13.邂逅
本日ギリギリ二本目の投稿です.゜+.(・∀・)゜+.゜
「………………………は?」
え、姉貴……!?
なっ、なんで!? 目の前でゆらゆら波打つ水魔法の中に、何で姉貴の顔があるんだ!?
「まさかホームシックで幻見てる? だとしたら何でよりによって姉貴? そこは父さんか母さんだろ。姉貴なんか見ても意味ないじゃん」
『ちょっと! いきなり現れといて何て言い種よ!』
「幻ですらうるさい……」
『幻じゃないわよ! あんたそこで何やってるの!? いきなり家出って何考えてんのよ!』
「家出じゃねえし」
『あんたがいなくなってから、こっちは大変なんだから! さっきだって警察に捜索願い出そうって話になって、警察署に相談に行ったら事件性は低いから恐らく家出でしょうって片付けられて、二人とも憔悴しきってて見てられないってのに、あんたは呑気に豪華な部屋で何やってるのよ!』
「……………マジか!!」
『大真面目に話してるでしょ、さっきから!!』
驚いた。いやいやいやいや、何で? これ水魔法だよな? 目の前の姉貴が幻じゃないなら、これリアルタイムで地球とテレビ電話的な通信しちゃってるってこと!? どういう現象!?
『それで、あんた今どこにいるのよ』
「ええと………異世界?」
『ふざけんなよ、クソ弟……っっ』
「いやいやいやいやいやいや! ふざけてないから! 本当に異世界! 風呂入ろうとしたら召喚されたんだって! 嘘みたいな話だけど大真面目に!」
途端、姉貴が黙りこんだ。じっと俺を睨んだままではあるが、何か考えてるようにも見える。
「あ、姉貴?」
『ちょっと聞くけど、召喚って言ったわよね』
「うん」
『どこに召喚された?』
「え、信じるの? 言った俺が突っ込むのも何だけど」
『いいから答えなさい。そこは何て世界で、何て国なの』
マジか。まさかこんな荒唐無稽な話を信じるとは思わなかった。姉貴って意外と脳内お花畑人種? 社会人になったら霊視商法とかに引っ掛かりそうで心配になるな。
『ちょっと。いま失礼なこと考えたわね?』
「ソンナマサカ」
『まあいいわ。さっきの質問に答えて』
「ハイ……。ええと、ここはアウストレイルって世界で、今いる国は」
『第四の名を冠するエバーレスト・カトル』
「そうそれそれ。って、何で知ってんだよ!?」
『嘘でしょ……ちょっと待ちなさい。召喚って言ったわよね。あんたの称号、まさか聖女じゃないでしょうね』
「だから何で知ってんだよ!?」
こっわ! 姉貴千里眼!? 七百年前の聖女ばりにいろいろ見えてんの!? じゃああの時の召喚って、実は姉貴で正解だったんじゃね!?
『信じらんない……何でよりによって由輝が聖女召喚? 召喚するなら私でしょうが!』
やっぱりそうか! なんだよ、結局俺巻き込まれただけの人違いじゃねえか! ふざけんなよぉぉぉぉっっ!
『まあ召喚されなかったのはしょうがない。由輝、よく聞きなさい。その世界はね、乙女ゲーム《遥かなる時を越えて》シリーズ、通称「はるこえ」の続編なの』
「うん……意味わからん」
『だから、あんたが召喚された世界は、女性向け恋愛ゲーム《はるこえ》の続編なんだってば』
「いやそれは分かったから。そうじゃなくて、俺はゲームの中に入ったってことで解釈合ってるか?」
『そうね』
「じゃあここはデータの世界? 俺の身体どうなってんの?」
『それは分からないけど、《はるこえ》続編なのは確かよ。そんなことより、攻略キャラとは会えた!?』
そんなことよりって、俺には大問題なんですけど!?
異世界じゃなくてデータ上のゲームの世界って、いよいよ俺のキャパシティ超えまくってますけど! そんな俺の心配はまったくなしですか、お姉様!
「ん? ちょっと待て。攻略キャラってなんだ」
『主人公の異世界から召喚された聖女と恋愛する主要キャラクターのことよ』
「……………はい?」
『まずは召喚の儀を取り仕切ったエバーレスト・カトル王国宮廷魔導師筆頭のセオドア・ティアニーでしょ、次に聖女の専属護衛騎士になる近衛騎士のネイト・ギャレット。次がエバーレスト・カトルの第一王子レナルド・エバーレストで、その次が』
「まっ、ちょっと待て、姉貴! ストップ! シャラップ!」
『なによ』
「今挙げた名前の奴は全員聖女の相手なのか!?」
『そうよ。選べるのは一人だけど、攻略キャラとはそれぞれたくさんのイベントが用意されてるの』
「セオにしてもネイトにしても、どっかで聞いたような聞かなかったような微妙な既視感があったのはこれか!」
『あら、覚えてたなんて意外。私の語りなんて流して聞いてるとばかり思ってたけど』
「流して聞いてたよ! ていうか、あの残念王子も攻略キャラかよっっ」
『え! なになに!? もう出会ってるのね!?』
ええ出会ってますよ。断りなしに突撃訪問かましてくれたからな!
一番まともなのがネイトしかいないぞ。しかし恋愛ゲームって。やっぱり俺が聖女召喚されたのって、どう考えても間違いだよね!?




