第4章 「信じられる奴を探せ」
第4章 「信じられる奴を探せ」
嘘を潰したら、次は“真”を立てる番だった。
だが、この国には――
「信じられる人間」がほとんどいない。
「だから、選ぶしかねえ。使えるかどうかじゃない。“信じられるか”だ」
元は、ラズロにリストを出させた。
「汚職に手を染めていない者。嘘を拒んだ者。裏切られても口を割らなかった兵士。そういうのだけ、集めろ」
***
最初に元が会ったのは、第三騎士団の若き副団長・レイナ・アルデン。
部下想いで、かつて兵糧が盗まれた時、自腹で用意して隊を救った女だった。
「……で?私に何の用ですか、“王”」
睨みつけてくる。信じてない。むしろ、敵意すらある。
だが元は平然と答えた。
「お前を信用してる。理由はない。だが、信用できるやつが一人もいねえ国で、お前の噂だけは“綺麗”だった」
「……噂なんて、当てにならないわよ」
「なら、これから見せてくれ。お前が味方である理由をな」
レイナは目を細めた後、ため息をついて言った。
「……試してみなさい。私も、王に本気を見せてもらうわ」
一人目、確保。
***
次は、“正義バカ”とまで言われた裁判官・エルマー。
賄賂を断り続け、ついに左遷されたが、今も法の本を手放さなかった。
元は言った。
「お前を最高裁の長官に戻す。条件はひとつ。“全員に、同じルールを”だ」
「……例外は?」
「俺も例外じゃない」
「……言いましたね、それ」
「言った。だから、守る」
エルマーは本を閉じて立ち上がった。
「では、王よ。あなたが最初の判例になります」
二人目、確保。
***
さらに、元は各地の農村にいた“放置された有能な村長”たちに使者を出した。
そこにはこう書かれていた。
「今の王は、“役に立つやつ”じゃなく、“裏切らねえやつ”を集めてる」
「お前は、どっちだ?」
返事は早かった。
「使える、ではなく、信じられる」――この言葉に、まともな人間は反応した。
農村、裁判所、軍、そして城の中にも、少しずつ“火”がつき始める。
「王が変わった」
「いや、“別人”みたいだ」
その通りだ。
中身は、元やくざの今村 元なんだから。
でも、それがどうした。
「信じてくれるなら、俺は“王”をやるさ」
国の“芯”が、ようやく芽を出し始めた。