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11.教えてセオ先生! 2

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 聖属性とは、その名のとおり聖なる力を示す。

 魔を祓い、穢れを祓い、呪を祓い、瘴気を祓い、悪意を祓う。

 聖属性魔法は聖女と勇者にのみ与えられた力なのだそうだ。称号に【聖女】【勇者】と付かないかぎり、聖属性魔法は使えない。これは絶対で、また祓うという浄化魔法は聖属性の特性なので、聖女か勇者が顕れないかぎり穢れが生じても的確な対処が取れないのが現状らしい。


 なるほど、と納得せざるを得ない。

 異世界から強制召喚しなければならなかったほど、この世界で穢れは大変な事態らしいな。それでも聖属性魔法という唯一の対策があるだけマシじゃないのかと思ってしまうが。

 地球の天災地変は、未然に防いだり瞬時に復興できたりするようなものではない。予報や可能性に備えるだけで、明確化された唯一の対策など存在していないのだ。

 近未来に起こるであろう天変地異に備えて、諸国では第二のノアの方舟を準備しているだとか、火星に避難移住するための人類の振り分けが始まっているだとか、オカルティックな話題もある。

 真相はどうであれ、天変地異を防げないのが前提にあり、生き残るためには逃げの一手しかないということだ。

 それに比べれば、聖女か勇者のみに与えられる力だという特殊性を除けば、対処法が存在しているアウストレイルはまだ救いが残されていると感じてしまう。


 役目を終えれば地球に帰れるって救いまで用意されていれば、俺だってちょっとくらいならって今よりはすんなり受け入れられただろうけど。どうせ同じ理由で召喚されるなら、聖女じゃなく勇者がよかった。

 なんで聖女なんだと、堂々巡りの疑問と憤りが身の内で燻っている。


「つまり聖属性とは、我々が扱う属性魔法と一線を画すものであり、詠唱によって特定の現象を引き起こすものではないのです」


 セオの声にはっと我に返る。

 いかん。途中から内容が曖昧だ。質問されたら答えられない。


「歴代の聖女様と、最初に召喚された異世界の聖女様が扱った聖属性魔法は、祈りによって穢れを祓ったとあります。詠唱はなく、聖女様の祈りに神々がお応えになったのだと」

「祈り?」

「はい。第三のイプシランテ・トルセラに誕生なさった前任の聖女様は、各地の穢れを前に祈りを捧げられ、祓ったのだそうです」


 祈りというと、真っ先に思い立つのは漫画やアニメだ。教会でシスターがロザリオを胸に抱いて、祭壇前で跪き祈りを捧げているシーンはよく見かける描写だ。そんな感じで祈ってたのかな?


「はい。そのようですね」


 やっぱりか。祈りといえばそれが定番か。


「聖女様によって様式は様々だったようですよ。三代前の第一のカルネア・ユヌの聖女様は、それはもう激しいダンスを踊られていたそうですから」

「激しいダンス」

「はい。激しいダンスです」


 激しいダンスと言われて俺が思い浮かべるのは、近所の祭りでオリエンタルな女性たちが一心不乱に踊っていたベリーダンスだ。あれは衝撃的過ぎた。

 神社の境内でベリーダンスって!と驚いたものだが、そもそもの起源が豊穣を祝うための踊りで、女神崇拝のための儀式として巫女たちが踊ったのがその始まりだと言われているらしい。世界最古の踊りと言われるベリーダンスを神社で踊るのは、歴とした神々への奉納になるのかと驚いたものだ。


 イスラム教国のとある地方では、病院で治療を受けられない地位の低い女性のために、女性特有の病気を防ぐためのベリーダンスが踊られている、らしい。これを知って俺はかなりのカルチャーショックを受けた。


「なあ。アウストレイルで信仰されてる神様って、もしかして女神様?」

「よくご存知で。どなたかにお聞きになりましたか」


 マジか。マジで女神だった。じゃあ三代前の聖女が踊った激しいダンスって、ベリーダンスで間違いないんじゃねえの!?


「女神様は御名をムスカリザルテ様と申されます。勇者誕生より聖女誕生が断然多いのも、ムスカリザルテ様が女神であられるからだと言われています」


 ああ、そう言われてみれば確かにな。歴代の聖女の話はしても、勇者の話はひとつもされていない。


「女神様は豊穣と勝運を司ると言われていますから、三代前の聖女様が舞われたのも理に適っていたのでしょう」

「………俺は踊れないからね?」

「えっ」

「え?」

「お、踊らないのですか?」

「踊れないのかじゃなくて、踊らないのかってところにあんたのデザイアを感じるんだけど」


 じっとりと睨めば、わざとらしく口笛を吹きながら視線を逸らす。昔の漫画か。


「ま、まあ、聖属性魔法に決められた様式はないようですし、ユウキ様のやりやすい方法を模索されるのがよろしいかと。体内の魔力循環さえ出来るようになれば、きっとすぐにでも聖属性魔法をお使いになれると思いますよ」

「魔力循環?」

「はい。血液が体内を巡るように、魔力もまた巡っています。その感覚を掴むことが魔法を使う前段階となります」

「流れる血液のイメージで、魔力を循環する……」

「一度試してみましょう。まずは私がやってみせますので、同じように返してください。では手を」


 セオの差し出された両手にそれぞれ重ねる。


「右手から左手へ魔力を流します。重ねた掌が温かく感じると思います」


 セオの言うとおり、右手に懐炉(カイロ)が挟まっているかの如く、じんわりと心地好い熱を感じた。それがふと和らいだ刹那、今度は左手が同じ様にじんわりと温かくなる。これが魔力、なのか?


「伝わりましたか?」

「右から左の順にあったかくなった」

「感知出来ていますね。素晴らしいです。では同じ様に私へ返してみてください」


 循環、だったよな。身体中を巡る血液のように、体を流れる奔流のようなものかな……?


 ふと、そう思った瞬間。

 バチィ!と放電したようにセオと俺の掌の間に青白い火花が散った。

 痛みはなかったが、驚いて咄嗟に手を離す。困惑そのままの視線をセオに向ければ、驚愕に混ざって愉悦の笑みを刷いていた。


 ―――――気持ち悪っっ。




今朝起きたら、外が朝靄で真っ白でした。

窓を全開にして、寒さに身震いしながらめっちゃスーハースーハーしました。

霧は匂いを堪能しないと気が済まない、そんな変態なわ・た・し(*ノω・*)テヘ


犬は喜び庭駆け回るはずの我が家のポメ吉『るーくん』は、私から奪った電気膝掛けにシープボアを敷いたベッドでぬくぬくしながら、「おい。寒いからさっさと窓閉めれや」とジト目で見てきます。

15歳のおじいちゃんだもんね。

ごめんョ(`◇´)ゞ

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