【エピローグ】「灯りのある国」
【エピローグ】「灯りのある国」
俺の名前はトミー。
王都の外れでパン屋をやってる、ただの庶民だ。
昔の話をしよう。
あの“王”が現れる前、
俺たちは毎日を怯えて生きてた。
税は重い。兵士は横暴。
「貴族の命令」と言えば、すべてが正義だった。
間違って殴られても、金を奪われても、泣き寝入りしかねぇ。
でもある日、街の広場に大きな声が響いた。
「嘘は終わりだ。これからは、正直に生きるやつが一番得をする」
信じなかったよ、最初は。
けど、変わったんだ。
兵士が敬語を使うようになった。
税務官が納税者に頭を下げた。
王が、街のパン屋の話を聞きに来た。
「商売、続けられてるか? 何か困ってることあるか?」
王が、パン屋の俺にだぜ?
そのうち“誠実指数”ってのができて、
客とちゃんと向き合うと税が安くなる仕組みになった。
最初は戸惑ったけど、今はわかる。
「正直でいると、客も戻ってくる」
「嘘をつかなくていいって、すごく楽なんだ」
パンの味が、少し変わったって言われた。
柔らかくて、温かくなったって。
王がやったこと全部は理解できない。
でも、**“この国なら、子どもを育てたい”**って初めて思った。
今、うちの娘は“王族広育”の模擬授業を受けてる。
俺みたいな庶民の子でも、“考える力”を学べる時代だ。
あの王様はもう表には出てこない。
噂じゃ畑を耕してるらしい。
でも、たぶんあの人がいなくなっても、
俺たちはもう戻らない。
嘘ついて得をする時代には、戻れない。
この国には“灯り”がある。
それは王様じゃない。法律でもない。
**“誠実に生きたいと思える日々”**そのものが、灯りなんだ。
パンを焼きながら、今日もそれを思う。
「あの王様、ありがとう。
あんたの作った国で、ちゃんと生きてるよ」
これで本当に、完結だな。
“王の物語”から、“民の物語”へ――すべてがつながってる。
また書きたくなったら、どこからでも続けよう。
世界は、まだ広いからな。