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9 自己紹介

「よろしくな!」

「......よろしくお願いします」

「おう!」


 挨拶をした後、俺はギルバートさんと軽い握手を交わした。


「……?」


 流れるままに握手をしたが、どちら様だろうか?

 いや、知らない人なのは当たり前なのだがそういうのでは無い。


 一体俺に何の用があるんだ?


「あっ、君が見つかった子だね!」


 困惑している時、ふと元気な人と印象づけられる様な活発な声が聞こえてきた。


 ギルバートさんの後ろから茶色の髪を束ねた一人の女性がこちらに歩み寄ってくる。

 

「ふむふむ」

「......なんでしょうか?」


 女性はこちらに来るなりいきなりかがみ込んで、遠慮無く俺の顔を覗き込んできた。

 狂気的な瞳と目が合う。


「ふふーん、中々いいんじゃなーい?」

「えっ?」

 

 女性が、何処か含みのある笑みを浮かべながら意味深な言葉を呟いた。


 なんだ? 俺は今何をされているんだ?


「おいっ、あまり困らせるな」

「ぎっ」


 ギルバートが軽く女性の頭を叩いて、今の行動を静止させた。

 女性はいててと小言を呟きながら頭を抱えてうずくまった。

 

「すまん、ハル。エリスは人との距離感とか一切考え無いタイプなんだ気を悪くしないでくれ」

「はあ......」


 叩かれた女性はエリスさんという名前なのか、なんて言うか陽菜の性格から更にコミュニケーション能力を高くした感じで、そこから礼節を取り払ったタイプの人間なのだろうか。

 

 まあ、すごく陽気で楽観的な人ということだろう。


 あれ、そういえばギルバートさん、俺のことを名前で呼んでなかったか?


「俺の名前を知っているんですか?」

「ん? ああ! ティナから聞いたんだ」


 そう言うと、ギルバートさんは後ろの方を指さした。

 すると隅っこの方で何やらしょんぼりとしているティナさんが目に入った。


 ああ、恐らく叱られたんだろうな。

 そんな様子が一目で分かった。

 

 そういえば、ティナさんと一緒に居た時にとある事を言っていたな。


 連絡を忘れたら、仲間に怒られると。


 そういう事を考えると、この二人は恐らくティナさんの仲間ということになるのだろうか。


「ただいま〜ね〜」

「ただいまーっす!!!」


 そんな、思考を巡らせている最中に、女の子の新しい声が二種類耳に入ってきた。


「あ、お帰りーにゃ!」


 ミーニャが、声のする方へと駆けて行く。


 声の持ち主は、二人とも頭に猫耳が付いており、どうやらミーニャと同じ獣人と思えた。


「ん〜? 今日はお客さんいっぱいだね〜」

「あれっ!!? 三人知らない人が増えてる! 誰!?」

「にゃはは! 新しいお客さんにゃ!」

「ハル、リク、ヒナ、とりあえず3人揃ったみたいで良かったな!」

「…………」

「にぎやかだねー!」


 待て待て待て待て、ちょっと待て、あまりにも賑やかすぎる。

 

 訳分からん、何だこの個性の殴り合いは。

 異世界って特徴的な人が多すぎないか!?

 あ、ギルバートさんは普通か。


 空間があまりにも異世界のペースすぎる。

 もしかしてこれが俺の望んでいた、異世界の賑やかさと言うものなのだろうか?


「今日は、こんくらい稼いだの〜」

「やるにゃ! こっちはゼロにゃ!」

「相変わらず、よわよわっすねー」

「ん、どうした? 三人とも固まって?」


 ギルバートさんが、俺達に不思議そうに聞いてきた。


 背後がうるさい。

 

 ふと後ろを振り向いて見ると、どうやら二人も俺と同じく困った表情をしていた。


 コミュニケーション能力の高い陽菜ですらこの空間には適わなかったのか。

 恐るべし、異世界。

 

「……」

「おーい!」

「……ぐー」

「えっ」

「まあいいか、とりあえず色々と話したいことがあるんだがいいか?」


 全然良くない、一息……一息だけ落ち着く時間が欲しい。


 再び、二人の方を見たら何やらアイコンタクトをしてくる。


 正直何を伝えたいのかは分からない。

 ただ、二人の困ってる表情を見るに考える時間、もしくは落ち着く時間が欲しいのだろう。


 ギルバートさんは、俺が一番入口との距離が近かった為、必然的に俺に話しかけてくる。

 

 だから、俺が言わなければならない。

 一旦落ち着きたいと。


 そう、空気に呑まれるな! 

