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2 見知らぬ場所で

編集記録

・8/5 17:38 三点リーダ(……)の編集

・8/6 13:29 誤字修正(誤字報告感謝です)

 「──っしょ」

 

 制服に付着した土汚れを払いながら、ゆっくりと立ち上がる。

 身に付けている物に傷などは見当たらず、汚れを払えばいつもの身だしなみに戻った。


 次に、体を軽く動かしてみた。

 腕、足、その他、特に違和感は無い。

 更に、体中を見渡した感じ、怪我なども見当たらなかった。

 

 こんな異常な事態が起きているのに、俺の身体は極めて普通の状態であった。


「はあ......」


 こういうのは、逆に何もない方が不安になる。

 

 体調についても、酩酊感など特に気持ち悪い感じは無い。

 むしろ、脳が覚めているというか、気持ち悪いぐらい冷静だった。


 今も冷静な思考が、自分の状態を他人事のように分析し、頭の中で整理されていく。

 だが、いくら冷静になろうが、今の状況については少しも理解することができていなかった。


 さっきまで学校にいたのに、気づいたら見知らぬ場所で自然に囲まれている。

 大抵のこういう不可解な状況は、夢という言葉ぐらいでしか説明がつかないのがセオリーだ。


 しかし、実際にこの状況が目の前で起こってしまっている。

 そしたら、どんなに非現実な事であっても、受け入れるしかなくなるのだ。

 だって、これが現実なのだから。


 ああ、意味分からんな。

 本当に一体何が起きているんだよ、もう......。

 


 ............。



 これ以上は考えても無駄だった。


 とりあえず、一旦クレーターの外へ抜け出すことにした。

 足場に散らばる、ねじれた木の枝や、ちぎれた根っこに注意しながら足を運ぶ。

 

「......すごいな」


 無意識に声が出た。

 

 クレーターは広く浅い円状で、中心から力強い衝撃の波紋が広がっている。

 散らばる瓦礫の乱雑さも相まって、まるで隕石でも落ちたかのような世界観だ。


 だが、隕石などが落ちたならそれらしき残骸がこの周辺にあるはずだ。

 これくらいの跡となると、残骸は結構な大きさにはなるだろう。

 

 しかし、残骸のような物は見当たらない。

 となると原因は別となるだろう。


 まあ、原因については見当がつくが、クレーターの中心部に俺が倒れ込んで居たのを踏まえると、俺が何かしら関与してるって考えるのが一般的だよな。


 うーん、普通に考えたら、俺が空から降ってきた──ってことになるのだろうか?

 意味分からんな。


 さっきまで、学校でご飯を食べていた普通の高校生だぞ。


 一体何が原因なんだ。

 どうして、こんな不可解な現状に巻き込まれなければならないんだよ、まったく……。

 


「はあ......」


 …………。


 …………あ──、一つ心当たりあるな。


 確か、学校にいた時の最後の記憶には、変な光が現れたのを覚えている。

 白く発光したナゾの丸い物体だ。

 あの光景は非現実的だったな、まるでCG映画のようだった。 

 

 ただの偶然かもしれないし、そもそも発光したから何だってのはあるけど、あれ以外で特に変わった出来事は無かったから、あの光が何かしらこの現状に関与したかもしれないって思うのがまあ、妥当な推測だよな……。

 

 ていうか、あの物体って周囲一帯を照らしていたよな。

 球状だったのは見たから、恐らく発光は周囲に広がるはずだ。

 

 発光に巻き込まれたのがこの惨状の原因と考えるなら、もしかしたら陸空と陽菜も、巻き込まれていたりするのだろうか?

 何処かに俺と同じようなクレーターがあったりするのだろうか?

 

 辺りを見渡してみる。

 

 見渡す限りでは、そのようなものは見当たらなかった。

 というか、普通に木や背丈の高い植物が密集していて、見通しが悪く、遠くを見渡せる状況では無かった。


 気味が悪いほど目に焼き付く自然の光景。

 なんていうか、改めて今俺は見知らぬところにいるんだなと実感した。

 

 ......少し不安になってきたな。


「──動く......か」


 正直、ここで立ち止まって推測したところで何かが変わるわけではないだろう。

 今は、推測よりもこの現状をどうにかする方が大事だ。

 そのためには何かしら行動しないと、どうにもならないだろう。


 遭難したらじっとしていろみたいな話があった気がするが、これはなんか遭難とはちょっと違う気もするんだよな。

 

 とりあえず、周囲を散策しながらどうするか考えよう。

 誰かしら人が見つかればいいな。


 


 


 現在俺は、森の中を歩き回っていた。


 ただ道ではなく、草の上を歩いていた。

 歩くたびに、足下がくすぐられるような感覚や、靴の中に何かが入り込むような異物感が絶えず続き非常に歩きにくい。

 

 景色の方も、相変わらずの自然一色の変わりの無い景色がずっと続いている。

 緑は目に優しいと言うがここまで来ると気持ち悪いが勝つ。


「......はあ」


 ふと、ため息がこぼれた。


 身体的な疲れは全くない。

 肌に感じる気温も特に暑い寒い等の不快感はなく、むしろ快適な方だ。


 ただ、飽き飽きとする同じ景色が続く中で、当てもなく歩き続けるというのは、思ったよりも精神的に来るものがあった。


 俺は普通の学生だ。

 特に何か変なことをしたわけでもないし、悪さをしたわけでもない。

 なのに、何でこんな目に遭わなければいけないのだろうか。


 空を見上げてみる。

 丁度、太陽が雲で隠れている。

 少し暗い、ただ、すぐ明るくなるだろう。

 まだまだ夜が来そうな雰囲気は無い。


 ......、暗くなる前に帰れるのだろうか。

 そもそも、ここから抜け出すことは出来るのだろうか。



 ............。


 

 まっ、何とかなるだろう。

 というか何とかなってもらわないと困る。  


「んんっ!!」

 

 大丈夫、俺は運がいい。

 この前、ゲームの十連ガチャで当たりを三枚引いたじゃないか。

 大丈夫、俺の運を信じろ。


 俺は心の中で、無理矢理自分を奮い立たせた。

 こういうとき精神的にやられ卑屈になるのは危険だと、アニメや漫画で散々見てきている。

 

 折れたら人間はそこで終わりなのだ。

 

「......よしっ!」


 何とか、自分を鼓舞し、気合いを入れつつ俺は歩みを進めていった。


 ......あれ、ガチャで当たりを引いたってことは運を使ったことになるのだろうか。

 まあ、いいか。

 気にすることはない。


 ......大丈夫だよね?


メタルです


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