは装備じゃないか?ちゃんとした装備があれば多少のレベルを補えるだろうし、苦手な戦闘も少しは戦力になるんじゃないか?」
『うんうん』
「あとはレベル不足なんだろうしレベル上げよね」
『そこが難しい』
「魔法使いの使いようによっては一緒に経験値を得られるだろうからレベル上げが楽かもしれないな」
『なるほど』
ふたりの意見にうんうんと頷きながら真剣に聞き入れる。
さすがは極めしものだな、と感心しながら。
そうして議論は重ねられ予鈴が鳴ったのを機に一度解散となった。
「七海」
『ん、大輝。どした?』
放課後、鞄を持って帰り際大輝に話しかけられた。
いつもは部活に直行なだけに珍しい。持ち上げた鞄を机の上に置き直して答える。
「朝の話だけど…」
『ぁぁ、とりあえずふたりの話を参考にいろいろ試行錯誤してみるつもり』
「またなにかあれば俺にも言って。一緒に考えるからさ」
『助かる〜。私はそういったゲームには疎くってね』
「昔からゲームしてるイメージなかったもんな。その分俺はいろんなゲームしてきたし、知識はあるつもり」
『うんうん、ゲームと同じようにいくかはわからないけど、なにも知識ないままじゃこういった策もでなかったから』
「じゃあまたなんかあったら連絡してくれ。部活行ってくる」
そう言った大輝は大きい部活カバンとスクールカバンのふたつを軽々と持ち上げて走っていった。
頼りになる味方の存在に頬は自然と緩む。心の中で自分を鼓舞して鞄を持ち上げ、学校をあとにした。
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