第14章 「未来を育てるということ」
第14章 「未来を育てるということ」
王都・ユベール王宮。
王が正式に正妃と五人の側室を迎えるという報せは、全国に祝福と静かな驚きをもって迎えられた。
だが、王・今村元は冷静だった。
「“側室”ってのは、女を集める制度じゃねえ。
“王族に広げる責任を持つ者”って意味に変える。
そして俺のガキどもには、義務がある。“ただの王族じゃいられない”ってことだ」
***
婚儀は派手にしなかった。
王族の誇示ではなく、未来への決意としての儀式。
正妃は、元と思想を共にする元平民出身の政治顧問。
側室たちは、各地の旧五か国の民の中から“人格・能力・誠実さ”を重視して選ばれた。
そして、王は決めた。
「子どもたちには、王としてじゃなく、“人”として育てる。
嘘を見抜ける力と、正直でいる勇気を、最初から叩き込む」
そのために創造したのが――
【日本式・5教科教育チーム】
・数学教師(几帳面すぎて子供に逆にいじられる)
・理科教師(すぐ実験を始めて爆発させがち)
・国語教師(ことばの力と読解の重要性を叩き込む)
・社会教師(地理・歴史・現代社会を現実に基づいて教える)
・英語教師(明るくて、他国との外交を前提に語学を教える)
さらに王族専用に、
【王族広育カリキュラム】を導入。
倫理・法・経済・国際関係
嘘を見抜く訓練
民との対話訓練
「支配しない統治」を学ぶ特別講座
教師たちはダンジョン由来だが、自我と判断を持つ人格設定。
一切の忖度・賄賂を拒否。
教える相手が王の子供でも、間違えば容赦なく叱る。
子どもたちはやがて、国のあちこちで研修を受け始める。
農村で汗を流し、工場で機械を扱い、他国の街で人の声を聞く。
王は一つだけ命じた。
「国のトップになるつもりなら、“下”の声を一番知ってろ」
その様子を見て、エチカは静かに言った。
「王。あなたは“国を守る存在”から、“国を未来に渡す存在”へと変わりつつあります」
元は笑った。
「本当にそうか? 俺はただ、“ガキにカッコ悪い背中見せたくねぇ”だけだよ」
エチカはその言葉を、記録した。
そしてそれは、“国家理念”として残された。