 地球の、俺たちのペースを見せつけろ!

 言うんだ……、言え!



「……ご、ご飯、食べてからで……宜しいでしょう……か?」

「……あっ、そ、そうだな、冷めちゃうもんな」

 


 言った──。

 

 ……失礼すぎるだろ。







 とりあえず、ご飯を食べ終えて、一息着いたので、話をすることになった。


 食べている間ギルバートさん達は、普段着だろうか? 皆、ラフな格好に着替えていた。


「さて、改めて、自己紹介でもしようか」


 ギルバートさんが、そう口を開いた。

 

 俺は、先程利用していたテーブルに座っていた。

 漓空と陽菜も同じだ。


 そして、俺達に対し対極になるようにギルバートさんが座り、それを囲むように他の人達が各々位置に着いていた。


 ミーニャやメーニャ達も集まっており、恐らくこの宿屋に居る人全員が集まっているのだろう。


「一旦質問は後にして、まずは通して行こう。お互い知らないことしか無いだろうし、一々止まっていたら疲れるもんな」


 何だか、オリエンテーションみたいだ。

 ギルバートさんが慣れた様子でまとめ役をしている。


「とりあえず、まずは俺達だ。俺はギルバート、冒険者だ。エリスとティナとはパーティを組んでいる。こう見えても俺、結構強いんだぜ」

「強いって言っても分かんなくなーい? 私はエリス、同じく冒険者だよー」

「わたしはティナ。よろしく。……あ、わたしも冒険者」


 まずは、この三人組が自己紹介をした。

 三人の口から揃って地球ではあまり聞かない冒険者という単語が出た。

 

 創作の中で良く目にした職業が今目の前に存在している。

 ちょっと感動するな。

 

 とはいえ、この異世界ではどういう事をするんだろうか。


「次は私達かにゃ! 私はミーニャ! 猫の帽子亭の店長にゃ! はい次にゃ!」

「何で私まで……、メーニャ、副店長、次」

「ん〜サーナだよ〜、朝と夜は宿屋、昼は冒険者ギルドの手伝いをしてるよ〜つぎ〜」

「私はメア! 私もサーナと同じっす! よろしくっす! 次は……無いっすね!」


 次は、宿屋組が自己紹介をした。

 全員女の子で猫耳が付いている。


 宿屋組は話し方に特徴のある人が多いな。

 獣人は話し方の癖が強くなる傾向があるのだろうか。


「じゃあ、最後によろしく頼むぜ」


 遂に俺達の番が来た。

 とは言っても何て言えば良いのだろうか。


 こういう時は、学級委員とかでこういうのに慣れている漓空に頼ろう。


 俺は、漓空を、ちらっと見て首でクイッと合図を送り、何となくの意図を伝えた。


 陸空は最初に首を振ったが俺からのしつこい合図に折れ、やれやれと言った感じでそのまま口を開いた。


「俺は陸空です。あ……ち、地球から……来ました? 一応高校生です! あ、17です」

「私は陽菜といいます! 16歳です! 他は陸空と同じです!」

「俺は晴琉っていいます。 陸空と同じです」

「おまえら……」

 

 陸空が何か言おうとしているが、まあ気にしなくていいだろう。

 

「一通り終わったな」


 結構スムーズに終わったな。

 ギルバートさんはこういう事に慣れているのだろうか。


「さっ! 気になることは色々あると思うが、まず一旦リク達三人組に伝えたいことがある」

 

 パンッ! とギルバートさんが手を叩き注目を集めた。


 伝えたい事とは一体何なのだろうか?


「おほんっ、えー、お前達三人、冒険者にならないか? ちなみに拒否権は無いぜ」



 ……え?

 

 いきなりの暴論を前に、思わず固まるしか無かった。


メタルです


暴論は良くないよ。


編集記録

・ 8/10 19:03 誤字修正

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