第5章 「征服という名の現実」
第5章 「征服という名の現実」
「……これ、マジかよ」
国家財政報告書を見た瞬間、元は言葉を失った。
収入は半分以上が借金。歳出の大半は戦費と賄賂。そして、税収は右肩下がり。
「このままじゃ、三年もたねぇ。どっかが攻めてこなくても、勝手に潰れるわ」
元は現実を見た。
今の“ユベール王国”を維持するには――他国の支配が必要だった。
***
そして、王城の倉庫で発見された異物。
古びた金属の箱。だが内部には規格外の魔力反応。
「これが……ダンジョンコア?」
触れた瞬間、意識の奥に声が響いた。
《選定された支配者に告ぐ。用途を指示せよ》
「指示? じゃあ命令するよ――従え」
コアが暴れた。正気を保てるレベルじゃない。
でも、元はやくざだった。圧に耐える精神力は鍛えてある。
そのまま、拳を握って一言。
「従わねえなら、砕く」
静寂。次の瞬間――
《主命、確認。支配、完了》
***
森の奥に、ダンジョンを構築。
普通は防衛施設に使うものだが、元は違う発想をした。
「兵器を創れ。俺のイメージを形にしろ」
ダンジョンの最奥で、機関銃が作られた。
同時に、訓練済みの精鋭兵が、次々と生み出される。
「武器は現代型、兵士は命令絶対。これでいける」
***
5か国への侵攻は、一晩だった。
王族の住む城をピンポイントで狙い、機関銃部隊が突入。
警備は無意味。魔法使いも、弓兵も、銃弾の前では無力だった。
王族は全員、処刑。
そして、すぐに“ダンジョン複製機能”で作り上げた――“そっくり王族”。
見た目も声も性格も、完全コピー。
だが精神には“絶対服従コード”が埋め込まれている。
彼らは表向きはそれまで通りの王族として振る舞うが、実態は“ユベール王国”の操り人形。
こうして、5か国は支配下に置かれた。
「奴隷国家じゃねぇ。中庸を保つ。税も下げる。自由も制限しすぎねぇ」
元は支配をしたが、抑圧は最小限にした。
“支配された国の民”が、次第に「今のほうがマシ」と言い出すように。
支配を、肯定させる。
それが、元のやり方だった。