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2 事件 × 世界的に有名な集団


今日も一日が始まった。

英人には、もう1つの日課(楽しみ)があった。


それは通勤中の電車の中でu-tubeウーチューブkick-tokキックトックを見ることだ。


英人は、しがないサラリーマンのため、そこまで給料もよくない。


だから、家賃的にも郊外に住んでいる。落ちついた街で英人的には好きなのだが、通勤には一時間半もの時間がかかる。


動画視聴は、その一時間半もの長い時間を楽しい時間にするために、彼が編み出した策である。


最近、面白くていつも見ているのが『eighters』の動画だった。


『eighters』はその名の通り8人の集団でリーダーの『ワン』を筆頭に『ドゥーエ』『タラータ』『スー』『サンク』『セイス』『チル』『オイト』のメンバーで構成されており、いわゆる『~やってみた』とか『~試してみた』『~作ってみた』動画で一世を風靡し、世界的に有名な集団であった。


彼らの動画は海外視聴も視野に入れているため、多言語翻訳されていたりもする。


各々、異なる異国風情の仮面をつけていることで、注目度があがっているのも、人気を得た一つの要因だ。


もちろん、日本円にして年収で兆を越える金額を稼いでいるだろう。


英人も彼らのファンの1人で、いつも面白おかしく新しい挑戦を行うこの集団が好きだった。

だから、更新の度に動画をチェックする。


今日もいつも通り何気なく更新された動画を見ようと、流れるような仕草でイヤホンを装着し、携帯画面を開く。


そのとき、英人は驚くべき光景を目にした。


『!!!っ!!!』


新しく更新された『eighters』の動画の題名……


『コーラとポテチの最高の組み合わせ検証してみた』


……


「え!!!」


思わず満員電車の中なのに、英人は大きな声を出してしまう。


その瞬間、電車内にいる周囲の人間の冷たい視線が、これでもかというぐらい英人に突き刺さる。


英人は驚きを隠しきれず、また、周囲の視線に絶え切れずに途中下車を余儀なくされた。


見知らぬ駅に降りたあとも、英人はまだ動けない。


『まさか、あの空想議論を現実に試したのか? それよりも、あそこのチャットにeightersの誰かがいた? いや、だれかが試して欲しいとeightersに依頼した? いや、ただの偶然が重なった?』


様々な憶測が、英人の脳裏をよぎる。


『とりあえず動画を見てみないと判断できない!』


英人は駅のベンチに座り、周囲に人がいないことを確認した上で、動画を選択し、再生した。


結果……


まさにそのままだった……。


コーラを飲みながらポテチを食べているところから始まり、『ワン』が、ポテチとコーラの最高の組み合わせを作りたい。と言い出すところから動画が始まった。

それから、『ドゥーエ』が指揮をとり、ポテチをコーラ煮にしたり、ジャガイモを一度揚げてからコーラ煮にしたり、ジャガイモのコーラ漬けを作ったりしている。


それがeightersの絶妙な会話と仕草に面白おかしく進行されているのだ。


驚くべきは、財とコネクションを利用し、ポテチとコーラの各製造工場にまで出向き、ポテチのコーラ味を作り上げている。


『規模が違いすぎる』


英人は唖然とする……


だが、それだけではなかった。


彼らはグミ工場にも出向き、ジャガイモをグミのような形に塩味で成形してコーラにいれることにも成功していた。


まさに衝撃である。


ただ何気なくチャットで議論した全てが、実現されている。


さらに、透明な食べれる一口代のカプセルのようなものを生み出し、そのなかにコーラをいれて、ポテチの袋内に封入する。

柿の種のピーナッツがコーラカプセルといえば容易に想像できるだろう。


口の中でカプセルを潰せばコーラが飲めるというもので、なんとも斬新であり、これが堂々の1位だった。


ちなみにだが、これは冷蔵庫で袋ごと冷やしてから食べるのがいいらしい。


自分の絵空事が実現されている感嘆・喜びと共に、それに加え、更に工夫をした発想力に敗北感を味わった。


英人は、呆然と見知らぬ駅で30分ほど立ち尽くした。


そのあと、ようやく不意に来た満員電車に乗ったのだが、この日ばかりは家に着くまでの一切の記憶が、抜け落ちた。

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