1.召喚
ギャグ傾向にあるラブコメを書きたくなってしまいました(*ノω・*)テヘ
もう一種の病気だと思って、生暖か~い目線でお付き合い頂けたらφ(..)
「ただいま~」
中学二年生に進級したばかりの五月の始め。小学生の頃からやっているバレーボール部に入部してから、毎日帰りは十九時を過ぎていた。
ボール拾いとレシーブが主体の練習ばかりだけど、レシーブは一朝一夕で身につくものではないので、毎日やらない理由はない。バレーボールは床にボールが落ちなければラリーを続けられる。まあ他にもいろいろと細々したルールがあるけど、バレーボールの基本はレシーブだ。拾って上げてなんぼ。
おかげで俺のレシーブは定評がある。スタメン入りはまだ出来ないけど。
母親に似たのか、来月十四歳になるというのに俺の身長は百六十センチと小さい。父親や上の兄貴は百八十センチ台と長身なのに、何で俺だけ伸び悩んでいるのか……。姉貴だって百六十七もあるんだぜ? 理不尽だ。
小柄な母親は百五十センチしかない。母の家系は一様に背が低くて、伯父と叔母も、従姉妹たちもみんな小さい。俺の身長と童顔は、絶対母さんの血筋だ。
バレー部員の先輩も同級生も、なんなら新一年生の後輩さえも俺よりデカくて、たぶん俺の重要性はレシーブ一本で終わる予感がしている。本格的にリベロを目指すべきか、成長期に期待して憧れのオポジットを目指すか、悩み所だな。
リベロはチームの守護神だ。相手側に得点を許さず、拾って味方に繋ぐ。如何にスパイクの威力を殺して、セッターの上げやすい位置にボールを送るか。レシーブの奥深さと面白さを知っている俺としては、リベロもまた魅力的なポジションでもある。
でもな~、オポジットやりたいんだよなぁ~。
そんなことをつらつらと思いつつ、帰宅早々台所へ直行し、冷蔵庫から牛乳を取り出した。
「お帰りなさい、ゆうちゃん。あ! もうっ、手を洗ってから冷蔵庫開けてっていつも言ってるのに!」
コップに注いでいる時に見つかった俺は、軽く「ごめんごめん」と謝罪にならない謝罪を口にする。
母さんは食卓に作った夕飯を運んでいる最中だったようだ。このいい匂いは生姜焼きか。ああ、腹減った。
「父さんたちは?」
「お父さんはまだ帰って来てないわ。さっき駅に着いたって電話あったから、そろそろ帰ってくる頃ね。お兄ちゃんはお風呂で、お姉ちゃんは部屋にいるわよ」
「ふ~ん」
「ほら、ゆうちゃんも着替えて来なさい。ご飯食べたらお風呂入っちゃいなさいね」
「りょ~か~い」
夕食は生姜焼きと温野菜サラダだった。俺も兄貴も大食漢なので、俺と兄貴の分は生姜焼きだと四人前、ご飯はとんぶり山盛り、温野菜サラダはボウル一杯だ。
「バスケ部員で長身のオレが健啖家なのは当たり前だけど、小せぇお前がオレ並みに大食いなのは謎だよな~。そんだけ食って、栄養はどこへ逃げてんだ?」
「うるせぇ。俺も高校生になれば兄貴くらいにはなってるさ!」
「お前と年子の光だって百七十近いのに少食なんだぜ? お前には身長の伸び代はねえってこった。諦めな」
「姉貴はダイエットしてるだけだろ!?」
「ちょっと! 喧嘩に私を巻き込むのやめてくれる!? それにダイエットじゃないから! 女の子はこの量が標準なの! 大飯食らいのあんたたちと一緒にしないで!」
「よさないか、お前たち」
鷹揚な性格の父さんが諌めるのが定月家の夕食の日常風景だ。母さんは勝手にしなさいとばかりに相手にしない。
「由輝。気にしなくていい。努力は必ず応えてくれる。どんな形を迎えようと、努力は決して無駄にはならない。これからも頑張りなさい」
「うん。ありがとう、父さん」
「それから和輝。弟の努力を嘲るのは感心しないな。そのままの態度が自身に返されることを覚えておきなさい」
「……悪かったよ」
よし、と微笑んで頭を撫でてくれるのもいつものこと。こういう時だけは兄貴も大人しく撫でられている。ふふん。まるで借りてきた猫だな。
嘲笑を敏感に嗅ぎ取ったようで、兄貴がぎろりと睨む。勝手に睨んどけよ、バーカ。
「飯食ってから風呂に入ると途端に眠くなるんだよなぁ。宿題やってから入った方がいいのかな」
そうすると姉貴とかぶるから早く上がれと急かされるし、あんまり遅くなると両親の入浴時間が更に遅くなる。
「まあ、この順番がベストなのは間違いないか」
脱いだ上着を洗濯機へ放って、ズボンに手をかけた、その刹那。
突如金色に輝く円環が足下に顕れ、目映い光に溶けるように視界が真っ白に染まった。
「なんだ……!?」
反射的に両腕で目を庇った俺は、急にひんやりと冷え込んだ感覚にぶるりと震えた。
「さ、寒い」
風邪引く前に早く湯船に浸かりたい。
でも何で急に寒くなったんだ? さっきの光はいったい―――。
「おお! 召喚に成功したぞ!」
「ついに、やっと!」
「聖女様だ!」
「聖女、様……………。うん?」
うん?
両腕をさすりながら顔を上げた先で、怪しげなローブを纏った集団が戸惑いの視線を向けていた。
まごつく一団をぽかんと見上げたまま、俺は風呂はどこに消えたと、まず気になったのはそこだった。
他の三作品より文字数は半分以下におさめています。
連載中の作品をお読みくださっている方には物足りないかもしれませんが、実験的にわざと文字数を減らしているので、看過して頂けたら幸いです(>.<)