如月夏目は狂信者
彼女を見れば、
「立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花」
というこの言葉は彼女のためにあると誰もが思うよ。絶対に。その美少女の名前は、榊 葵
アタシはずっと、今日という日を待っていたの。如月 夏目 16歳。アタシの人生の半分以上。ずっと、ずっと彼女を見てきた。そんなあの娘と...ふふふ...
アタシたちが入学したこの女子校にはいわゆる「姉妹制度」というものがあるの。聞いた事あるでしょ?
上級生から、「妹になって」なんて言われるのは誰もが憧れることだし、ステータス。もちろん可愛い娘を妹に出来ることだってステータスになるの
でも、アタシにとって何より大事なのは、この学校独自の姉妹制度の域。同級生でも姉妹を組めるし、なんならパーティだってつくれちゃう!事実上ではパーティというよりも。それはハーレムと言った方が近いのかなぁ?
ハーレムは大きければ大きいほどいい。あれは正しく。戦場。あの女の園では、知能と身体能力が大事。つまりは仲間はとっても大事になるの
アタシは彼女のハーレムに入れて欲しいの。勿論、本妻の位置を狙っているのは言うまでもないこと
彼女は本当に美しい。私は言うなれば彼女の“狂信者”
中学生にして傾国の美女と呼ばれた彼女は、雪のように白く透き通った肌で。肩より少し上まで伸びた絹のような柔らかな、色素の薄い髪。そして、前髪はセンターでわけられていて彼女の美しい顔がよく見える。はぁあ、もっとその顔を私に見せて?
色素の薄い、若干のつり目は伏し目がちで、その目と口元にあるホクロが彼女の色香を一層引き立たせる
16歳という年頃のもつ絶妙な色気と幼さ。勿論、普通の16の娘がもつ色気とは段違いなのだけれど...
私にはわかる。ずっと見てきていたから
彼女は女を避けてる。これは1つ目の違和感。単に人間嫌いなら、男も避けるはず。でも?そうじゃない。ならどうして?ただの女嫌い?
疑問は尽きない
もうひとつの違和感。彼女を囲いたがる人間には意思が感じ取れない。なんというか、あやつり人形みたい
まるで“抜け殻”。いつもじゃない。彼女に惑わされているように、彼女の近くにいる時だけ
榊 葵 。あなたは一体何を隠しているの?あぁ、あなたのすべてを知り尽くしたい。そう言えば彼女の満面の笑みなんて見たことがない。声を荒らげている姿も。苦痛に歪む顔も。はぁあ...本当に考えただけで、うっとりしちゃう
ねぇ。アタシにあなたの全部を見せて?ねぇ、魅せてよ?
「あはっ、ほんと、おもしろそうだよねぇ?どうやって近づこうかなっ」
そう呟く声は歌うようで。かつ、狂気を孕んでいた
けれども。この学園はこの少女よりもずっと狂っていた