16.知らない間にやらかしてたらしい
昨夜の衝撃が大きすぎて、あまり眠れた気がしない。
欠伸を噛み殺したところ、魔法講義をしてくれているセオに気づかれた。
「昨晩は寝付けませんでしたか」
「いや、うん。ちょっとね。そうだ、セオ。もしかして……間違いであってほしいという希望的観測を多分に含む質問をしてもいいか?」
「ええ、構いませんが。どうされました?」
「もしかして、来月の俺の誕生日に合わせて、聖女お披露目の舞踏会を開く予定になってる……? しかも国賓を招いて、とか」
「なんと……!」
セオだけでなく、ネイトや侍女たちも瞠目した。
嫌な予感が……。
「ユウキ様、あなたには七百年前に召喚された聖女様と同様の、予言の能力が備わっておられたのですか……!?」
「は!? いやいやいやいや、そんな大層なもの持ち合わせてないから!」
「しかし、ズバリ当てておられるではありませんか!」
「やっぱりか! クッソ、こればかりは外れてほしかったのに……!」
姉貴の話は本当だった。来月誕生日を迎える聖女のために、国賓を招いて聖女お披露目の舞踏会が催されると聞かされた時は一瞬意識が飛んだ。
俺に踊れと!? 当然女の子と踊っていいんだよな!? 俺に聖女用のドレスとか勘弁してくれよ!? 男と踊らされたくない!
それに聖女の誕生日が来月って、嫌な設定一致だな。もしかして細かな設定に添って召喚対象者が選別されてる? でもその理屈だと男の俺が召喚されている時点で聖女の根幹が破綻している。かっちり設定通りに決められているようで、穴だらけに思えるのは俺だけか?
はっと唐突に気づいた。
もしかして、七百年前に異世界から召喚された聖女って、姉貴のように前作をやり込んでいた女の子が俺みたいに突然召喚されたんじゃないか? 数々の事細かな予言だって、ゲームのシナリオを知っていれば辻褄が合う。
じゃあ、その聖女が最終的にどうなったか、つまりはアウストレイルに残って生涯を終えたのか、無事地球に帰還出来たのかを調べることが出来れば、俺のこれからの指針に役立つんじゃないか!?
「ユウキ様、予言がお出来になるとなれば他国が黙ってはおりません。七百年前もそうでした。聖女獲得に国は躍起になるのです。その時は聖女を得る順番など度外視されます」
「え? 聖女獲得って、まさか誘拐!?」
「それも考慮の一つかと。大抵は婚姻が第一でしょう」
「こ、婚姻って、結婚てことだよな? え。誰と? 当然相手は女の子だよな!?」
「いいえ」
「いいえ!?」
「聖女の伴侶は男と決まっております。縁談は必ず男性からのものになります」
「理屈はわかるけど今回は例外中の例外じゃん! 俺、男だからな!?」
「我が国を含むアウストレイルの九つの国には、同性婚も許されているのです」
「嘘だろ!?」
もういろいろと破綻している。設定大事にしろよ、運営者! 何で男を召喚した!?
「それで、ユウキ様。予言は扱えるのですか」
「扱えないよ。俺が知ってたんじゃない。これは地球の、俺の生まれ育った場所にある攻略本に書かれていた内容だ」
「こうりゃくぼん? それは予言書ということですか? ユウキ様の世界には、こちらのことが記された予言の書があると?」
「いや攻略本……まあいいか。そう、予言書があるんだよ」
「なんということでしょう……! これは一大事ですっ」
「ええと、それでな、セオに相談があるんだけど」
「なんでしょう。何でもお聞きください」
セオの目が怖いほどに真剣だ。予言書は言い過ぎたか。でも強ち間違いではないしなぁ。設定資料集は、こちらにしてみれば立派な予言書だ。
「昨日の夜、セオに教えてもらった水魔法の復習をやってみたくなって、水球を創ったんだ。形は変えて、これくらいの長方形に」
ジェスチャーで伝えてみる。テレビの話をしたって伝わらないだろうし。
「応用ですね。向上心があって大変素晴らしいです」
「ありがとう。でだな、ここからが相談なんだけど、その長方形の水魔法、発動と同時に繋がったんだ。あっちの世界に」
「―――――え?」
「だから、水魔法が通信機みたくなっちゃったんだけど、こんな現象って今まで起こったことあるのかな、って」
「―――――え?」
あ、駄目だこれ。セオの麗しい顔が豆鉄砲食らった鳩みたいな間抜け顔になってやがる。
「ちょ、ちょっと待ってください。あちらと繋がった? あちらとは、ユウキ様のお住まいだった世界で、予言書が存在するという、その世界? そこに繋がった!?」
「あ、よかった。ちゃんと伝わってた」
「ユウキ様、何を呑気なことを! それが本当ならとんでもない事態ですよ!」
「普通じゃない?」
「あり得ません! それが可能であるなら、それは最早聖女召喚の儀に匹敵する大魔法です!」
「だっ、大魔法!? そんな大事!?」
「大事です! いいですか、ユウキ様。そのことは絶対他言無用です。あなた方も聞かなかったことになさい。もし漏洩すれば、それはあなた方の誰かが口外したという証拠。その場合は魔導師長の名にかけて呪い殺して差し上げます」
こっわ! 呪い殺すとか! えっ、そんなに!? 俺とんでもない魔法使ったの!? どうやったか自覚もないのに!?
脅されたネイトと侍女たちが真っ青な顔で頷いている。
「ユウキ様。詳しく、詳細に、冒頭からお話しください。よろしいですね?」
セオの否とは言わせない恐ろしいほどに真剣な顔に気圧されて、俺は壊れた首振り人形よろしく何度もこくこくと頷いたのだった。
使わなくなった200cmのクリスマスツリーを、近所のカトリック幼稚園に寄付しました( *´艸`)
先々週の話ですけどね。
喜んでもらえて良かった~♪o((〃∇〃o))((o〃∇〃))o♪
現在我が家には45cmのクリスマスツリーが鎮座しております。ずいぶん縮んだw