1/17
プロローグ
戦争、増税、略奪。
王は国を食い物にしていた。
ダン・タイラー・ジョーンズ。
民からは「盗賊王」と恐れられ、裏では本当に盗賊団を育てていた。
妾腹の子として生まれ、教育も受けず、知識といえば権力者の嘘だけ。
善悪の区別もつかない。徳を知らない。
「悪こそが真実」と本気で信じていた。
そして今――
その男は、暗殺された。
***
「……は?」
目を覚ましたのは、豪奢な寝室。
重たい装飾の鏡に映った顔は、あの“王”の顔だった。
今村 元。
元・詐欺アフィリエイター。
元・コンビニ店長。
元・やくざ。
人生に疲れ果て、やくざ稼業から足を洗いたいと思っていた矢先、
気がつけば、死んだはずの“王”の身体に転生していた。
「……俺、王様?マジで?」
ボロボロの国。
腐った貴族。
騙された民。
「だったら、全部ひっくり返してやろうじゃねえか」
こうして、
裏社会育ちの男が、“最悪の王”から“まともな国”を作る話が始まった――。