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4 空気 × 彼の第六感

翌日。



翌日といっても、寝れなかったままで仕事に追われている。



午前中はまだ良かった。

プロジェクト会議で色々なサービスや商品構成の打ち合わせ等、英人が好きな業務が目白押しだったからだ。



だが、昼食後の15時。遂に英人は眠気に苛まれ、最も苦手とするルーチンワークに追われていた。



こくっ、こくっ。



実際にはこんな音はなっていないのだが、ときおり首が下に落ちる。



瞼も重く、自然に段々と落ちてくる。



これは不味い状況だ。



英人は、またあのメールの題名を思い出す。



『eightersワンより御礼と信仰のお願いについて』



あれは一体なんなんだろうか?



英人はなんとなくではあるがこのメールは気軽に開いてはいけない気がしていた。



彼の第六感が警笛を鳴らしている。



開いてしまったら……



読んでしまったら……



英人の現実が崩れてしまいそうな漠然とした予感。



よもや、自らの人生観、いや、人生事態が変わってしまいそうな予感さえする。



そんなことを考えるだけですぐに眠気はなくなり、背中にゾッとした感覚があらわれた。



今日は定時に帰ろう。そして、少し仮眠していつも通りチャットで、超回復を図ろう。



そんな事を考えているとすぐに定時のチャイムが鳴った。



英人はそそくさと家まで、足早に帰る。



あのメッセージは……



おそらく、ネタをぱくってソーリー!いい動画になったよ。また、今度ぱくらせてくれないかな?今回は少し御礼は出すよ。ぐらいの感じだろう。



信仰?



……



深耕?



もっと知識の深堀りのお願いか。



それとも最高の打ち間違いだろうか?



うん、信仰は最高と打ちたかったのが誤字ったんだっ!きっとそうだ!そうしよう!それでなければ深耕の誤変換だっ!



この結論の理由には、eightersの身なりも少なからず影響していた。彼らは仮面を付けていることもあり、国籍は不明なのだ。流暢な日本語も話していることから、その知識は見てとれるが、当然、『話せる=書ける』ではないだろう。



こういった理由も加味して、なんとか、すっと腹に落とす事に成功した。



英人としては、まさか現実になるわけもないと思って話した話題だし、そもそも秘匿性のある場所で話している時点で損得もあり得ない。と、最も理解しているつもりだったこともあって、腹落ちさせることに成功した。



『いい動画を見れただけでも、得したと考えよう。』



きっとあのメールはそんな感じの軽いものだろうから、一旦は脳内から消去しよう。



そう心に決めて、家路につき、仮眠をとった。



深夜0時。



起きた英人はいつものようにパソコンを起動してチャット画面を2つ開く。



今日の日本の議題は『空気について』だった。

地球環境が悪化してる今、どうすればより効果的に酸素を生み出せるのか。

なかなかの社会的な話題であるが、ここは会社の会議室でもなく、大学の研究室でもない。

ましてや国会でもないのだ。



そう、ただ自由な書き込みを、好き放題主張して良い場所なのだ。



空気……酸素……



英人は、中学・高校で習った浅い知識を捻り出す。



植物を多く植える。



eightersの動画が脳裏をよぎる。



ここにもいるのだろうか?



そんなことは関係ないっ!好きなことを吐き出して超回復を図ろう!



動物や人間から酸素は生み出そう。



植物が光合成をして、夜には二酸化炭素、昼には酸素を生み出せるのなら、動物や人間にその機能を付加すれば酸素は自ら生み出せるはずだ。光合成動物、光合成人間への進化。



『e-to』は自由でなければならないのだ。



そこに人権や論理感は必要ない。『e-to』は突拍子もない、むしろここでしか議論できないことを発言するのに意義があるのだ。



『e-to』の発言を皮切りに、いつものメンバーが発言し出す。車の排気ガスで酸素を生み出せないか。人間が造る建物に光合成機能を付加できないか。



巨大なオゾン発生機を作ればいいのでは?

オゾン(O3)は非常に不安定な気体だから、常温で徐々に分解して、酸素(O2)になるはず。



二酸化炭素を排出する生物(人間)を減らせば?



う~ん、ごもっともだ。



酸素を生み出すという観点から言えば、的外れではあるものの、空気を最も汚しているのは人間なのだから。



人間が減れば空気綺麗になるよね。的なのは100人に賛否を問えば90人はyesと答えるだろう。



『ピロンッ』



海外のほうでも、議題が立ったようだ。



今日は忙しい夜になりそうだ。と、英人はニヤリと笑うのだった。

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