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7 街

 ティナさんと歩き始めてからしばらく経った。 


「っはあ」


 俺は、水を飲みながらゆっくりと奥に見える街の方へ向かっていた。

 ある程度、街の全貌が見えてくるようになり、到着するのも時間の問題だった。


「水いる?」

「大丈夫です」

「いくらでもあるよ」


 ティナさんがそう言うと、ぶら下げた小さなポーチから、今飲んでいるのと同じ二つほど皮の袋のような容器を取り出していた。

 なんか、水筒の形を見るとやっぱり異世界なんだなあと思う。


「それにしても良くこの小さなポーチにこんなに物が入りますね」


 ふと、気になったことを聞いてみた。

 ポーチのサイズを見た限りどう考えても水筒が二つも三つも入る大きさにはとても見えないのだ。


「ん、これは()()()だから沢山入る」

「魔道具?」

「む、そっか。魔道具はマナが込めれた特別な道具」

「......マナって何ですか?」

「むむむ、しらないの?」


 まあゲームとかで何度かは聞いたことはありなんとなくは推測出来るが、まあ知らない方だろう。

 ゲームと現実では全然違うことなんてあり得るからな。


「知らないですね」

「なるほど、不便じゃないの?」

「不便もなにも、生きた上で一度も関わったことがないので......」

「びっくり。生きにくくないの?」

「生きにくい? そこまで行きますかね?」

「うん、私たちには欠かせない物。無かったら死ぬ」


 死ぬって、そこまで大袈裟な物なのだろうか。


「マナについて少し聞いてもいいですか?」


 なんか、マナについて色々と気になってきたな。


「......ふふ。わかった、このわたしが天才的に教えてあげる」

「えっ、あっ......ありがとうございます」


 なんだ。

 なんだか、すごい乗り気だ。

 めんどくさいと断られると思ったが乗り気で良かった。


「えっと、マナはエネルギーの塊。生きるうえで必要不可欠。みんなはマナを使って、生きてる。他にも力をぐわーんとしたり、魔法をびゅーんと使ったり、とにかく凄くつよくなれる優れ物」

「......」

「......」

「......あの」

「どう?」

「えっ」


 ......もしかして、今ので終わりだろうか?

 あまりにも抽象的すぎないか?

 ぼーっとしていた訳でも無いのに、あまり理解ができなかった。


「ふん」


 ティナさんが何故かめちゃくちゃ誇らしげにしている。

 もしかして、天才アピールなのだろうか。


「分かった?」


 分からないです。

 

 正直そう言いたかったが、誇らしそうな表情をしているティナさんに向かってとてもじゃないが言えなかった。

 どうすればいい? なんて言えばいい?


 あ──そっか。



「......めちゃくちゃ分かりやすかったです! 天才ですね!」


 

 当たり障りのない言葉。

 出来る男は、嘘をつくのだ。

 大人の階段を上った気がするね。


「......うそついてる」


 なんで、ばれんの。







 現在、街の入り口とやらが見えるところまでやってきた。 

 目の前には、大きな壁が一直線に並んでいる光景が広がっている。


 見ると分かるが、灰色、恐らく石材だろうか。

 それがびっしりと隙間無く積み上げられ街全体を囲んでいる。


 壁の上には、大砲やらよく分からない機器が並んでおり物凄い迫力とやらを感じた。

 壁の中に一部、鉄の補強板等が打ち付けられた大きな木製の壁が混じっているが、恐らくあそこが入り口なのだろうか。


「もうすぐ街に着きますね、ティナ」

「めんどくさい」

「ええ......」


 ティナさんは、さっきの件からすねてしまった。

 

「あの......、本当に悪かったと思うので機嫌直してくれませんか」

「めんどくさい」


 出会った頃は頼りにある人だったのに、今は子供を相手しているかのような気分だ。


「颯爽とコブリンを倒して助けてくれたときはとてもかっこよかったですよ」

「......む、そう?」

「本当ですよ」

「ふふん、なら許す」

「......」

 

 ......単純すぎますって。


「とりあえず、門の人と挨拶してくる、少し待ってて」


 そう言うと、ティナさんは門の方へと向かった。

 すると、壁の中から一人の人間が現れた。


 現れた人間は、何やら銀色の所々に光沢が見える丈夫そうな鎧で全身を覆っている。 

 異世界定番の鉄の鎧ってやつなのだろうか。

 なんだかテンションが上がるな。

 

 その後、ティナさんと鎧の人が何やら会話をした後にこちらに戻ってきた。


「とりあえず問題はなし」

「分かりました」

 

 とりあえずなんのトラブルもなく街に入れるようで良かった。

 鎧を着た人のが手招きをしている。

 どうやら、あの木製の大きな門とは別に、人が出入りするようの小さな入り口があるみたいだ。


「ティナ、街に入るとき身分証明とかそういうことはしないんですか?」


 そういえば、よくある漫画では身分証明が必用になったりするのをよく見かけるのだが必用無いのだろうか。


「うん、大都市や商業都市以外では基本そういうのはない」

「そうなんですね」


 なるほど、そういう感じなんだ。

 商業都市って気になるな、どんな感じの所なんだろう。

 

 本当に、全く知らないことだらけだ。

 

