第11章 「影が世界を守る」
第11章 「影が世界を守る」
敵は倒した。だが、敵がいなくなったわけじゃない。
世界は広い。
ユベール王国が変われたからといって、すべての国が正直であるとは限らない。
元は決断した。
「もう、“後手”はやめる。
戦争が起きる前に止める。
嘘が広まる前に暴く。
支配される前に、自由を残す」
そのために――忍者部隊《無声》を中心とした、国際情報組織を立ち上げると。
その名は、
《H.A.N.S.》
(Hidden Alliance of Neutral Shadows)
――中立の影による、隠された同盟。
目的は明確だった。
・戦争の兆候を察知し、外交的に制御する
・独裁・搾取・虐殺の予兆を探知し、内部から止める
・情報の力で、“正直な国”が損をしない世界を作る
***
最初に組織のメンバーとして選ばれたのは、
・元盗賊団の情報屋(今は影猫)
・エスファーニャの裏切り者であり平和主義者の外交官
・かつて支配された五か国の中から、それぞれ一名ずつの代表
・ラズロ(本部運営)
・レイナ(特殊作戦隊の司令)
そして――
“今村 元”はあくまで「象徴」。
指揮は取らず、関与もしない。
「これは俺のための組織じゃない。
“俺がいなくても機能する世界”を作るための仕組みだ」
***
《H.A.N.S.》は、最初は怪しまれた。
「ユベールのスパイ機関では?」と。
だが、組織はどの国よりも正確な情報を公開し続けた。
しかも、情報の使用は**“自衛の範囲”に限定。**
信頼は、少しずつ築かれた。
そしてある日、
アラセ共和国でクーデターの前兆を探知。
《H.A.N.S.》が動き、被害ゼロで政権移行を成立させる。
そのニュースが広がった瞬間――
世界は気づいた。
「この組織は、戦わずして世界を変えている」
ユベール王国は、戦わずして“覇権”を握ったのだった。
正義の押しつけでも、暴力の威嚇でもない。
ただ、“影で支える”。
王は、静かに言った。
「人の心が腐る前に、そっと手を添える。
それが一番、やさしいやり方なんだよ」