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白竜の姫  作者: 銀ゆり
4/10

世界の終わり

  ゾフィーと気まずい空気のまま姉とエドガーの婚約は整い二人は国民の祝福されて結婚式を挙げた。

  姉は女王としてエドガーは王配としてこれからの人生を国に尽くすと女神リアンと国民に誓った。

  表面上マクシミリアンは二人を王弟として祝福したが心の中ではエドガーのような男は姉に相応しくないという思いを拭い去ることができなかった。


  昼間は執務で忙しく姉と共に会議に出席したり各領主の陳情等を処理したりと充実した生活を送っていたがーーーーー夜が来るとどうしょうもなく苛立った。

  姉は今頃あの忌々しい男の腕に抱かれているのだろうか?無骨な男はあの美しい姉を組み伏せているのだろうか?自分の知らない姉の女の部分を独占している男が憎くて憤り眠れない日々を過ごしていた。

  それは弟と言うにはおかしいくらいの恋情を抱き報われない想いを苦しむただの男の姿にしか見えなかった。


  そんな時に姉が懐妊したとの知らせがマクシミリアンの元に届いた。

 それは姉からの直筆で一番に愛しい弟に知らせたかったと喜びに満ちた文面で綴られていた。


  愛しい弟……血の繋がりは水よりも濃い。

 夫婦間の愛が冷めれば夫婦は元々他人だ、自分の方が夫よりも必要とされているとマクシミリアンは思った。


  懐妊した事でゾフィーは体調を崩す事が多くなった。

  エドガーは軍人で国の政治等にはあかるくない。

  姉の代わりに国の政治は自分に任せて欲しいとエドガーに語りエドガーには引き続き国境の警備と軍隊の管理を任せることにした。

  ただただマクシミリアンは姉と自分の居場所である王の間にエドガーを踏み込ませたくなかっただけだった。

  それは、ただの嫉妬に他ならない。

  姉は産み月が近づくにつれ体調を崩す度合いが増えた。


  姉の代理業務にマクシミリアンは疲れてはいたが久しく姉の顔を見ていない事もあり姉を見舞いに城の王の私室を訪れる事にした。


「姉さん具合はどう?」


  ベットに横たわり久し振りにに会う姉は以前の瑞々しい美しさは無く痩せ細り生気が無かった。


「マクシミリアン?今日はちょっと辛いの」


「姉さん!!顔色が悪い医師は?!医師には診てもらっているんだろうね?」


「ダメなの…お腹に赤ちゃんがいるから、治療はできなくて……マクシミリアン黙ってて・・・ごめんなさいね…懐妊してしばらくして病気が分かったの」


「姉さん?!子供は…子供を…諦めるのは…」


  マクシミリアンは横たわる姉の手を両手で握りしめ泣き出しそうななった。


「エドガーと同じ事を言うのね?でも子供を諦めても治る見込みは三割。なら私はこの子を産んでから治療をするわ…大丈夫、この子が成長して孫が産まれるまで長生きしちゃうんだから」


  そう言って弱々しく笑う姉は17歳の頃と変わらず美しかった。


  そんな姉を見るのが辛くてマクシミリアンは予定より早く自分の住む城の外れの塔に戻った。

  戻る途中にエドガーを見かけた当たり前だエドガーは姉の夫なのだから寝所は同じだ。

 自分より長く姉と接していて姉の病気を知りながら何もせず安穏と暮らしているエドガーにマクシミリアンは憤怒の気持ちしか抱けなかった。


  治療ができるようになる出産が終わるまでマクシミリアンは姉のためだけに国に尽くした。姉が安心して出産まで過ごせるように出産した後も治療に専念できるようにと姉のために姉のためだけに日々、働き続けた。

  その姿に家臣たちは女王に万が一のことがあっても王弟マクシミリアン様がいれば国は安泰だと安堵していた。


  時が満ちゾフィーが出産した。

  王子だった。

  姉に似ない黒髪の男の子だった。

  すやすや眠る丸々と太った赤ん坊。

  姉はやせ細っているのに姉の生命力を吸い取ったような忌々しい赤ん坊。

  出産の祝いに訪れたマクシミリアンは祝いの言葉もそこそこに各国の有名な医師を招いた事、

  明日からは治療に専念する事を姉に約束させた。

  姉は授乳を乳母に任せる事を嫌がったがマクシミリアンの孫を見るまで長生きするんだろ?という言葉に治療に専念する事を約束した。


  役立たずのエドガーは相変わらず姉に寄り添っているだけだ。

  兵士の信頼は厚いが政治はできない。

 政治に携わりたいと望んでもマクシミリアンは王配に王の間を明け渡すつもりは無かった。


  愛しいゾフィーはその後一年治療を続け余命を最大限に伸ばし死亡した。


  出産まで生きれるかも危うかった命…一年延命したのはマクシミリアンが集めた名医達の努力の成果だろう。

  ゾフィーは王子のよちよち歩く姿を見た翌日に眠るように逝った。

 その日からマクシミリアンの世界は終った──────────


  マクシミリアンは表面上は変らず姉の後を引き継ぎ王となった。

  賢王と謳われた。


  相変わらず夜の帳が降りるとマクシミリアンは苛立った。

  暗く重苦しいくらいの憎しみが胸の内から湧き上がる。

  懐妊しなければゾフィーは死ななかったと孕ませたエドガーを憎んだ。

  子さえいなければ治療が間に合いゾフィーは今も笑っていたはずだと腹に宿った子を憎んだ。


  あの忌々しい子の名前はなんだったのだろ確か…カイル─────







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