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白竜の姫  作者: 銀ゆり
7/10

変わった男

  リーシャは気が進まないままカイルを城に案内した。


  城の入口前まで来るとカイルが不思議そうい言った。


「城…城?」


「カイルこういう時は黙って姫について行くべきだと思う」


  ユリウスも疑問に思ってはいたが口に出せなかったようだ。

  城の入り口と案内された場所は崖に面した大きな洞穴だった。

  この洞穴にたどり着く途中にも川沿いを登り途中にいくつもの滝を見た。


「ああ…人間からみたら不思議なのか?我らグラン大陸の竜一族は水竜がほとんどだ。この洞穴は鍾乳洞になっていて地下からは大量の地下水が湧いている。冷たくてとても綺麗だ少し入ると人間の城のような扉もあるし部屋も天窓もある、行くぞ」


  洞穴からは冷たい湧水が川になって流れていた。

  湧き水は竜一族の大切な水源として使用されているとのこと。

  洞穴の中は外よりさらに気温が低くひんやりとしていた。

  水竜は涼しいのを好むのか?

  なるほど城と言うだけあって洞穴の床は綺麗な石畳で舗装されていたがあまり使われていない様子が少し気になった。

  少し歩くと大きな壁に出会った。

 壁には大きなレリーフが彫られていて竜と太陽と水がモチーフになっているようだ。

  どの竜も大きく翼を広げていて…あるレリーフにカイルが声を上げた。


「姫さん!ドラゴンライダーだ!本当にいたんだな?!」


  大きなドラゴンの背に人間が乗っているレリーフをカイルは指差している。


「うるさい男だな?遥か昔、人間と竜が友好関係だった時は魔物から守るために共闘していた時期があったのを知らないのか?その時は人間と婚姻する竜もいたらしい…でもそれも絵物語だ今、こんな竜体になれる竜はいない」


  レリーフの真ん中にある木製の立派な扉を開くとまた大きなホールになっていた。

  ホールの上部にはいくつも窪みがあり小さな部屋になっているようだ。


「でかいホールだな」


「昔は竜が翼を休めるためにあの小部屋を利用していたからな?人間には見えないだろ?」


  上部にある小部屋をリーシャが指差すと同時にリーシャが飛んだ。

  背中から白い翼を広げ大きく螺旋を描くように飛び小部屋に入っていた。


「姫さん!!飛べるのか?竜はみんなそうなのか?」


  スゥーッと音も立てずにリーシャがカイルの前に降り立つ。


「お前は子供か?うるさいぞ竜の事も知らずにカナンに来たのか?」


「悪い知らないんだ。でも綺麗だな、翼触ってもいいか?」


「ばっ!馬鹿な事言うな!翼は…大切なものだ会ったばかりの敵か味方かも分からぬ者に触らせる事はない!それに鳥の羽根のように柔らかくもないし蝙蝠に近いぞ?人間は嫌いだろ?」


「いや綺麗だ」


「お前と話していたら日が暮れる…お祖母様がお待ちだ行くぞ」


  プイッと目を逸らしリーシャは歩く心は少しだけざわついた。

  また綺麗って言った…子供みたいに色々聞いてくるし…間者や暗殺者には見えないな?とてつもなく強くて魔力も感じるけど憎めない感じがする身体のデカい子供だ…そう思うとリーシャは小さく笑う。


  その後ろをカイルはついて歩くリーシャが一瞬笑ったのを見た。

  へぇー普通に笑うじゃないか?翼無くなった?自由自在に生えたり消えたりするのか?

 マジマジと背中を見ながら歩いているとユリウスがマントを引っ張り小声で言った。


「カイル、姫の事見すぎだ…竜のオッサンが凄い形相で睨んでるぞ」


  振り向くとクリムトと呼ばれた男がカイルを睨んでいた。

  しょうがないとカイルはクリムトに愛想笑いをしたがクリムトはますます怖い顔でカイルを睨む。


「だって気になるだろ?背中から翼が出たり消えたり?」


「お前ってなぁ…そういう所気を付けろ、姫は若い女性なんだから」


  前を歩くリーシャの肩が震えている。


「ぷっ…ふふふカイル、お前子供だな?後でクリムトに背中見せてもらえ。私はダメだぞ?竜の異性の翼に触れるのは番…人間で言うと結婚相手だけだ」


  しばらく歩くと大きな泉のある部屋に案内された。

  王の間という感じではなく装飾の施された大きな天窓がいくつもある部屋の中央には泉があり泉の横に小山のような塊が見える。


  リーシャがそっと小山に近づき小山に囁く。


「お祖母様、人間の使者を連れて参りました」


  天窓から光が射すと光の下にくっきりと見えたその姿は小屋ほどの大きさのドラゴン。

  色は濃紺、薄らと金属のような艶がある美しい鱗。

  ドラゴンは昔語りに聞いたようににキラキラした宝石、水晶と青い宝石をたくさん腹に抱き丸まるように眠っていた。


「凄いな…初めて見た」


  カイルは怖がるどころか嬉しげにドラゴンを見つめている。


「お祖母様?お祖母様?!」


 リーシャがドラゴンを揺り動かすがドラゴンの瞳は開かない。


「姫?サフィ様は?」


  リーシャを心配してクリムトが声をかけた。


「クリムト…お祖母様は熟睡してしまった」


「熟睡?凄い…大きくて立派だな?触っていいか?」


  場の空気を読まずにカイルはドラゴンを見て話す。


「馬鹿だろ?お前!!お祖母様は女性だ。それに竜一族の長であり女王だ失礼にも程があるだろ?」


「悪い…」


「カイルは後から叱っておきます姫、熟睡とは?」


 ユリウスがリーシャとカイルの間に入って話す。


「お祖母様は高齢で…熟睡すると一週間は目覚めない。余程、緊急の事がない限りは」


「それは困る、俺が持ってきた親書は必ず竜の長に手渡しする事が条件なんだ」


  気晴らし程度の小旅行のつもりだったカイルが困ったように呟いた。


「私が名代として受け取ろうか?」


「いや…虎のおっさん怒るだろうな暴れるおっさんを抑えこむより…待つか?ユリウスどう思う」


「街をハマーに任せたから大丈夫じゃないか?ただ留守番が三日から一週間に伸びたら留守番の駄賃が嵩むな?ホルスト様に請求するか」


「ん。俺も久しぶりに休んでも罰は当たらないよな?ユリウス、久しぶりの休みカナンを見物しよう」


「お祖母様もお前に興味があると会いたがっていた。悪いが待ってくれるか?」


「俺も助かる。虎のおっさんに噛まれるのは勘弁だ」


  カイルと別れてリーシャは久しぶりに笑ったなと思い自室でぼぅっと今日の事を思い返していた。

  人間…姑息で怖い生き物だと思っていた。

  姑息で怖い…子供のような男だったな姫に対する遠慮もなく竜体のお祖母様も怖がらずに触りたいなどという者は竜だって見た事がない。

  今日はクリムトの家に泊まる事になった。

  クリムトは私に過保護だから人間を手元に置いて監視しておきたいんだろう。

  明日からカナン見物すると言っていたな?何を見るつもりだろうか?アストリア王都の方が刺激があって楽しいだろうに…

  明日…明日考えよう…そう思いながらリーシャは眠りに落ちていった。

ちょっと元気がなかったので間空いてしまいました。カイルがアホっぽいけどちゃんとカッコよくするつもりです。リーシャが生真面目さんだから今はコレで丁度いいと思います。

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