『昔、昔々の夢』
主人公に対しての暴力表現が多めの作品になってしまうと思いますが、お付き合いいただけるとありがたいです。
昔々、いつだったでしょうか。
私がまだ幼いころ――農民の村で農民として働き、ただ何の目的もなく過ごしていた、意識もおぼろげなほど昔の話。
『あれは他人に見せてはイケないよ、エトワール。あれはあなたが特別な証なんだから』
どこかの誰かの優しかった手が頬に触れて、私の事を咎めた。
それが私にとっては普通のことでしたし、周りの人間も当然のように出来るものだと思っていたけれど、その人はそう言っていた。
あれは、なぜだったのだろう。
でも、あの人の言う通り"私のしたことがいけないことだった"とは私もわかっていました。
それからは誰にも見せてないし、誰にも秘密でした。
ああ、でも、どうしてなんでしょう。
私は……私はただ、みんなを守りたかっただけなのに。
私はただ、寂しくなりたくなかっただけなのに。
ただ、一度きり、村の人が私の魔法を見た後の、あの人が怖くて……。
……私の魔法は、イケナイ物だ。
いつしか、あの人の言葉は私の枷になっていた。
いつか……いつか、私の魔法は隠さなくても平気になるのだろうか。
いつか、誰かのために使っても怒られないようになるのだろうか。
その時、私は……。
ちゃんと、生きているのでしょうか。