「いこっか」

「はい」


 そのままついて行くように、街の入り口に向かった。


 鎧の人を先頭に、たいまつの明かりのみが照らしている狭く細い城壁の中を進んでいく。

 どうやらこの門は、入り口が二重となっているため通路が長いみたいだ。

 

 目の前に一つの光が見える。

 街への入り口だ。


 この先にも俺の知らない何かが沢山あるのだろう。 


「では」


 ふと、鎧の人が軽い挨拶と共に、来た道を戻っていった。

 まあ、仕事の定位置に戻ったのだろう。


 なんだか分からないけど、アトラクションに並んでいるかのような気分だ。

 自分の気持ちが高揚しているのが分かる。


 アニメや漫画でしか見たことのないファンタジーの世界がこの先広がっているのだ。

 ドキドキしてしまうのも仕方が無いだろう。


 入り口に向かうにつれて心臓が高鳴っていく。

 興奮が最高潮に達したとき、俺は門をくぐり抜けた。


「おおおお......お? あれ」


 俺は目の前に広がった光景に思わず落胆した。


 目の前は、予想道理の西欧風の街並みが広がった。

 建物は、赤褐色のレンガで築かれ、急勾配の黒い屋根でできた形の家が基本的なベースなのか、似通った建物が沢山並んでいた。


 しかし、落胆理由はそれではなかった。


「随分と静かなんですね」


 誰一人、人影が見当たらなかったのだ。

 

 俺の異世界の街並みのイメージといったら、人が多く、夜でも賑やかでうるさいイメージが合った。

 しかし、実際目の前に広がる光景を見るとあまりにも興醒めするほどのイメージとの落差があった。


「ここは静か」

「何か少しがっかりです」

「む?」

「こういう所って、もっと賑やかなイメージが有りました」

「賑やかがすき?」

「そうではないんですけど、イメージと違って」

「なら、ここの反対側に行くといい」

「え?」

「ここは、住宅街だから基本静か、騒ぎたいなら正門に向かうべき」

「あー、そういうことなんですね!」


 なんだ、そういうことか。

 異世界の街の入り口は商店街のイメージで強かったから住宅街のことを全然考えていなかったな。


「ん? なんか嬉しそう?」


 ティナさんが不思議そうに尋ねてきた。

 そんなに表情に出てたかな。


「どうやら俺の早とちりだったみたいです」

「ん?」


 何か変な顔されたけどまあいっか。


「そういえば、この後どうすればいいんでしょうか」


 ティナさんに、とりあえず気になったので聞いてみた。

 流石に置いて行くとかは無いよね?


「ん、この後はとある宿屋に向かう」

「宿屋?」

「うん、ハルも付いてくる」

「......そうですよね。置いて行くと言われたらどうしようかと思いましたよ」

「私をなんだと思ってる」


 宿屋か、異世界の宿屋ってどんな感じだろうか。

 

「場所は何処に有るんですか?」

「住宅街の中、ここの近くにあるよ」


 なるほど、目的地が住宅街にあるから、住宅街の入り口だったんだな。

 正門からだと恐らく遠回りだったのかな。


「さ、ついてきて」

「分かりました」


 そうして、俺は言われるがままにティナさんについて行った。







「ついた」


 歩き回って、ティナさんに言われて気づいた。


 目の前には他の建物とは少し変わった特徴的な建物が建っている。

 壁や屋根の建材は他のとあまり変わらないが、一回り大きく、屋根がとんがり帽子のような変わった形をしていた。


「ここは、なんていう宿屋なんですか?」

「ん」


 ティナさんに聞くと、口頭では無く近くにある看板を指さした。

 看板に書いてあるのだろうか。

 ていうか、異世界の看板って読めたりするのだろうか。


「猫の帽子亭?」


 読めた。


 ん? あれ? 何でだ?

 看板には日本語では無くミミズのような良く分からない絵が等間隔に並んでいるように見えるのに、そのミミズのような絵が文字として認識することが出来たのだ。


「え、え?」

「どうしたの?」

「いや、文字が読めるんです」

「? 言葉が通じるなら当然」

「いや、そうじゃないというか......あれ?」


 深く考えない方いいのだろうか?

 それとも後で何か理由が分かったりするのだろうか。


「......なんでもないです」

「そう」


 とりあえずこの件は一旦保留にしておこう。


「じゃあ入るよ」

「はい」


 とりあえず、ティナさんについて行くまま、俺は猫の帽子亭へと入っていった。

 そして、建物内に入った瞬間だった。


「すげー! マジでおいしいよ!」

「ミーニャちゃん料理上手!」

「ニャハハ~! そんニャことないニャって~、も~これで最後ニャンよ!」

「「おおおおお!」」


「......」


 絶句だった。


「っあ!! 晴琉じゃん! 良かった! やっぱりお前も来てたんだな!」


 聞き慣れた声が耳の中に入ってきた。


 目の前にはご飯を貪る陸空と陽菜、そして、猫耳? をつけた白髪の女の子が一人、ニコニコしながらそこに居たのだ。


「......なにしてんの、ガチで?」


 思わず、呆れるしかなかった。

メタルです。


そろそろキャラも増えて来る頃。


編集記録

・8/12 11:49 誤字修正

リクのセリフ お前も来てたんだな!

訂正     やっぱりお前も来てたんだな!

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